和文英訳が得意だと思っている人は、点数が取れない
難関大学を受験しようという受験生で、和文英訳が簡単だと思っている人は、「考えが相当甘い」と言わざるを得ません
我々が使っている日本語というのは、母語ですし、また言葉の並べ方等もかなり曖昧です。
なので英文から和文に直すときには、かなりいい加減に訳文を作っても、日本語としてとりあえずは認められます。
たとえば合格英熟語300の最初の文
I didn't recognize him at first.
を、'
私/しなかった/認識する/彼/最初/
と言う風に、単語ごとに日本語に直して、適当に文を作れば英文和訳は合格点をもらえるでしょう。
「私は、最初、彼を認識しなかった」
「私は、最初、彼のことがわからなかった」
「私は、最初、彼が誰だかわからなかった」
「彼が誰だか、私は最初、わからなかった」
「最初、彼が誰だか、私にはわからなかった」
これらの文は、日本語としては微妙に意味が違いますが、意味は分かるような気がします。
ただもう少し厳密に見ると、やはり言葉が足りない。
一番目の文は、一体「私」が彼の何を認識しなかったのか不明です。
二番目の和文は、文脈によっては「彼が何を言っているのか意味がわからなかった」「彼が何をしようとしていたのか、わからなかった」というふうな意味になります。
なので元の英文と一対一に対応した和文ではありません。
英文に一番近いのは、三つ目以降の和文と言うことになります。
recognizeをワードパワー英英和辞典で引くと、第一義に
「以前見た(聞いた)ことがあるモノを、再度わかる」
とありますから、これらは一番目・二番目の訳文より、はるかに具体的な訳文です。
が上の例文の訳文としては、一番目も二番目も、まあ○をもらえるでしょう。
英文和訳がそこそこできていると思っている人は、実はそういう日本語の曖昧さに助けられて、点数を取っているのかもしれません。
ですが、和文英訳となると、そんなに甘くはありません。
たとえば和訳例の二番目の「私は最初、彼のことがわからなかった」という和文を英文に直せという問題が出たら、すぐに
I didn't recognize him at first.
が出てくるでしょうか?'
もしすんなりとこの英文が出てきたら、素晴らしいことは素晴らしい。
スタートレックのピカード艦長なら「エクセレント!」と、言うでしょう。
でもすんなりこの文が出てきて「できた!」と思っている人は、京大などの和文英訳で点数を確保するのは、かなり難しいでしょう。
というのも三番目以降の和文だったら、この英文で◎ですが、二番目の和文を英訳する場合は、もしかすると×かも知れません。
なぜなら「彼が、わからなかった」とは具体的にはどういう意味なのか、考えていないからです。
彼の言うことがわからなかったのか、彼の性格がわからなかったのか、彼のとった行動がわからなかったのか、そして彼が誰だかわからなかったのか。
何がわからなかったかによって、英文は全然違ったモノになるはずです。
曖昧な日本語表現が、何を意味しているのか分析し、それをビシッと、しかもしっかり語順を整えて英文に直さなければ、0点です。
★英文和訳 → 日本語自体が曖昧なので、日本語表現が少々まずくても点数がとれる (それになんたって、書くのは母語ですから)
★和文英訳 → 曖昧な和文から文意を正確に読みとれないと、まるで点数にならない。 (さらに、書くのは異国の言葉ですから、さらに点数になりません)
この辺がわかっていない受験生は、和文英訳で取れると予定している点数が全く取れません。
得意な科目で、ライバルより30点くらい点数が取れるなら、それでも充分合格できるのですが、今から30点捨てる必要もないでしょう。
言葉にもう少し、いやかなり、敏感になりましょう!