数学は虚学で、他の科目などのように実物があるわけではないし、数学を修めたからと言って特に何かに役に立つわけでもありません。
だから数学マニアのように、なぜか関心や興味を持ってしまった人以外に、熱心に数学を勉強するよう指導することは、非常に難しいことなのです。
これは、英語と比べれば歴然としています。
たとえば世の中には、大人のための英会話教室は山ほどありますが、それはつまり「英会話ができると、何かの役に立つ」と考えている人が、山ほどいるという証拠ですね。
実際、英語が必須の仕事も増えているし、新聞の募集広告にもわざわざ英文だけで求人をしている外資系の会社も多いのです。そしてまた、そういう職は十中八九かなりの高給なのです。
そしてまた「英語がわかれば、世界が広がる」と思っている人も、たくさんいることでしょう。
毎年のべ一千万人以上の人間が、海外に行く時代ですから、海外に行って、英語がわからなくてもどかしい思いをして帰ってきた人も結構いるでしょう。
私の知っているアナウンサーの方も、イギリスに取材に行って戻ってきたら、すぐに英会話学校の門を叩いたそうです。それほど英語というのは、実用性がある。
しかし、翻って数学について考えてみると、大人のための数学教室というのは滅多にないし、あったとしても商売としてたぶん成り立っていないでしょう。
これはもちろん、社会人になってから「数学がわかると、何かの役に立つ」「数学がわかると、世界が広がる」などと思っている人が、殆どいないということなのでしょう。
何しろ難しい数学がわかっても、数学が必須の仕事というのは、学校や塾の数学教師くらいしかありません。
求人募集で、英語が必須と書かれた求人はたくさんありますが、数学ができる人と書かれた求人は、学習塾くらいしかありません。
もちろん大学の数学科の教授という職もあるにはありますが、そこにたどり着くまでにはものすごい量の数学の勉強が必要ですし、なれたとしてもせいぜい月給は50万あれば御の字という世界です。
月給50万というと、年収800万くらいと言うことですから、大きな企業の課長程度の収入でしかありません。
これが猛烈に数学を研究した報酬としての職なのですから、情けないことこの上ありません。
数学はだから、社会に出た後では殆ど経済価値を持たない科目なのです。
ところが、高校生までは数学を一生懸命学びます。
そして数学ができないと、悩む人も多いでしょう。