見取り稽古も、簡単ではない。

『黙念師容』(もくねんしよう)はなにも、中国武術の専売特許ではありません。

 

日本の武術などでも「見取り稽古」と言って、他人の動作を見るのも稽古のウチだとしています。

 

 モノを学ぶ第一歩は、師匠のやることを、とにかくまずよく見ることなのです。

 

 そして師匠の一挙一動を頭に焼き付け、それを頭の中に思い浮かべつつ、自分で再現してみる。

 

 そうすることによって、師匠がなぜそう動くのか、なぜそうするのかを学ぶわけです。

 

 言葉にすると、ただそれだけのことなのですが、でもそうは簡単に問屋が卸しません。

 

 何が大事なのかすら最初はわかりませんし、それがわかっても技の再現なんて、そんなに簡単にできることではないのです。

 

 だから大東流に入門して稽古を始めて半年くらいは、私も「はー、なるほど」
「うーん、こういう理屈もあるのか」 
「こんなんもアリか」
などと、目から鱗が何枚も落ちていたのですが、実際自分が『取り』(技をかける側)になると、半年たっても全然できませんでした。

 

知っていると言うことと、できると言うことは、また別のことなのです。

 

 だから私も「どうしてこんなにできないんだろう…」と悩みました。

 

 ですがある日、山ほど持っていた武術本のある記述の中の、『合気之練体』(あいきのれんたい)という言葉に突き当たりました。

 


見てるだけでは、真似は出来ない

『合気之練体』とは、合気の技をかけるために必要な身体を練り上げる…という意味なんですが、「これができていないと、技はかからない!」と言います。

 

 なんとまあ、合気の技を使えるようになるためには、合気の身体にならなくてはならなかったのです!
「ああなるほど、そういう動きをいくつか身につけないと、アカンのやな」
 私はそう気づき、そう言う観点から身体の動かし方を練習するようになった結果、ちょっとだけですが、技がかかるようになりました。

 

(もちろんたまにですけど)
 受験勉強だって、実は同じです。

 

 入試問題が解けるようになるには、問題を解ける身体になっていなければならないのです。

 

 たとえば数学には、数学的なモノの考え方やアプローチの仕方があります。

 

その方法を自分のモノとして、ドンドン繰り出せるような身体になっていなければ、ならないのです。

 

 できるヤツは難しい問題でも、なんだかんだ言いながらも結局解いてしまいますよね?
 また無意識に最良最短の解法をとって、自分が解けなかった問題もあっさり解いてしまったりしますよね?
 できないヤツから見れば「なぜそんなことができるんだ?」という感じですが、身体ができたヤツの技というモノはそんなもんなんです。

 

 その一方で、問題が解ける身体ができていないヤツにはサッパリ解けません。

 

 英単語や熟語の知識だけで、英文を何となく和文に訳していたり、解法パターンを断片的に集めてきて、なんとかかんとか数学の問題を解いていたりしますが、それではダメなんです。

 

 ただボンヤリ勉強していてもダメなんです。

 

技を身につけないと!


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