異時点でのインセンティブ

異時点でのインセンティブ

異時点でのインセンティブ

 インセンティブ・システムを実行するために厄介な問題となるのが「業績評価の基準をどう設定するか」ということである。

 

 すなわち通常の平均業績「x^」が分かればE=α+β( e + x^)という形で報酬を決めることができるのだ。

 

 しかし、このx^をどう決めればよいのか? ということである。

 

 この式を変形すると α=E−β( e + x^ )となる。

 

 ここで、x^を高く設定しすぎるとβの大きさに比例して固定給が減り、従業員は努力の割りに報われないから士気の低下が起こり、ドンドン辞めていくことになる。

 

 また逆にx^を低く推定して決めると企業は賃金を払いすぎになり、従業員は喜ぶかも知れないが、企業の利潤率が下がる。

 

 つまりこの場合は株主への配当も減り、その結果資金調達にもコストがかかるようになるから財務体質が弱くなる。

 

 業績評価の基準を設定するのはそういうわけでさじ加減が難しい話だ。

 

 しかし、それでも何とかそれを見いださねばインセンティブ・システムは成り立たない。

 

 そのための方法が次の三つである。

 

  • 1)タイム・アンド・モーション・スタディ。
  • 2)比較業績評価。
  • 3)同一人物の過去の業績。

 

タイム・アンド・モーション・スタディ

 

 タイム・アンド・モーション・スタディとは、通常は機械的な事務処理や生産作業にのみ使われる方法であるが、特定作業に対する最も効率的な処理法と必要時間とを技術者を使って調べる方法である。

 

 これはつまり作業時間をストップウォッチを使って測って調べるというような方法であるが、このような調査はコストがかかるし、従業員が熟練すると効率が上がるような場合には調査結果がすぐに陳腐化してしまうという難点がある。


比較業績評価

 比較業績評価法とは、従業員の相対的な位置づけで業績を評価する方法である。

 

 つまり個人の業績によってのみ評価が行われるのではなくて、他人の業績との「差」も評価に加えられるということである。

 

まず想定として評価の対象を三つに絞ることができるとする。

 

 一つは従業員の努力。

 

次に従業員個人にだけ影響のある確率事象。

 

最後に同じ状況下にある従業員全体に影響のある要因。

 

たとえばある従業員に与えられた未知の任務の難易度は、他の従業員にとっても同じであろう。

 

 また従業員が管理職ならば、石油価格や利子率、業界全体の景気などにも業績が影響されよう(それはまた他部門にも同様の影響をもたらしていよう)。

 

 さてここで二人の管理職AとBについて考える。

 

 努力水準を例によってea、ebとすると、 Aの業績は、z=ea+xa+xc、 Bの業績は、y=eb+xb+xcとなる。

 

xaはAのみに影響する確率要因、xbはBのみに影響する確率要因、xcはAとBの両方に影響する確率要因である。

 

 このときAに与える報酬は、絶対業績評価zに基づくべきか、それとも相対評価z−yに基づくべきか? インフォーマティブ原理によれば、それは「真の業績と見えている結果との誤差の分散の小さい方」を採用すべきであるということになる。

 

 つまり絶対評価では分散は、Var(xa)+Var(xc)。

 

 相対評価ではz−y=ea−eb+xa−xbで分散はVar(xa)+Var(xb)(※分散は足し合わされる) だからVar(xc)>Var(xb)なら相対評価法、逆なら絶対評価法で評価を行うのが適当であるということになる。

 

 つまり株式市況とか原油価格とかいう相場に業績が大きく左右されるような場合にはxcの分散が大きくなるので相対評価で評価すべきであり、逆に外部の状況による影響が小さい場合には絶対評価にすべきである、、、、と言うことである。

 

同一人物の過去の業績を規準とする方法

 

 これは一見分かりやすい方法に見える。

 

 しかし過去の業績を規準にすると、過去に業績が悪かった者には低い基準をもとにするから少しの努力で高報酬を得ることができ、逆に過去の業績が良かった者は少しの失敗で報酬が減ることになる。

 

 高い業績を挙げた時期があると、後に要求される基準が引き上げられるという傾向はソ連で観察された。

 

 これを歯車がガチャリと一段上がって固定されるというイメージから「ラチェット(歯車)効果」と言う。

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