資産の特殊性とホールドアップ問題

資産の特殊性とホールドアップ問題

資産の特殊性とホールドアップ問題

 今まで見てきたように、所有権の割り当てと保護は、取引の効率
性に大きな影響を及ぼす。

 

 不完備契約/交渉費用/モラルハザード/インフルエンス・コスト
等は、全ての経済関係において非効率発生の原因となりうる。

 

 では一体誰が資産を所有すべきなのであろうか?

 

 取引の属性に基づいた資産所有と言うモノを考えてみる。

 

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■資産の特殊性とホールドアップ問題。
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「特殊性を持つ」ということは、経済学では自由市場で取り引きさ
れる価値より高い価値を持つという意味合いらしい。

 

 つまり「ある資産が特殊性を持つ」と言えば、その資産が限られ
た用途に使用されるときにのみ、特に高い価値を持つということで
ある。

 

 たとえば大都市間を結ぶ道路や鉄道には、あまり特殊性がない。
ヒトも運べばブタも運べば宅配便も運ぶ。

 

 だがしかし同じ道路や鉄道でも、山奥に孤立している田畑や工場
につながるだけの道路や鉄道の支線には「特殊性」がある。

 

 その道路や支線は孤立した田畑や工場にとってはなくてはならな
いものであるが、それ以外の者にはなくてもあんまり困らない。

 

 だから一般的ではなく、特殊なのである。

 

 特殊性の問題は以前に「隣接する発電所と炭坑」のモデルで学ん
だが、そうして互いに特殊性を共有する場合を特に「共同特化の関
係にある」と言う。

 

 そしてまた以前に学んだ通り、特殊性と共同特化は「ホールドア
ップ問題」を引き起こす原因である。

 

 鉄道の支線や道路が山奥に孤立する田畑や工場関係者の利用に特
殊的であるように、ある資産がある一用途に関して特殊的である場
合、特殊資産の所有者はホールドアップ問題の可能性に直面する。

 

 工場主は輸送をトラックに切り替えるという威嚇を鉄道会社に対
して行うことで、格安の運賃を要求することができようし、また、
鉄道所有者は状況が異なれば逆に運賃の値上げを勝ち取ることもで
きよう。

 

 こうしてこの取引には双方が威嚇をかけあい、合意ができなけれ
ば双方に膨大な費用負担がのしかかることとなる。

 

 コースの定理や総価値最大化理論によれば、ホールドアップ問題
自体は効率性には影響を及ぼさないことになる。なぜならそれは、
たんに双方の取り分の割合が変化するだけだからである。

 

 だがしかし実際には、ホールドアップ問題が価値を消滅させる結
果をもたらすことがある。

 

 というのもホールドアップ問題が起こるという可能性があれば、
投資を抑制してしまう恐れが大きいからである。

 

 特殊な資産に対しての投資は、以前にも述べたように大きなリス
クを負う投資になるから、リスク負担を免れるために「より小さな
投資」でなければ取引が行われなくなる。

 

 要するに「やるかやらないかの二者択一」になるので、投資対効
果の比率が100%を超えていてもその投資は行われないかもしれない。

 

 

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■所有による解決
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 孤立した工場と鉄道の支線の場合のホールドアップ問題の最も簡
単な解決策は「工場による支線の所有」であった。

 

 工場が支線を所有すれば、ホールドアップ問題に怯えることなく
工場は最小費用で鉄道を利用できる。

 

 炭坑と発電所の場合であれば、発電所が炭坑を買い取ることで解
決が図られる。

 

 いずれの場合においても、ホールドアップ問題がなければ不必要
なはずの投資が増えるわけであるが、そういうわけで一般的に、

 

「資産がある用途に対して特殊的である場合、その資産のホールド
アップ問題は、利用者によるその資産の所有という形で回避できる」

 

ということになる。

 

 ただ現実は、それほど簡単ではない。

 

 なぜならこのモデルの場合でも、鉄道の支線は本線とつながって
いなければ用をなさず、支線だけを工場が所有しても本線との接続
の条件(制限)や利用料などの問題でまた交渉が必要となってくる
からである。

 

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■リースか所有か
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 もし将来的に起こるであろう様々な自体が予測可能であるなら、
ホールドアップ問題を解決するために特殊的な資産を所有するので
はなく、「リース契約」を結ぶという解決策も有効になる。

 

 たとえば同様な例として、一年性の農作物を作る農家に土地を貸
すという例が挙げられる。

 

 一年性の農作物であれば、土地に対する農民の投資は一年後に回
収できる見込みにおいての投資であり、特殊性を持つ。

 

 一年後に農作物を収穫したあとに土地を地主に返さねばならない
としても、農民の投資は抑制されないだろう(つまり一年後の収穫
のためにだけ必要な特殊性を持つ投資であるから)。

 

 だから地主は土地資産を保持し、農家は農地を買い取る必要はな
くなる。

 

 リース契約の方が有利で、そう言う契約の形になるだろう。

 

 だが土地利用が果樹園など何年モノ長期投資が必要な場合ならば、
土地と果樹は切り離すことと価値を大きく減らすから、その投資は
ホールドアップ問題に直面することになる。

 

 桃栗三年・柿八年などというが、桃や栗の木を植えて三年後地主
から賃料の法外な値上げを要求されれば大損である。

 

 だからこの場合はリース契約ではなく、土地を買い取る方向で取
引がなされる事になろう。

 

 もちろん所有したからと言って、何年後かに政治の政策が変わっ
たり倫理的な問題が発生したりで当初の利益を上げることができる
とは限らないわけであるが。

 

(つづく)
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          今週の・・・

 

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 仏教で言う「万物相依性(そういしょう)」(すべてのモノは関
連して存在している)という感じですかね、、、

 

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