コーディネーションの仕組みと組織の脆弱さ

コーディネーションの仕組みと組織の脆弱さ

コーディネーションの仕組みと組織の脆弱さ

 経済的な資源配分問題において、価格システムがうまく機能しな
い場合について前回三つの「属性」を紹介した。

 

 その三つとは、
「シンクロナイズ問題(デザイン属性1)」
「割り当て問題(デザイン属性2)」
「イノベーション属性」
であった。

 

 これらの属性が生じるのは、その配分問題が、
「厳密なコーディネーションが必要で、わずかな仕事のズレも許さ
れない場合」
「急を要し、判断する時間が殆どない場合」
「現在組織内にある情報だけでは、仕事がうまくいかない場合」
などの要因を持つからだと言える。

 

 価格システムはこれらの問題を解決するには時間がかかりすぎ、
しかも重複するのを避けられない。

 

 また組織のコーディネーションにおいては、これら属性問題以外
にも「指令システムと情報量」についての違いも重要である。

 

 すなわち同じ中央集権的指令システムでも、現場と司令部との間
で交換される情報量が少なければ指令・実行は迅速になるが、現場
の情報は上層部には伝達されにくくなる。

 

 かといって、現場から司令部に伝達される情報量を増やせば、確
かに司令部の判断はより現場の状況に適したものとなろうが、しか
し指令・実行の迅速さは失われる。

 

 現場に判断の多くを委ねる地方分権的システムは、情報量におい
ては上の二つのシステムの中間となるが、中間で意思決定を行う人
材を大量に育成しなければならないと言う問題がある。

 

 現実の資源配分問題がどのような属性を持ち、そのための組織の
コーディネーションをどのように行えばよいかと言う問題は重要な
問題なのであるが、それを考えるためには何かの基準を置いて諸シ
ステムを比較する必要が生じてくる。

 

 そういうわけでここでは、システムを比較するために三つの規準
を用いることにする。

 

 それは
(1)必要な情報が完全な場合、システムは効率的な決定を行える
かどうか(効率性)。

 

(2)目的を達成するために、システムはどれだけの量のコミュニ
ケーションと情報を必要とするか(情報量)。

 

(3)必要な情報が得られない場合、システムの効率がどのくらい
悪化するか(「脆弱さ(ブリトゥル)」)。

 

 

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■価格と数量:脆弱さを考える
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 稀少資源の配分に関する標準的な経済問題を考えてみる。

 

「中央の管理者が財の生産量を指定するシステム」と「価格という
シグナルを介して現場の管理者に適正な生産量を決めさせる」とい
う二つのシステムの比較を行う。 

 

 この二つについて、(1)計画担当者が完全な情報を持つ場合と
(2)不完全な情報しか持たない場合、の比較を行う。

 

 

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■限界便益と限界費用が産出量の線型関数である場合。
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 意志決定担当者は線型関数の傾きはわかっているが、費用関数の
切片はわかっていない。

 

 したがって、全ての限界費用は未知の一定額だけ予想額より高く
なったり低くなったりする。

 

 価格と数量が決まった場合のあるシステムの逸失利益は、そのシ
ステムが実現する純便益と、情報が正しい場合に実現される純便益
との差額と定義する。

 

 

|P(価格)    MC(限界費用曲線)
|   \    /     MC’(誤った限界費用曲線)
|    \  /     /
|_____\a_____f____
|p    /\    /
|    /  \  /
|   /    \c
|  /     /\
|       /  \
|     b/    \
|            e
|             \MB(限界便益曲線)
|____________________
      Q  Q’  Q”   Q(生産量)

 

 上図で、MCは計画担当者の推定した限界費用曲線であり、MC’
は誤信シナリオにおけるそれである。

 

 さて任意の産出量の元での総便益はMB曲線の下側の面積であり、
計画担当者の推定が正しければ、Qが効率的な生産量・Pがその価
格となる(a点)。

 

 誤信シナリオでは、正しい限界費用は計画者の推定値よりabだ
け少ない。だから真の効率的生産量はQ’である。

 

 計画担当者が生産量Qを指示したとき、生産量を間違ったために
生じる逸失利益は△abcの面積分になる。

 

1/2・d(Q’−Q)

 

 一方計画担当者が価格Pを指定し、企業は利益最大化生産量Q”
を選ぶとした場合を考える。

 

 そうすると△cefの面積だけコストを投入しすぎてしまうこと
(つまり作るだけ損をしている)になるので、feをDとすると、
その面積は

 

1/2・D(Q”−Q’)

 

となる。

 

 三角形abcと三角形efcは「相似」であるので、頂点cから
測った三角形の高さは底辺に比例し

 

(Q”−Q’)/(Q’−Q)=D/d

 

である。

 

 

|P       MC
|   \    /     MC’
|    \  /     /
|_____\a_____f____
|p    /\    /
|    /  \  /
|   /    \c
|  /     /\
|       /  \
|_____b/____\
|            e
|             \MB
|____________________
      Q   Q’ Q”   Q(生産量)

 

 図から
 d=|MCの傾き|×(Q”−Q)、
 D=|MBの傾き|×(Q”−Q)
であるので、
 D/d=|MBの傾き|/|MCの傾き|。
また
(Q”−Q’)/(Q’−Q)=D/d。
 よって
△cef/△cab=D(Q”−Q’)/d(Q’−Q)
         =(D/d)2乗
         =|MBの傾き/MCの傾き|の二乗。

 

よって

 

(価格コントロールによる逸失利益)/(数量コントロールによる
逸失利益)
   =|限界便益の傾き/限界費用の傾き|の二乗

 

となる。

 

 つまり

 

「限界便益(MB)関数の傾き(の絶対値)が限界費用(MC)関
数の傾き(の絶対値)より小さいときには、価格に基づくコーディ
ネーション・システムの方が数量システムより逸失利益を少なくす
る。逆の場合は数量システムの方が逸失利益が少なくなる」

 

ということである。(証明終わり)

 

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<要約者・注>
 メルマガでは斜めの線を45度の角度でしか示せないので、図に
関しては『組織の経済学』の105ページを参照してください。
 また127ページには、MBの誤信シナリオによる図があります。
 直感的には線型関数でなくても成り立ちそうですね。
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 通常の市場ではMBの傾きはなだらかで、また一方の企業のMC
の傾きはそれより急になるので(多分設備投資などの追加費用が大
きいのかな?)、数量コントロールより価格コントロールの方が逸
失利益が少なくなる。

 

→価格コントロールの方が通常は効率的になる。

 

NEXT:ハーヴィッツの情報効率性定理

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