総価値最大化原理(1)

総価値最大化原理(1)

総価値最大化原理(1)

 S製薬がドイツのベーリンガーにTOB(公開株式買い付け)で
発行株式の35%を押さえられてしまいました。
 その話は今年の初めに同社で働いている大学時代の友人から
「多分TOBは成功しそうだ」
と聞いていたんですが、市場価格より四割ほど高く株式を買うぞと
言われたら、一般の株主は株を売っちゃうモンなんでしょうね。

 

 今までは日本の社会全体が高度成長していて、株式の額面増資
(たとえば株主は企業が増資する場合に額面の値段でその企業の株
式を買えた。つまりたとえ市場価格が千円でも、株式に五十円と書
いてあったら五十円で買えた。大昔の話だけど)とか株式分割(文
字通り一株を何株かに分割する。市場価格がべらぼうに値上がりし
たら、上場しても取引が行えなくなるので分割する)などによって
株式をずっと持っていればいずれは十分に儲けられた。

 

 けれど経済成長が見込めなくなった今、株式を温存していても恐
らくはそんなに儲けることはできなくなったから、一般の投資家は
喜んでベーリンガーに株を売ったんでしょう。

 

 この話は今回の総価値最大化原理と少し関係があるかな?

 

 

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          総価値最大化原理(1)         

 

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等価指数
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 前回も述べたとおり、資産効果が存在しない場合に効用関数は簡
単な式で表すことができる。

 

 つまり一般的な効用関数は金銭などの資産をx、金銭以外の資産
(? たとえば役職とか、地位とか、名声とか)をyとした場合、
u(x,y)の形で表すことができるが、非常に複雑な関数を想定しなけ
ればならなくなる。

 

 だが資産効果が存在しない場合、効用関数は簡単にU=X+Yの
形で書くことが可能になる(ただしYは金銭量に置き換えた価値)。
つまり金銭的な価値とその他の価値は別々に存在し、効用はその合
計ということである。

 

 隣り合った塾と工場の例で、塾にとって隣に工場がある状態をy0、
隣にない場合をy1とすれば、当然 y0<y1 である。隣に工場がな
い場合の方が塾の価値は高まるから、当然そうなる。

 

 そして塾側が工場に金銭Δxだけ支払って移転してもらうとする
と、Δxは y1 - y0 と同値かそれより低ければよい。

 

 一方塾から移転費用や慰謝料等を受け取る工場側の効用はΔx-移
転費用分だけ増えるかも知れない(Δx-移転費用≧0とする)。
 というのも工場がその場所にある必要は大抵の場合あまりないか
らである。

 

 だからこの交渉が成立する場合、全体の効用は増大することにな
る(少なくとも減ることはない)。つまり

 

 塾: x+y0 → x-Δx+y1  ただし y1 - y0≧Δx≧0

 

工場: z+y0 → z+Δx-(移転費用)+y2  ただし y0≒y2
                      Δx≧(移転費用)

 

ということで、総価値を合計すると、

 

(取引後) x+z+y1+y2-(移転費用)
(取引前) x+z+ 2・y0
 利益   y1-y0+y2-y0-移転費用 ≒ y1-y0-移転費用 ≧0
※もちろん塾の便益の増分 y1-y0 が工場の移転費用より小さいと
この取引は成立しないから y1-y0-移転費用 ≧0となる。 

 

となるからである。

 

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総価値最大化原理
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 上の例で工場を移転させても総価値が増大も減少もしないような
場合を特に「パレトー最適(或いはパレート最適)」と呼ぶ。

 

 要するにどう資産や資源の配分を変更しても、それ以上全体の総
価値を大きくすることができない、効率的で最善の配分だと言うこ
とである。

 

 もちろんこの話にはもの凄く違和感がある。
 と言うのも実際には、塾の隣に工場がない場合の塾側の便益は計
り知れない大きさを持つし、一方の工場としては別にその場所でな
くてはならない必要性は少ないから、工場が移転する方が必ずとい
っていいほど価値合計は高くなるだろうと「感じる」からである。

 

 塾側の工場移転によって受ける便益が計り知れないのは、それが
塾の存亡にかかわる問題であるからであり、そのためには借金をし
てでもいくら支払っても良いと考えるような、一種の「資産効果」
が生じているからなのだ(Δxが総資産より大きくても取引が行わ
れる可能性は十分にある)。

 

 とにかくここで大事なのは、工場と塾の資産合計(要するに持ち
金の合計)は、工場の移転前後で増えても減ってもいないのに、取
引することによって双方の効用(満足度)や便益(金銭以外の利益
も含めた得)が増えることである。

 

 すなわち「どう儲けるか」と「どう配分するか」と言う問題は、
別問題であり、企業や組織がどのような儲け方をしようと、資源配
分には効率的な配分と非効率な配分があるだけだ、、ということで
ある。

 

 

(つづく)
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          今日のまとめ

 

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 全体の総資産をxとすると、xを配分する方法には非効率な配分
と効率的な配分がある。

 

 そして効率的な配分とは、それ以上どう配分方法を変更したとし
ても全員の満足度(効用)の合計が増えなくなってしまった状況で
の配分であり、これを特にパレトー最適と呼ぶ。

 

 資産効果がない場合、企業や組織がどう儲けるかという問題と、
儲けをどう配分するかという問題は切り離して考えることができる。

 

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           今日の……

 

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 要するに同じ企業内で、休みが欲しい人と金が欲しい人がそれぞ
れ仕事と休みを交換すると、企業全体の満足度が増える、、という
のと同じでしょうか。

 

 そしてこのとき総資産が増えればより全体の満足度は増える。
 休みが欲しい人は休んでもいくらか給料をもらえ、金が欲しい人
はよりたくさんの上乗せ(残業割り増しなど)がもらえる。
 だから高度成長時代はなんだかんだ言っても世間は明るい。

 

 しかし一方もし全体の総資産xが縮小し出すと、そう言う取引が
不可能になるから、休みたい人は休んだら給料が減るし、クビにな
るかもしれない。
 金が欲しい人も余分に割り増しがもらえるどころか、残業分の金
ももらえなくなったりする。

 

 ボクなんか休みたくても、会社がバイトの欠員を何回も補充せず
に済ましたから、年休がたくさんあっても休めなくなった。
 おかげでみんな不満タラタラですよ。デフレ・スパイラルはだか
ら怖い。

 

NEXT:総価値最大化原理(2)

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