保証金の預託とモラル・ハザード

保証金の預託とモラル・ハザード

保証金の預託とモラル・ハザード

企業と保証金
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 モラル・ハザード問題の発生を抑える1つの方策として「保証金」
を積む、、、という方法がある。

 

 たとえばアメリカの建設業者は、道路を造ったりビルを建てたり
というプロジェクトが約束期日までに約束の方法で完成できない場
合の保証金を預託させられることが多く、それが達成できない場合
には保証金が没収されることになっている。

 

 保証金を没収されると企業は利益を失い、逆に損失を出すことに
なるので、企業はサボらず契約を履行する強いインセンティブを与
えられることになるわけである。

 

 日本でもかつては企業が銀行から融資を受ける場合、社長の個人
的資産を保証金として担保に入れるという慣例があった(今は知ら
ん)。

 

 会社が倒産すると社長は自らの資産を没収され、創業者一族が路
頭に迷うなんてことがよくあったから、経営者は会社を倒産させな
いように頑張らざるを得なかった。

 

 80年代の日本の絶頂期には、それが日本経済の優れた仕組みであ
るとよく言われたモノだったが、倒産したそごうの元社長などは融
資に関して個人保証をしておきながら知らぬ存ぜぬと言う態度だか
ら、それが本当かどうかは定かではない。

 

 こうしたハッキリした形で保証金を積んだり担保を入れたりする
以外にも、「保証金」という考え方に似た仕組みは社会の中にたく
さんあって、たとえばアメリカの大富豪のロス・ペロー氏の会社で
は以前、社内で訓練を受けた社員が入社三年以内に辞める場合、会
社に対して12,000ドルを支払うということが雇用契約の中に含まれ
ていたという。

 

 こうした保証金の預託というやり方は、契約者に契約を履行させ
るためのインセンティブを与える非常に有効な方法である。

 

 ただし保証金が非常に高額になった場合、それを預託するための
資金が多くの場合「無い」という問題はあるのだが。

 

 

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■年功序列型賃金と保証金
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 さて以前にも紹介したとおり、企業などの組織の従業員の給与は
年齢と相関関係があるという「謎」がある。

 

 これはベテラン従業員の生産性を考慮に入れてもまだ、年齢の若
い者は給料が安すぎ、年齢の高い者の給料は高すぎるという現象で、
以前は「逆選択」と「スクリーニング」であると説明した。

 

 つまり「年少の者に薄給を与え、年長の者に高給を与える」とい
う給与体系は、企業側から見れば長期的に永続して企業に勤めてく
れる従業員を雇用するためのスクリーニング(選抜)であり、また
そういうタイプの労働者から「逆選択」を受けることを利用した結
果なのだという説明である。

 

 気まぐれな労働者は、労働に見合わない安月給では我慢できない
からしばらくすれば辞めるだろう。
 根気のある労働者は労働に見合わない安月給でも我慢して、しっ
かり会社のために働いてくれるだろう。

 

 企業としては後者の労働者を雇いたい。だからそういう年功序列
型の給与体系で報酬を支払う、というわけである。

 

 だがエドワード・ラジアーによるとこの仕組みは、従業員の怠慢
を防ぐ手だてとしての「保証金」であるという。

 

 たとえば従業員が怠けるのは、怠けることによって何らかの便益
を受けるからである。

 

 正規の労働時間内に手抜き作業を行い、それを「残業」して行え
ばより高賃金を得ることができるから、そのために労働者は怠ける。

 

 だがそういう怠慢行為を発見したときに、企業が従業員を解雇す
るとすると、企業は従業員の怠慢によって失った便益を取り戻すこ
とができなくなる。

 

 だから失う便益を充分上回る「保証金」を従業員に課すことがで
き、怠慢行為が発見された従業員を解雇する時にそれを没収できれ
ば従業員のモラルハザード対策にもなるし、企業は従業員の怠慢行
為によって損をしない。

 

 若年者の給料が安いのは、そういう保証金がさっ引かれているせ
いなのだ、、、というわけである。

 

 

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■「定年」の機能
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 年功を積んだ従業員には本人の生産する価値以上の支払を約束す
る制度があったとする。

 

 つまりベテラン従業員には、転職して同種の職に就いた場合に得
られるよりも多い給与を支払うという制度である。

 

 そして一方年少者に対しては、限界生産力を下回る給与しか支払
わないという制度を採用したとすると、企業としては支払う給与総
額はそういう制度を採用する前とさして変わらないはずである。

 

 この時、自分の働いた価値より多くの収入を得る人間やそれに近
い年功を積んだ人間とって、それは保証金と同様の働きをすること
になる。

 

 怠慢行為や背信行為でクビになった場合、再就職しても確実に給
料は減ることになるから、その差額が「保証金」ということになる
のである。

 

 つまり年功序列型賃金というのは、従業員の怠慢を抑制し、業務
の効率性を維持するために役立っているわけである。

 

 だが驚くべきことにこの方式によって企業が効率的な運営をする
には、強制的な退職規定(つまり定年制)が必要になるのである!

 

 というのもこの方法には、大きな欠陥があるのである。

 

 その欠陥とは、年長者が企業にしっかりと居座ってしまうと言う
ことである。

 

 若輩者は低賃金に不満があればどんどん辞めていってくれるが、
年輩者は自分の働き以上に稼げるわけだから、なるべく企業に長く
居座ろうとする。

 

 年長者が長く企業に居座ると、当然効率性は落ちる。というのも
年長者は働き(生産性)に見合わない高い報酬を受け取っているか
らである。

 

 企業としては従業員に対して生産性に見合った報酬を支払いたい
が、諸般の事情からたいていそれより高い報酬を支払っている場合
が多い(この話はまたどこかで出てくる)。が、年功序列型賃金体
系では、さらに高い報酬を支払うことになる。

 

 そんなことを長く続けるわけには行かないから、そこで強制的な
退職規定(つまり「定年制度」)が必要になってくるわけである。

 

 定年制というのはある意味、効率性を維持するための制度である
から、効率性を求められない組織(たとえば宗教団体や公益団体・
政党や公務員)ではなかなか採用されない。

 

 定年制を採用しているかどうかは、その組織が合理的(経済的)
な組織か政治的な組織かを見分ける1つの目安かも知れない。

 

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