デザイン属性を伴う計画

デザイン属性を伴う計画

デザイン属性を伴う計画

情報効率性定理(復習)

 

 ハーヴィッツの情報効率性定理は、デザイン属性を含む問題を除外している、、、というか、前提条件として「各生産単位も各消費者も、自分の情報しか持ち合わせていない」と言う状態から考え、先験的な最適解や情報がない状態から、「あと最低限いくつ情報があれば、経済効率が最適できうるか」という問題を考えていたわけである。

 

 そしてその結果として、「その経済内に存在する財やサービスについての「限界変形率」が公表されれば、それより変形率が劣る生産単位は生産を控え、優れる生産単位は生産を増やすことで経済が効率化される」ということがわかる。

 

 結果的にその経済を効率化するために必要最小限の追加情報の総数は、「存在する財やサービスの総数から、価値基準となるニュメレール財(たとえば金銀とかの一個の財)を引いた数」であるという結論を導いたのである。

 

 この「財やサービスの限界変形率」は競争的な市場における均衡価格で置き換えることができる。

 

 だから、価格システムは中央集権的生産システムよりはるかに少ない情報量で経済を効率化することができるのだ、、、、ということであった。

 

 ではもし経済を効率化できる先験的な情報が存在する場合はどうなるか? それが今回の「デザイン属性を伴う計画」の話である。

 

デザイン属性を伴う計画

 

 それではまずデザイン属性とは何だったか、思い出しておこう。

 

 デザイン属性とは、「シンクロ問題」と「割り当て問題」の生じる場合のことで、価格による資源配分システムがうまく機能しない場合のことであった。

 

 この本ではボート漕ぎの話と救急車の配車の話が例として上げられていた。

 

 すなわちボートを漕ぐ場合には、全体の行動が一つの目的のために合致した行動をとらねばならない。

 

 全体を見渡すことができ、状況を把握して最適な判断が出来るコックスの指揮の元にボートを漕ぐ方が、それぞれの漕ぎ手が自分のシートから判断できる情報によってボートを漕ぐ場合より、うまくボートを漕ぐことが出来る。

 

 つまり行動を指揮者の元にシンクロナイズさせる方が、それぞれの主体にバラバラに判断させるより、より効率的になる場合がシンクロ問題を伴うデザイン属性がある場合である。

 

 また救急車の配車問題とは、相対的な希少資源である救急車を事故現場や急病人の発生地に配車する問題で、けが人や急病人の発生地に価格を割り当てて配車すると、価格の高い箇所に救急車が集まり低い箇所に救急車が回ってこない、、、という問題が生じるような問題である(これは経済性の問題ではなく、社会問題の範疇である)。

 

 さてではなぜデザイン属性を伴う意志決定が、価格システムよりうまく資源配分を達成するのか、、、、と言えば、大ざっぱに言うと「資源配分に関して、先験的な情報が存在する」からである。

 

 すなわちハーヴィッツの情報効率化定理では先験的な最適解がない前提からスタートしたから、何か財やサービスの生産を効率化するためには最低でもその財やサービスを生産するために必要な投入物(原材料や労働)の価格がわからねばならなかった。

 

 しかしデザイン属性を伴う計画では、前もって効率的な答えが既に存在する。

 

だからデザイン属性の伴う計画では、価格システムが伝達するよりも少ない情報量で最適な計画やそれに準ずる計画を立てることができるわけである。

 

生産には、時間がかかる。

 デザイン属性を伴う計画は、見方を変えれば「時間との戦いが、便益の大きさを大きく左右する問題」の事である。

 

 ボート漕ぎの問題は、各漕ぎ手がオールを漕ぐ時刻を一致させることがボートの速度をより速くすることができるということであり、救急車の配車の問題は、配車に手間取るとけが人や急病人の病院への搬送が遅れ、けが人や急病人の死に至る確率が高くなる(損益が膨大になる)ということなわけである。

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自動車会社の新車の製造と販売

 ここでは、自動車会社の新車の製造と販売について考えてみよう。

 

 たとえばある新しい車を作るために、Aという工程とBという工程があったとする、そしてその工程にかかる時間をそれぞれTa、Tbとする。

 

さらにその商品の発売日をX日とする。

 

 発売日Xを早めると同等のライバル会社の製品よりその商品を早く世に出せる。

 

そうなると注文が増え、企業の便益は増大する。

 

 また逆に発売日Xを遅らせるとライバル会社の後塵を拝することとなり、企業の便益は小さくなる。

 

 だから企業はTa、Tbを短縮して、なるべく早く新商品を売り出したいのだ。

 

 しかし、Ta、Tbを小さくするためには、そのための追加費用がかかってしまうのだ。

 

 それは残業を行ったり臨時のアルバイトを雇ったり、原材料(投入財)をもっと早く調達したりという、「より大きなコスト」がかかるわけである。

 

 これをコストと時刻のグラフで表してみる。

 

と、生産の限界費用は右下がりの曲線になり、期日がズレることによって生じる企業の限界(機会)損失MLは下のように右上がりの曲線になる。

 

 だから、新車の発売日はこれらの曲線の交点前後に決まることになる。

 

 この時、この計画を推進するコーディネーターは期日を早めることによる限界便益(利益)と、各工程における限界費用を知るだけでよい。

 

 だがここでもしこのコーディネーターが他の方法を取り、各部品供給者がどのように彼らの期日を決定するかという方向からこれを考えると、期日について何十通りもの候補を考え便益を計算せねばならなくなる。

 

 たとえば部品供給のタイミングをコーディネートしなければならない10人の供給者がおり、そして五つの完成期日が候補であるとする。

 

 夏のスキー板のレンタル料金と冬のスキー板のレンタル料金が異なるように、五つの期日における十の財の価格は期日によって違うから、そこには都合五十の異なる価格が生じることになる。

 

 この五十の異なる価格に対して購入者が自分の便益を最大にするような価格で購入することができれば、資源配分は効率的になるのだ。

 

 しかし、シンクロナイズ問題を解くためにこの五十の価格を計算するのは、えらく面倒でありムダが多い。

 

 結局新車を作って売るという活動のコーディネーションに価格システムを用いないのは、(1)価格システムを用いることは可能ではある、がそれには膨大な情報量が必要であるから。

 

(2)シンクロナイズできないときのコストが大きいから。

 

なのである。

 

 最後に、シンクロナイズ問題はたった一つの欠陥が企業の便益に大きな損失をもたらすという性質をもっているがために、価格システムを用いると「非常な脆弱さ」を露呈してしまうということも、忘れてはならない。

 

 すなわち価格システムを用いた計画では、大事な部品が生産期日に間に合わない場合が生じ、そのために販売期日が遅れたり新車の供給量が不足気味になったりすることによる損失がとんでもなく大きくなってしまうのである。

 

 

今回のまとめ 

デザイン属性を伴う生産計画で価格システムを用いるのは得策でない。

 

 部品を市場調達によって調達してよい場合と、そうでない場合がある、、、というのは、この本の最後の方にも登場します

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