取引の繰り返しとナッシュ均衡

取引の繰り返しとナッシュ均衡

取引の繰り返しとナッシュ均衡

信頼ゲーム(再掲)

 

{表1} 
 (意志決定者)信頼に応える、または、信頼を裏切る。
 (委託者)   委託する、または、委託しない。

 

取引の繰り返しとナッシュ均衡

 

 意志決定者(取引に応じる者、あるいは注文を受けて仕事などを代行する者)が、委託者の信頼に応じるかそれとも裏切るか、と言ったことは、意志決定者が裏切りによって得られる利益V+Gの大きさによって相当影響を受けるだろうと考えられる。

 

 たとえばモラルハザードなどや情報流出などの裏切りによって得られる利益Gが相当大きければ、仕事を依頼しても相手が裏切る確率が高くなる。

 

 一回こっきりの取引であれば、それは当然である。

 

 一回こっきりの取引で、そのあと相手ともう一生顔も合わさないような場合で、しかも裏切りや不誠実によって得られる利益が莫大なら、特にそうであろう。

 

 たとえば戦時下の略奪や虐殺などは、恐らく後々のことなど考えていない行動であり、有史以来何千年もの間戦争を続けてきた中国などでは「略奪と虐殺」が当たり前であったという。

 

 だが取引が一回こっきりでなかった場合や、取引の様子が他の者に知られるような状況では、話が変わる。

 

 たった一度だけの取引でなかったり、他にも同様の取引を他の者と行うような「継続的な取引」を行う場合、利益Vの取引をN回行ったときに NV>G となるような場合であれば、裏切るより信頼に応じる方が受け取る総利益合計は大きくなる。

 

 そうなると、意志決定者は裏切らず誠実に振る舞う確率が大きくなるだろう。

 

 この場合、委託者は委託を引っ込めることで利益は増えないし、意志決定者は委託者を裏切ることによってGを得てもそれ以降はVを得られなくなる。

 

 だから、利益はそれ以上増えない。


 

 ゲームの理論では、双方が何か別の行動を起こしても自分の利益を増やせない状態のことを「ナッシュ均衡」と呼んでいる。

 

 ナッシュ均衡時には

  • 1)ゲームの全てのプレイヤーがその均衡状態を予想し、
  • 2)その予想が現実に正しく
  • 3)その予想をもとに各プレイヤーが最適行動をとる

という状態ができあがるが、しかし均衡点が一つに決まるというわけではない。

 

 今のゲームにおいてもVLGの組み合わせによっては「委託者は常に委託し、意志決定者は常に信頼に応える」「意志決定者は常に信頼を裏切り、委託者は常に委託しない」「V>Lであれば委託者は何回かに一度は委託し、意志決定者は何回に一回は裏切る」という三つの均衡点ができあがる。

 

「誠実であるという評判」というのは、不特定の顧客に仕事を委託してもらうための有利な材料であり、その評判を維持するために信頼を裏切らないという行動が選択される。

 

 そういう評判はまた、契約時におけるこまごまとした契約を結ぶコストや調査費用を軽減する。

 

「良い評判」は取引相手を確保する貴重な財産である。

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