ハーヴィッツの情報効率性定理

ハーヴィッツの情報効率性定理

ハーヴィッツの情報効率性定理

 意思決定を行う上で、情報の収集・整理・蓄積・分析、そして伝達に必要なコストは、非常に重要な要素である。

 

 誤った情報を元に判断したり、誤ったシナリオによって立てられた生産計画が大きな損失を生み出す、、、と言うことは前回も述べたが、伝達に必要なコストの大小も生産計画策定に大きな影響を及ぼす。

 

 たとえば企業・組織、或いは経済全体にN個の生産単位があるとする。

 

 これをもし一つの中央当局の計画によって上手く資源配分を行い、数量コントロールによって効率的な生産を行おうとするなら、計画策定者は個々の生産単位についてまず膨大な情報を集めねばならない。

 

 すなわち生産単位一つにつきk種類の情報が必要であれば、全部でk×N個の情報になるわけであるが、計画担当者は生産が不可能にならないように、かつ、効率的な生産を行うために、各生産単位の各設備の限界費用を調べる必要が生じる。

 

 旧ソ連など共産主義国の官僚システムが巨大に肥大したのも、実はそういう情報収集や情報分析を一所で一手に行おうとしたせいであろう。

 

 簡単なモデルで考えてみると以下のようになる。

中央集権的組織の情報量

 

□中央政府(一つ) 。
↑↓ 
 伝達される情報量(往復):2kN個。
 決済される情報量:kN個□
 地方政府(n個)。
↑↓ 
 伝達される情報量(往復):2kN個
 決済される情報量:0個□生産現場(N個)
 現場一つ当たりの情報量:k個(たとえば材料価格・生産設備・労働価格・生産関数のデータ)

 

このモデルでの情報量合計:4kN個 このモデルでの決済情報量: kN個

 

市場価格によって生産現場が計画を決定する場合

 

□生産現場(N個) 決定に必要な情報量:1個(生産物の価格) このモデルでの伝達情報量合計は、生産物価格の1個だけ。

 

(或いは各現場の生産量N個と価格1個) このモデルはもちろん情報伝達に関する極端なモデルで、各生産現場が自らの適切な生産量を判断できる能力を持っているという前提のもとでのモデルであって実際はそうシンプルではない。

 

 だが数量を決めて各生産単位に限界費用情報を提出させる場合でも、全部で2N個の情報が必要で、暫定価格1つとN個の生産単位の情報ですむ価格システムの方が情報伝達量が少なくてすむのは明らかである。

 

 任意のシステムが必要とする情報伝達量を評価し、そして比較するためには、別のアプローチが必要となる。

 

 それがつまり「ハーヴィッツの基準」である。

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情報効率性定理

 情報伝達が効率的に行われているかどうかは「ハーヴィッツの規準」によって評価される。

 

 つまりある組織や計画が効率的であるかどうかを決定する基準として、そのシステムが必要とする情報量の大小を使うということである。

 

 まず各生産者のそれぞれの財の投入水準・産出水準と、各消費者が受け取るそれぞれの財の数量を「計画本体」と呼び、そしてその計画の効率性をチェックするために使われる情報を「追加的な情報量」と呼ぶとする。

 

各生産者や各消費者は、これらの公表された情報と自らの持つ状況を考え合わせ、この計画に対して「YES」か「NO」と回答する。

 

 そして全員が「YES」と回答した場合に、実現される計画が効率的な計画となるように、システム全体が構築されねばならない。

 

 この枠組みで一つのシステムが他のシステムよりも、より少ない追加的変数を公表するだけで済む場合、前者のシステムは後者のシステムよりもハーヴィッツの基準でより少ない情報伝達しか必要とせず、「情報に関して効率的である」という。

 

 ハーヴィッツの情報効率性定理を次に思い切って要約してみます。

 

情報効率性定理

(前提条件)
・最適な資源配分について、前もって情報がない・各生産者は自分のところの生産能力しか知らず、他は知らない。

 

・各消費者は自分の嗜好(好き嫌い)と自分が持っている財のストックしか知らず、他人のことはわからない。

 

→ 要するに誰もシステム全体の効率的な配分についての情報を得 ることができていない。

 

(定理) この場合、どんな効率的な資源配分を実現するシステムも、財や資源の総数から1を引いた数の追加変数を伝達しなければならない。

 

 情報効率性定理の前提では、各生産者は自分の生産能力がどの程度の効率性を達成しているかという判断ができない。

 

 要するに「自分のことしかわからない」というわけである。

 

 だからもしシステム全体の資源配分や生産効率を向上させようと考えるなら、そのためにいくつかの情報が公表されねばならない。

 

 これがつまり追加変数ということで、そのための追加変数を財やサービスの「限界変形率」と呼ぶことにする。

 

 すなわちある生産主体の財やサービスの生産効率関数のようなものがわかれば、効率の悪い生産現場の生産量を減らし、効率の良い現場の生産量を増やすことで資源配分が効率化されるというわけだ。

 

 そうしてある財やサービスの生産に必要な投入物はたいてい、複数であるから(つまり何かモノを作る場合、原材料と労働が投入されるのが普通であるから)、もし資源配分を効率化しようとするなら投入物全ての「限界変形率」を知ることが最低限必要となる。

 

 財やサービス一つについて、このように限界変形率が決まるとすると、システム全体では存在する財やサービスの種類の数だけ追加変数が必要になってくる。

 

 そしてもし競争均衡の実現できる市場が存在するなら、この限界変形率は「財やサービスの価格」そのもので表すことが出来ることになるので、システム全体の資源配分を効率化するために追加的に公表されなくてはならない情報(追加変数)の最小量は、財やサービスの価格、、、ということになる。

 

 だが価格というのは相対的なモノであり、その基準は金や銀といったニュメレール財によって表すことが出来るので、追加変数の最小数は、システムの中に存在する財やサービスの総数から1を引いた数となる、、、、 というので合ってるかな?

 

 参考までに、「共産主義国の経済が果たして経済効率性を達成するか、、、、という研究を情報伝達の観点から研究したのがハイエクであり、ハーヴィッツの研究はそれをさらに発展させたものである」 と章末に書いてあります。

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