債務超過と過小投資の問題

債務超過と過小投資の問題

債務超過と過小投資の問題

 ある企業が債務超過に陥っている場合、その企業に対しての投資や融資は行われがたい。

 

 というのも投資や融資をしたとたん、その資金はすぐに債務の返済に充てられてしまい、後から投資した者には何も返ってこない可能性が高いからである。

 

 たとえば何かの事情をやっている会社に今、一千万円の投資を行えば、翌年には二千万円となって資金が戻ってくるような有望な事業だったとしよう。

 

 初期投資の十倍や百倍の売上や利益が出るような事業は、高度経済成長期にはよく見られたし、今だって実はたくさんある。

 

 あるいは事業が成功して、さらに規模を広げれば利益が大きくなるが、その資金が少し足りないような場合を想定しよう。

 

 ところがこの企業が今、債務超過に陥っているとしよう。

 

 債務超過とは、企業が持っている資産(土地・建物・預金・営業網など)の金銭換算額より借入金の金額が大きくなることである。

 

 土地バブルが弾け、土地の価格が半値以下に暴落してしまったせいで、昨今の大半の企業は債務超過に陥るというような異常事態になってしまったが、そんな感じで借金の方が資産や換金可能な資金よりはるかに大きくなってしまう状態である。

 

 こうなるとこの企業に一千万円投資したとしても、次の瞬間にはこの企業に金を貸している銀行に回収されてしまうかも知れないという危惧が生じる。

 

 そうなると、たとえその企業の事業が確実に利益が上がるものであるとわかっていても、投資家はその企業に投資できなくなる。

 

 なぜなら投資した一千万円が一年後に二千万円の利益を生むと分かっていても、それが投資家に還流されるという保証はどこにもないからである。

 

 儲けが出ても、それより前にその企業に金を貸しているところがまずその儲け分を当然のように回収していく。

 

となると、投資してもその金は債権者に移るだけで事業が展開されない。

 

 展開されないなら儲けがでないから、投資は金をどぶに捨てるだけということになる。

 

 だから、債務超過の企業への投資はどうしても少なくなる。

 

 これを「債務超過と過少投資の問題」という。


債権放棄

 だがしかし資金さえ調達できれば利益が上がるとわかっているのにそれに対して投資や融資が行われないというのは、非効率である。

 

 全体として考えるとこの投資があったほうが、投資が行われなかった場合より利益がある。

 

 たとえば債務超過が一千万ある企業があるとする。

 

 債務超過が一千万あるのだから、倒産してもおかしくない企業である。

 

 だがある銀行が、この企業に二千万ほど融資をしていたとする。

 

 二千万の融資はこの企業が倒産したら帰ってこない可能性が高い。

 

 というのもすでに一千万は債務超過になっているわけだから、この企業の資産を全部換金したとしても、一千万足りないからである。

 

 すなわち「最良で一千万円しか融資を回収できない」のであり、倒産する企業は実際には隠れ債務のようなモノがあるのが普通だから、融資した二千万はたぶん回収できないだろう。

 

 だが実は、この企業の営業利益は安定していたとする。

 

 少し投資をしてシステムを改善すれば全体としての効率が上がり、利益率も高くなることが予想される、とする。

 

 債務超過になったのは、たまたま工場が火事になって生産ができなくなったとか、財務担当者が資金を株式投資に回して大損してしまったとか、赤字事業に大投資をして失敗したとかいう、本業とは関係ないイレギュラーな失敗のせいだった、、とする。

 

 とすると融資をしている銀行としては、この企業を倒産させて融資をパアにするより、存続させて利益を上げてもらう方がはるかによい。

 

 だが問題が一つある。

 

一千万ほど債務超過がある。

 

 だから、投資する資金を出すモノがいないのである。

 

 もちろん現在二千万を融資している銀行がさらにもう一千万融資を増やすという選択肢もあるが、銀行としては傷口を大きくするような選択肢である。

 

 今この企業を倒産させれば二千万の焦げ付きだ。

 

 しかし、融資を増やせばそれが三千万にふくらむ可能性も出てくる。

 

だから他のモノに投資をしてもらいたい。

 

 このような場合、債権者である銀行がが債権放棄を宣言し、「負債の凍結」あるいは「債務の減額」といった方策が採られる。

 

 この企業に投資しても、その投資された資金は企業の事業に使われ、借金の返済には充てられない(あるいは投資の配当を優先する)という約束にして投資を集める。

 

 これがつまり「債権放棄」という手法である。

 

 銀行は3年間この企業に対する二千万の融資を引き上げない。

 

あるいは二千万のうち債務超過に陥っている一千万の債権を、一時的に放棄するなり「劣後債(れつごさい)」などに切り替える。

 

 劣後債とは、企業が倒産した場合に返済義務が一番最後になる債権であるが、これによって企業は優先株や転換社債やその他の方法で新たに資金を集めることが可能になる。

 

 この新たな資金の調達のお陰で企業が持ち直せば、銀行も融資を焦げ付かせなくてすむ可能性が出てくる。

 

 どのみち回収できない可能性の高い融資なのだから、放棄しなくとも返ってこない確率は高い。

 

だったら半分放棄して少しでも回収の可能性のある方に賭けようというのである。

 

 銀行への資本注入や、ブラジルなど債務国の債権を放棄するという政策は、この非効率問題を解決する一つの手段である。

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