規模・範囲の経済性とコア・コンピテンス

規模・範囲の経済性とコア・コンピテンス

規模の経済性と組織のデザイン

 「規模の経済性がある場合、価格だけでは適正な生産水準を決めることができない」(市場の失敗の一つ)。

 

 だから事業規模自体、一つのデザイン変数である。

 

(デザイン変数とは、要するに生産組織の形態を決定するために考慮しなければならない要因の一つということかな?) つまり企業は予測される販売量(要するにこれくらい売れるだろうという目論見量)に応じて生産の事業規模を決定し、そのために様々な資本財を揃えるわけである。

 

 そして予測された事業規模は各部門の規模の大きさに影響を与えるだけではなく、「その組織の採用すべき専門化の程度をも決定する」のである。

 

 というのもその財やサービスを生産するために、全ての工程や部品を組織の中で揃えるのは非常に不経済である。

 

 販売規模が月に二台なんて機械を作るのに、それに使う普通のビスまで自前で生産するのはバカげている。

 

ビスにだって規模の生産性があるのだから。

 

そういうわけで、生産規模が小規模である生産では、できるだけ部品を外注するだろうし、外注してもかまわない工程は外注することになる。

 

(すなわち外注できる部品・工程に関しては専門化が必要ない) そして逆に大きな事業規模であれば、部品の生産や工程にスケール・メリットが生じ、買収なども含めて組織内で垂直統合が行われるようになることだろう(この話は最後の方でまた出てきます)。

 

 そうして限界コストを下げ、利潤を得ようとするわけである。

 

 だがこれらの各工程のコストを引き下げるのは、何も規模の経済性だけではない。

 

 規模の経済性の変形である範囲の経済性や、コア・コンピテンスを維持することによっても経済性が生まれる場合がある。

 

範囲の経済性

 

 たとえば日本のカシオ計算機はかつて、時計をデジタル化し安価な液晶腕時計を作り上げることに成功した。

 

 カシオはその成功で大発展し現在の地位を築いたのだ。

 

 しかし、当初は採算的にまるで引き合わない状態で、液晶腕時計の生産計画には非常な困難が伴っていた。

 

 というのも当時はまだ液晶パネルの生産は高く付き、大量生産してようやく元が取れるという状態だったのだ。

 

 そして当時は液晶デジタル・ウオッチなど、世界中にどこにも存在しない商品であったから、一体いくつ売れるのか皆目見当がつかずに苦慮していた。

 

 だが当時カシオの主力商品であった電卓の表示パネルに、液晶パネルが採用されだした。

 

 電卓ならばどれだけ売れるか予測ができる。

 

 電卓に使う液晶パネルを生産するついでに、デジタル・ウオッチのパネルも作れば限界コストは低く抑えられる、、、 そう言う風にして、カシオはデジタル・ウオッチを世に送りだした(今ならGショックね)。

 

 このように電卓・腕時計・電子手帳などの生産ラインは別だ。

 

 しかし、その液晶ディスプレイには共通の部品が使えるというような場合、応用先が多いことで規模の経済性を出すことが出来る。

 

 これを特に「範囲の経済性」という。

 

 もちろんこのコーディネーションはそんなに簡単なことではない。

 

 というのもカシオ計算機はたくさん電卓が売れるという予測ができたからこそ大量に安く液晶ディスプレイが作れ、だからこそそれと同じ部品を使って腕時計を安く作れるというメドを立てることができたのである。

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コア・コンピテンス

 企業が頻繁に新しい商品を世に送り出す場合、製品の開発段階で重要な規模の経済性「コア・コンピテンス」を享受できる。

 

 つまりコンピュータやその周辺機器を開発しつづければ、新しい製品を作るために1から始めなくてもよい。

 

 生産設備も生産技術も開発スタッフも少しずつ成長できればよい。

 

 現代のようにめまぐるしく市場に新製品を投入しなければ企業間競争に勝てないような時代や部門では、同じ商品を作り続けるための規模の経済性より、このようなコア・コンピテンスの方が実は重要な要因なのである。

 

 これを特に「企業のコア・コンピテンス」という。

 

 コア・コンピテンスは、継続したダイナミックな生産形態では非常に重要である。

 

 だから現在の製品が不人気でも、将来のために生産や販売を続けることが将来の投資になる(という面がある)。

 

 軍事技術などはその典型で、いったんコア・コンピテンスが失われると、一朝一夕には復旧できない。

 

 だから第一次世界大戦後のドイツなどは、ソ連と秘密条約を結び技術者や将校などを温存しようとした。

 

 コア・コンピテンスは「習熟効果」「教育的効果」などと言う場合もあるが、組織はこのように「規模の経済性」「範囲の経済性」「コア・コンピテンス」の状況によって生産組織のデザインを決定するわけである。

 

(つづく;次回は補完性の話の予定)今回の・・・「範囲の経済性」の説明には、スーパーなどの商業施設の集積を例に出す場合もあります。

 

 つまり消費者が商品を購入する場合にはコストがかかり、あちこちに買い物に出かけるより、一所に商業施設が集まっている場所に買い物に行く方がコストが小さくなる。

 

 つまり消費者が安くなくても大きなスーパーに出かけるのは、そこに「範囲の経済性」があるからで、決して怠けているわけではない、、、、ということですね。

 

 八百屋と肉屋と魚屋のうち、どれか一つが欠けるとその商店街はあっという間にさびれる、、、というのは、その商店街が範囲の経済性を失ったからだ、、、という風な話を覚えておくといいかも。

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