モラル・ハザードとモニタリング

モラル・ハザードとモニタリング

モラル・ハザードとモニタリング

モラル・ハザードの三条件

 

 モラルハザード問題が発生するには、三つの条件が必要である。

 

 一つ目は「取引を行う双方に、トレード・オフの状態があること」である。

 

 すなわち何かの取引をすることによって、双方の状態が以前より良くなる(Win-Win関係などという)のではなくて、一方が得をすればその分もう一方が損をするというような場合(トレード・オフ)である。

 

 修理工の例で言えば、必要がないのにラジエータを売れば修理工は儲かるが、客は不必要な財を買わされて損をすることになる。

 

 だから、トレード・オフになっている。

 

 二つ目は、「利害が異なる人間双方を、取引に至らせる理由があること」である。

 

 すなわち損するかも知れないと分かっていても、その取引をしないと行けないと言う状態にあること、、である。

 

 修理工とドライバーの例で言えば「他に選択肢のないハイウエイでの車の故障」と言うモノがあり、そのために修理工が新品のラジエーターをドライバーに押し売りすることが可能になる、と言うことである。

 

 ラジエーターが故障すれば、エンジンはオーバーヒートして使い物にならなくなる。

 

だからドライバーは修理か交換かのどちらかを行わなければならない。

 

 そこで修理工が「交換しなければならない」と言えば、それに従わざるを得ない。

 

なんせラジエーターがちゃんとしていなければもう先へは進めないから。

 

 そしてドライバーが、修理工の判断(つまりラジエーターの交換が必要かどうか)が妥当なモノであるかどうかという判断がなかなかできないという事が、モラル・ハザード問題を引き起こす三つ目の条件である。

 

 すなわち、「実際に契約が遵守すなわち守られているかを調べたり、あるいは遵守を強制させることが難しい」ということである。

 

裁判なんかで何があったかはっきり証明できないような場合であったり、問題があってもそれを監視して強制させるには大きなコストがかかって経済的に見合わない、、 会計士や経理係が帳簿を操作して使い込みを行っても、他の者にはそれがなかなか分からない。

 

分かっていても、新しい会計士や経理係を雇うには大きな金がかかる、、、そんな感じ。

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モラルハザードの第1の処方・「モニタリング」

 モラル・ハザード問題の発生する三条件が確認されたところで、次にモラル・ハザードを防ぐことを考えよう。

 

 モラル・ハザード問題を防ぐには大きく分けて三つの方法がある。

 

 その第一の処方は、モニタリングや検査に金や人材などの資源を投入することである。

 

 モラル・ハザードは、取引関係者の持つ情報が非対称であることを良いことにして、相手に損害を与え余分な出費をさせて自らの取り分を増やす行為である、、と考えれば、情報の非対称を解消するのが根本的な解決策である。

 

 が、それをするには何かを売買するたびに取り引きする財やサービスあるいは取引自体の詳細を勉強してコンプリートな(完備な)情報を得なければならなくなる。

 

 何を買うにもそんな完備な情報を収集しなければならないというのは大変だから、「自分の代わりに誰かそれについて詳しい人間に判断してもらう」というのがモニタリング、、というわけである。

 

 またモニタリングは、社会的に非効率で利己的な行動を見逃す確率の削減を意図して行われることもある。

 

 この場合はモニタリングの結果に対して報酬や処罰が行われることが多い。

 

 たとえば労働者にはタイムレコーダによる記録を義務づけることが多く、遅刻や早退に対しては減給や解雇などの処罰が課せられる。

 

 もちろん逆に優れた行動に対し、報酬を与えることも多い。

 

 また「競争相手からの批判」も絶好の機会となる。

 

 同業他社の者による批判は、自社の仕事が問題なく行われているかどうかをモニタリングするための、無料の情報である。

 

 ただしそれでも業界に共通する利害に関しては、無効であるが。

 

 最後に市場によるモニタリングが、経営者のモラルハザード問題の発生を抑制することもある。

 

 倒産はもちろんそうであるが、買収や株主のプロキシ(委任状)獲得競争などは、企業の経営者のモラルハザード問題を抑制させる大きなインセンティブとなる。

 

モニタリングの弊害

 

 モニタリングは確かにモラル・ハザード問題を防止する働きがある。

 

 だがしかし金銭の報酬や処罰は別のモラルハザード問題を起こしやすい。

 

 と言うのも金銭が絡むと、記録や業績をごまかして罰金を逃れたり報奨金をだまし取ろうというインセンティブが生じるからである。

 

また雇用主に関しても、モニタリング結果を不正に操作して従業員を解雇したり、支払うべき給与を支払わなかったりすることもできる。

 

 このとき、その手のモラルハザード問題も生じることになる。

 

 さらに企業にとって重要なポジションの人材がモニタリングで有罪となり、解雇せねばならなくなったりする事や、或いは逆にその貴重な人材を解雇しなかったがために、モニタリング制度が他の従業員に対して大きな不信感を醸成し、有名無実なものとなったりする。

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