モジリアーニ=ミラーの定理

モジリアーニ=ミラーの定理

借入金+株式調達金=企業価値

 企業の資金調達方法を「銀行借り入れ(あるいは負債)」と「株式発行」の二種類に限定して考えてみる。

 

 また返済はもちろん負債が優先され、株主への配当や支払いは全ての負債が返済された後に行われるものとする。

 

つまり株主は負債の返済後に残る収益を持ち株数に応じて受け取るということである。

 

 話を簡単にするために、企業はローンを何とかかんとか返済できるだけの収益をあげているとする。

 

 企業のランダムな総収益をX、企業の借入金をBとすれば、株主は一年後X−B(1+r)だけの残余収益を受け取ることができる。

 

 株主がこのX−B(1+r)だけの残余収益を受け取るためには、まずその株券を手に入れなければならないわけだ。

 

 しかし、そのための費用をPとする。

 

 つまり企業は資金として「借入金B」と「株式発行による調達金P」を得ると言うことになる。

 

 これらを合わせた額、すなわちB+Pを「企業価値」と呼ぶ。

 

 さて企業の借入金Bは、この企業価値にどんな影響を及ぼすのであろうか?


投資家サイドからの視点

 投資家サイドから投資をみると、投資は危険を分散するという形で行われる。

 

 手持ちの投資金を一社に全部投入する必要は何もない。

 

10社に分散し、その一つが十倍になれば他の九社の株がパアになっても投資はトントンになる。

 

 そこである企業1と別の企業2を考える。

 

 企業1は株式だけを発行して資金調達を行い、企業2は株式発行と借入Bを併用するものとする。

 

 で、ある投資家がもし0.05Xだけの利益を受け取ろうと目論むとすると、企業1の株式の5%の株式を所有すればよい。

 

 すなわち企業1の借入金B1=0で企業の収益Xは全て株主に分配されるわけだから、その5%の株式を所有していれば0.05Xだけの利益はそれで受け取れる(投資額は0.05P)。

 

 しかしこの投資家には別の選択肢もある。

 

 すなわち企業2の株式を5%所有し、なおかつ社債も5%購入するという選択肢である。

 

 そうするとこの投資家は社債から0.05B(1+r)と、株式から0.05*(X-B(1+r))の配当を受け取ることになる。

 

 だから、合わせれば0.05Xだけの利益を受け取ることが可能になる。

 

(総投資額は、0.05*(B+P(X-B(1+R)))) ここでもしP(X)が、B+P(X-B(1+R))より大きくなると、投資家は企業1の株式を買うという選択より企業2の社債と株式を買うという選択をとることになるので、企業1が株式だけで資金を調達しようとするならP(X)をB+P(X-B(1+R))以下にしなければならなくなる。

 

 つまり P(X) ≧ B+P(X-B(1+R)) である。

 

………(A) 一方別の投資家は、X-B(1+R)の10%の投資利益を求めているとしよう。

 

 この投資家の選択肢は、1)企業2の株式の10%を買う(費用は0.1P(X-B(1+R))。

 

2)金利rで0.1Bだけ借入をし、そして企業1の株式の10%を買う(費用は0.1P−0.1B)。

 

となる。

 

もちろん1)と2)で得られる利益は同じである。

 

 このとき企業2が株式発行によって資金調達をするためには、その費用(株式価格)P(X-B(1+R)) がP(X)-Bを上回ると株式が売れなくなる。

 

 だから、P(X-B(1+R))  ≦ P(X)-B ………(B) でなければならないことになる。
 さてここで(A)と(B)を同時に満たすのは、P(X) = B+P(X-B(1+R))の時だけである。

 

 だから、企業が株式発行だけで資金を調達しようが、銀行借入で資金を調達しようが、企業価値B+Pは借入金Bの割合には左右されないことになる。

 

 これを「第1モジリアーニ=ミラーの定理」と呼ぶ。

 

 要するに古典派経済学お得意の「完全市場においては、中身がどのような構成でも無関係になる」というパターンである。

スポンサードリンク

このエントリーをはてなブックマークに追加