農学部のススメ
農学部ってどんな勉強をするの?と言う質問をたまに受ける。
農学部って実は、農学部に行った人くらいしか、何をやっているのか知らないようなところがある。
工学部だったら、自動車だとか化学だとかコンピューターだとか機械だとか、建築や土木というのが思い浮かぶだろう。
けれど、農学部というと、農学部のある大学が少ないもんだから、何をやっているのか、あまり知られていない。
旧帝大の国立七大学でも、大阪大学にはないようだし、私学などで農学部系の学部があるのは30校未満だ。
早稲田や慶応など私学の難関校にも無いので、農学部って言うのは一体何をやっているのか?...と思うのも無理はない。
イメージとしては、農作物の栽培とか畜産の研究...ってことだろうけれど、実際のところ、研究対象は栽培だけではない。
バイオテクノロジーや木材の研究、農業土木や環境政策・食糧政策・農林経済学など多岐にわたっている。
なので私の卒業した大学の農学部の学科で、やっていることを紹介してみることにする。
京大の現在の農学部の学科は次のような感じになっている。
- 資源生物科学科
- 応用生命科学科
- 地域環境工学科
- 食料・環境経済学科
- 森林科学科
- 食品生物科学科
京大の農学部の学科編成は、紆余曲折があって、私が工学部にいた頃は、10学科くらいあったのだが、私が農学部に再入学した頃は、3系統に分類されていた。
現在はまた5系統になったりしているようだ。
資源生物科学科というと、いったい何の学科?と思うだろうが、ここが農産物の栽培や畜産などを研究している学科になる。
旧農学科、旧畜産科、なんて言うグループだが、農産物や水産物に関する研究をする学科になる。
学科紹介ページを見てみると、雑草学や昆虫学なんて言うのもあるが、雑草は農作物の品質を下げる要因になるので研究対象になっている。
雑草は3年ほどすると種がダメになるので、水田を3年やったら次は畑作を3年やるという輪作で雑草発生率を抑える事ができる...なんて話を授業で聞いた覚えがある。
雑草自体に興味がある場合は、農学部でなく理学部の生物系に行く必要がある。
昆虫学も農作物栽培のマイナス要因だから研究対象だ。
農作物に付く害虫の天敵の研究などもある。
農作物に付く害虫は、アブラムシやウンカ、毛虫なので、その天敵を育てて化学農薬の代りに使うという研究だ。
アブラムシはテントウムシが食べてくれるので、天敵はテントウムシと言うことになる。
一方、毛虫の天敵は鳥や寄生バチだったりする。
鳥の場合は毛虫をそのまま食べてくれるが、寄生蜂の場合は、毛虫に卵を産み付ける。
毛虫がある程度大きくなるまで毛虫の体内でハチの子が毛虫の体液を吸って育つので、かえって毛虫の食欲が増進したりするので、調整が難しいとかいう風な話を聞いた。
しかし除草剤や防虫剤のようなものも、特定の害虫しか駆除できないので、実はけっこう調整が難しかったりする。
インフルエンザ・ワクチンと同じで、一番被害の大きくなる雑草や害虫に焦点を当てて薬をまいたりするが、そうすると二番目や三番目の雑草や害虫が繁殖したりする。
なので完全に作りたい作物だけを残すというのは、難しい技術だという。
そのほかには、熱帯での農業を研究している学科もある。
熱帯の場合は、太陽が照りつけているのでさぞや農業も簡単だろう、...と思ったりもするが、実はその太陽が原因で、塩害が発生する。
土中には塩分が含まれているが、水をまくと、土中にしみこんだ水が蒸発する際に、土中にある塩分を表土に運んできてしまうのだ。
塩分濃度が高くなると、たいていの作物は育たなくなるので、塩分を流すためにまた水を流さないといけなくなる。
ところが熱帯・亜熱帯というところは、日本のようにじゃんじゃん雨が降るわけではないので、灌漑設備をしっかり作らなくては行けなかったりする。
ため池を掘って水をためようとしても、数年後には塩水の池になったりして、なかなか上手くいかない。
農業に関しては、こちらのサイトにまとめたので、興味があれば、ぜひ。