垂直統合と市場調達

垂直統合と市場調達

垂直統合と市場調達

垂直統合と市場調達
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 一つの財を生産し販売するには何段階もの工程がある。
 それを簡単に書くと、
<上流>    {原材料}
       ↓{部品}
       ↓{システム部品}
       ↓{最終組立}
       ↓{流通}
<下流>   ↓{販売}
となる。

 

 これらの工程の殆ど全ての工程を、一つの企業でやってしまおう
というのが「垂直的統合」というやり方である。このような極端な
垂直統合を行うと、企業は全ての段階での利益を独り占めすること
が可能になるだろう。

 

 だがしかし現代ではこのような極端な垂直統合は行われない。
それは一体なぜであろうか?

 

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■市場調達の長所(1)「規模の経済性」
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 ボールペン・メーカーでもなければ、自社で使うためにボールペ
ンを自社製にして作ろうという企業はない。それは電話であれ、フ
ァックスであれ、ノートやコピー用紙であれそうである。

 

 これらは標準化された財で市場を通して安く手にはいるし、自社
内で使うために大量生産しても消費しきれずに余ってしまうから、
自製するよりも外部から購入した方がはるかに安くすむ。

 

 ある企業が自社で使うために何かを自製する場合はまず「規模の
経済性」を達成できるだけの使用量が見込まれなければならない。
「こんなに使うんだったら、自分のところで作った方が安く付く」
という場合にのみ、企業はその財を自社内で生産する方が効率的と
なる。

 

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■市場調達の長所(2)「範囲の経済性」
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 そしてまた販売に関しては、複合的な販売が多い。

 

 たとえばガソリン・スタンドは、ガソリンを売る商売ではあるが、
経営上、様々なサービスを提供している。ガソリンを売る他に洗車
や整備、車用品の販売、オイル交換、最近ではコンビニや食堂を併
設する場合も増えた。

 

 これらはつまりガソリンスタンドという店舗を使って「範囲の経
済性」を捻出しようとしている行動である。

 

 だがガソリン会社の直営スタンドでは、このような追加的なサー
ビスがなかなか提供されない。

 

 販売に関してメーカーが直販店を大規模に経営しない場合が多い
のは、小売店にはそういう「範囲の経済性」が求められるからであ
る。

 

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■市場調達の長所(3)コア・コンピテンス
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 企業がインプットしなければならない材料を自社内で製作しない
理由の三つ目は、コア・コンピテンスである。

 

 コア・コンピテンスとは、異なる時点での製品を一つのバリエー
ションとして捉えるとき、つまり一昨年の製品、去年の後継製品、
今年の後継新製品、といったモデル・チェンジなどを行う製品など
を範囲として考えるとき、そのコアにある特別な生産技術(コンピ
テンス)のことである。

 

 たとえばある企業が新しい事業に進出しようと考えたとすると、
一から設備や生産技術を整え、それを作るための人材を一から養成
しなければならない。

 

 それに詳しい人材を捜してきて部下を教育させ、開発も生産も殆
どゼロからスタートせねばならない。

 

 だがそうやってその事業を続けていくと様々なスキルが身に付き、
最初より効率的な生産が可能になってくる。

 

 製品Aを作ったときに使った開発技術や生産技術や結果が次の製
品A'を開発するときに役立ち、そしてA'を作った時の技術や結果が
さらに次の製品A"の開発や製品化に役立つ。

 

 そういった「技術や経験(コア・コンピテンス)の継続・継承」
が時系列的な「範囲の経済性」を生む。

 

 つまり製品Aを作った後そのジャンルから撤退し、十年後にまた
製品A"を作るとなると、投資はまた初めからということになり、そ
の時にコア・コンプテンスを維持している場合より不経済となる。

 

 もちろんこれは、コア・コンピテンスを維持する費用と新規参入
コストを比較した場合に、新規参入費用が維持費用を大きく上回る
という場合にのみ起こることである。

 

 だから一度撤退しても将来新規参入コストが低くなる見込みがあ
れば、コア・コンピテンス維持にかける費用は削減しても良い。

 

 たとえばソニーはテレビゲームが普及しだした頃パソコン業界に
参入したが、NECの98シリーズや富士通のFM7などのパソコ
ンに対して殆ど競争力を持つことができず撤退した。

 

 だがIBMが汎用部品を寄せ集めてパソコンを作り、基本ソフト
(OS)も当時まだベンチャー企業だったマイクロソフトのMS-DOSを使
って大々的に売り出したために、IBM互換機が夏のキリン草のご
とく広まった。

 

 そして互換機がたくさん出たために、日本や韓国や台湾のメーカ
ーは標準的な部品、たとえばメモリーやハードディスクを大量生産
することができ、誰でもパソコンを組み立てて作れるようになった。

 

 CPUなどの部品が標準化され、部品調達が容易になったために
ソニーは再びパソコンを市場に投入することができ、VAIOを大ヒッ
トさせた。

 

 つまり

 

1)部品の外部調達が不可能な場合は企業内のコア・コンピテンス
が意味を持つから自社内で製作する。

 

2)外部調達が可能な場合は、その部品を作っている企業のコア・
コンピテンスにかなわないから、外注する。

 

ということになるから、部品が標準化され、金さえ出せばいくらで
も部品が調達できるような状況になれば企業の垂直統合は崩れてい
くわけである。

 

 

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■独立した競争的なサプライヤーの利用
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 企業の垂直統合が上手く行かないのは、大抵の部品があまり「特
別でない」からだと言える。

 

 原子力発電所を作るとか、人工衛星を飛ばすとか言うような特殊
な生産でなければ、製品に使うボルト一本・ねじ一本を自社内で生
産する必要はない。

 

 ボルトやねじを作るには小さな町工場で十分であるし、市場には
独立した競争的な供給者が多数存在する。

 

 競争的な供給者は技術革新にも敏感だから、高度な製品も安い製
品も容易に手に入る。

 

 企業内を垂直統合して部品を内製する場合、部品が常に必要な水
準にあるとは限らない。

 

 必要以上に高度であったり(つまり高く付く)、必要な水準に達
しなかったりしてそれが製品全体の性能を制限するということも多
くなる。

 

 つまり部品の殆どを内製し垂直統合して製品を作ると、部品を市
場で調達して製品を作るよりはるかに費用がかかってしまうのであ
る。

 

 そして特注せねばならない部品も実は「競争入札」などの手段を
用いて、内製するよりも小さな費用で手に入れることが可能になる。

 

 だから現代の企業は「市場調達できる標準化された部品」と「市
場で調達できない特別な内製部品」を組み立てて商品を作ることに
なるというわけである。

 

 

NEXT:垂直統合の利点

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