コア・コンピテンスと、サプライヤーの利用

コア・コンピテンスと、サプライヤーの利用

市場調達の長所(3)コア・コンピテンス

 企業がインプットしなければならない材料を自社内で製作しない理由の三つ目は、コア・コンピテンスである。

 

 コア・コンピテンスとは、異なる時点での製品を一つのバリエーションとして捉えるとき、つまり一昨年の製品、去年の後継製品、今年の後継新製品、といったモデル・チェンジなどを行う製品などを範囲として考えるとき、そのコアにある特別な生産技術(コンピテンス)のことである。

 

 たとえばある企業が新しい事業に進出しようと考えたとすると、一から設備や生産技術を整え、それを作るための人材を一から養成しなければならない。

 

 それに詳しい人材を捜してきて部下を教育させ、開発も生産も殆どゼロからスタートせねばならない。

 

 だがそうやってその事業を続けていくと様々なスキルが身に付き、最初より効率的な生産が可能になってくる。

 

 製品Aを作ったときに使った開発技術や生産技術や結果が次の製品A’を開発するときに役立ち、そしてA’を作った時の技術や結果がさらに次の製品Aの開発や製品化に役立つ。

 

 そういった「技術や経験(コア・コンピテンス)の継続・継承」が時系列的な「範囲の経済性」を生む。

 

 つまり製品Aを作った後そのジャンルから撤退し、十年後にまた製品Aを作るとなると、投資はまた初めからということになり、その時にコア・コンプテンスを維持している場合より不経済となる。

 

 もちろんこれは、コア・コンピテンスを維持する費用と新規参入コストを比較した場合に、新規参入費用が維持費用を大きく上回るという場合にのみ起こることである。

 

 だから一度撤退しても将来新規参入コストが低くなる見込みがあれば、コア・コンピテンス維持にかける費用は削減しても良い。

 

 たとえばソニーはテレビゲームが普及しだした頃パソコン業界に参入したが、NECの98シリーズや富士通のFM7などのパソコンに対して殆ど競争力を持つことができず撤退した。

 

 だがIBMが汎用部品を寄せ集めてパソコンを作り、基本ソフト(OS)も当時まだベンチャー企業だったマイクロソフトのMS-DOSを使って大々的に売り出したために、IBM互換機が夏のキリン草のごとく広まった。

 

 そして互換機がたくさん出たために、日本や韓国や台湾のメーカーは標準的な部品、たとえばメモリーやハードディスクを大量生産することができ、誰でもパソコンを組み立てて作れるようになった。

 

 CPUなどの部品が標準化され、部品調達が容易になったためにソニーは再びパソコンを市場に投入することができ、VAIOを大ヒットさせた。

 

 つまり1)部品の外部調達が不可能な場合は企業内のコア・コンピテンスが意味を持つから自社内で製作する。

 

2)外部調達が可能な場合は、その部品を作っている企業のコア・コンピテンスにかなわないから、外注する。

 

ということになる。

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独立した競争的なサプライヤーの利用

 部品が標準化され、金さえ出せばいくらでも部品が調達できるような状況になれば企業の垂直統合は崩れていく。

 

 企業の垂直統合が上手く行かないのは、たいていの部品が「あまり特別でない」からだと言える。

 

 原子力発電所を作るとか、人工衛星を飛ばすとか言うような特殊な生産でなければ、製品に使うボルト一本・ねじ一本を自社内で生産する必要はない。

 

 ボルトやねじを作るには小さな町工場で十分であるし、市場には独立した競争的な供給者が多数存在する。

 

 競争的な供給者は技術革新にも敏感だから、高度な製品も安い製品も容易に手に入る。

 

 企業内を垂直統合して部品を内製する場合、部品が常に必要な水準にあるとは限らない。

 

 必要以上に高度であったり(つまり高く付く)、必要な水準に達しなかったりしてそれが製品全体の性能を制限するということも多くなる。

 

 つまり部品の殆どを内製し垂直統合して製品を作ると、部品を市場で調達して製品を作るよりはるかに費用がかかってしまうのである。

 

 そして特注せねばならない部品も実は「競争入札」などの手段を用いて、内製するよりも小さな費用で手に入れることが可能になる。

 

 だから現代の企業は「市場調達できる標準化された部品」と「市場で調達できない特別な内製部品」を組み立てて商品を作ることになるというわけである。

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