動機付けの重要性と契約の不完備性

動機付けの重要性と契約の不完備性

動機付けの重要性と契約の不完備性

 今回からは経営者や労働者に「やる気」を出させ、かつ、「組織
に損害を与えない」ようにするための様々なシステムについての話
です。

 

 議論を単純化するためにここでは前提として

 

「人間は、自分自身に利益になると認めた事しか行なわない」

 

という仮定を置いています。そして

 

「人間は互いの利益を認識し合い、互いの利益増大の為に行動の修
正に合意するという協定がつまり「契約」で、他人に対して契約を
遵守するように期待する」

 

としています。

 

------------------------------------------------------------

 

      動機付けの重要性と契約の不完備性

 

------------------------------------------------------------
----------
■動機付けの重要性
----------
 ここまでは主にコーディネーションの問題を取り上げたが、ここ
からは組織に属する各人に対する「動機付け」の問題を取り上げる。

 

復習ではあるがコーディネーションの問題では、

 

・何が行われるべきであるか?
・どのようにしてそれを達成すべきであるか?
・誰が何を行なうべきか?

 

という問題が重要であり、さらに組織内のコーディネーションにお
いては、

 

・どのような情報のもとで、誰が意思決定するか?
・必要な情報がどうやったら確実に必要な部門に伝達できるか?
(その為にどのようなコミュニケーション・システムを編成すべき
か?)

 

という問題が重要であった。

 

 しかしこの問題が解決され、いかに上手く組織や生産計画をコー
ディネートできても、各部門に属する各人がそれをちゃんと実行し
てくれなければ何にもならない。

 

 組織に属する各個人にそれぞれのポジションの役割をしっかりと
認識させ、各人に組織全体として意味のあるような行動をうまくと
らせるために「動機付け」と言うモノが必要となるわけである。

 

 ではなぜ動機づけ問題が生じるのだろうか?

 

 それは結局まず

 

「各個人の私的な利益が、他人の利益やその個人の所属するグルー
プや組識の利益、あるいは社会全体の利益と普通合致しないから」

 

ということだろう。

 

 個人としては、できればあまり働かずにたくさん報酬をもらいた
い。休みもたくさん欲しいし、役得も欲しい。
 地位も欲しいし、名誉も欲しい。

 

 だが組織の側から見れば、組織に属する個人に生産性に見合わな
い高い報酬を支払ったり高い地位を与えれば、大損である。

 

 少なくとも賃金や地位に見合う分くらいは働いてもらわなくては、
計画合理性もあったモンじゃない。

 

 そう言う風に各個人と組織の利益はなかなかうまく合致しないと
いうことが、動機付けの必要な第一の理由である。

 

 

----------
■完全・完備契約
----------
さて用意周到に作られた契約が存在するとすれば、動機づけは必
要でない。ここに動機付けが必要なもう一つの理由が存在する。

 

用意周到に作られた契約には、あらゆる将来の状況に対応して契
約当事者双方が何をすべきであるか書かれているのであるから、そ
んな物は必要ないはずであるからである。

 

こういう理想的な契約を特に「完備契約(コンプリート・コント
ラクト)」と言うが、このような契約を結ぶことはまず不可能であ
ろう。

 

 というのも完備契約を作って合意しそれを制定するためには、

 

1)契約を結ぶ当事者が、それに伴って発生する可能性のあるあら
  ゆる事態について知り、それに対する行動や支払いを前もって
  決定し、それを正確に記述できる。

 

2)そして事後に何か起こったのか実際に双方に確認できる。

 

3)考えられる事態に最適な行動が何か、そしてそれに伴う支払い
  がいくらかを決定し合意する能力が契約当事者双方にある。

 

4)契約締結後、当事者が進んで契約遵守をするか。
 (後日契約のやり直しが行われるとすれば、最初の契約を当事者
  は正確に遵守しなくても良いことになる。そうすれば次の契約
  も遵守されない可能性が出て来る。また契約が遵守されている
  かどうかは当事者が自分自身で判断できなければならない。さ
  もないと当事者は自分が契約を遵守しているかどうか判定でき
  ず、すすんで契約を遵守することができなくなる。)

 

等と言った条件が整わなければならないのだ。

 

 もちろんこれはまず整わないと考えられるから、世の中で取り交
わされる契約は「不完備な契約」にならざるを得ない。

 

NEXT:契約の不完備性に対する対応

スポンサードリンク

このエントリーをはてなブックマークに追加