スクリーニングと業績給

スクリーニングと業績給

スクリーニングと業績給

前回の復習

 

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 これから何らかの取引を行おうという場合に、相手と自分の間に
「情報の非対称」、つまりどちらか一方が取引に関して有利な知識
や情報を持っているような状態があったとき、その非対称を解消し
ようという努力がよく行われる。

 

 たとえば高学歴や役に立つ資格などの持ち主は、就職の際にそれ
を履歴書に書き込むことによって就職を有利にしようとするが、そ
れは高学歴や資格と言ったモノが「働きますよ!」「能力がありま
すよ!」というシグナルになるからであり、そのシグナルを目安に
雇用主が人を雇うからである。

 

 また高品質の製品を造る企業は、その商品に対して品質保証をし、
「十年間保障」「五年間無料修理」「お気に喰わない場合は返品下
さい」などといった取引保証を付けて商品を売るが、それはそのよ
うな行為が「商品が高品質である」というシグナルとして働き、商
品を消費者が買うからである。

 

 高学歴や資格を持っているということは、本人が言い出さなけれ
ば相手には伝わらないし、また商品が高品質であるという「事実」
は、その道のプロや専門家でなければなかなか見分けられない。

 

 雇用者や消費者は彼らがそう言うシグナルを出さない限り、求職
者や製品の情報を持たない(つまりこれが情報の非対称)。

 

 だからその情報の非対称を「売り込みたい側」がシグナルとして
提示して取引相手にそれを伝えて非対称を解消する、、、、これが
つまり「シグナリング」という行為なのである。

 

 そして「売り込みたい側」ではなく「買いたい側」が情報の非対
称を埋めるべく行動する場合もある。

 

 反対方向の非対称解消手段が、今回の「スクリーニング」である。

 

 

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        スクリーニングと業績給

 

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 私的情報を持つ側のいろいろなタイプを何らかの規準によって区
別するために、情報を持たない側が取る行動が「スクリーニング」
である。

 

 スクリーニングは、私的情報を持っている側に多様な選択肢を与
え、相手が何を選んだかによって私的情報が公開される(情報の非
対称が解決される)という方法である。

 

 シグナリングと同様、スクリーニングでも「自己選択制約」が重
要な役割を果たす。

 

 

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■年齢/賃金プロファイル
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 給与が年齢や経験とともに増加する傾向は一般に良く見受けられ
るが、それを生み出す要因は、

 

・経験とともに技能や能力が高まる(人的資本の増大)。
・有能であると認められた長期勤続者に対する責任範囲の増大。
・各個人の才能が明らかになるにつれて増す仕事への適合度。

 

などであると考えられている。

 

 がしかし、そういう効果を統計的手法で取り除いた後でさえも、
年齢と賃金の関係は有意な(=意味のある)関係を示すことがよく
ある。

 

 つまり同じ仕事・同じ役職・同じ業績を上げている人間が二人い
たとしても、どういうわけだか年齢が高い方に高い賃金が支払われ
ている場合がよく見かけられるのだ。

 

 しかし企業としては、同じ仕事・同じ役職・同じ業績の人間に対
して同じ賃金を支払った方がよいはずである。

 

 能力に沿った賃金を支払う会社の方が競争力が高まり、利潤の最
大化が図れはずである。

 

 だから企業はなるべくそういう配分の仕方(つまり能力・業績の
みに準じた賃金システム)を目指すはずで、そしてそれは有能な若
者にとっても好都合だから、有能な若者を集めやすいという利点も
あるはずなのに、どういうわけだかこれまでそういう
「高年齢≒高賃金」
といった賃金支払いが行われてきたのである。

 

 この疑問に対する一つの答えは
「高年齢者は子育てなど、お金のかかることが様々あって金が必要
だから高賃金をもらうべきだ、、、という社会規範があるからだ」
ということである。

 

 だがしかし、ジョーン・サロップとスティーブン・サロップは、
従業員の移動を減らすための「スクリーニング」がその理由なので
はないかと分析している。

 

 

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■社内教育とスクリーニング
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 企業や雇用主は、従業員に対して仕事に関する何らかの教育を行
う。

 

 倉庫業ならモノの並べ方・積み方などを最初に教育し、次にフォ
ークリフトなどの運転や資格を取らせたりするだろう。

 

 IT関連の企業なら、一般従業員には初級シスアド・開発部門の
新入社員には基本情報技術者(旧第二種情報処理技術者)の資格が
取れるようにカリキュラムを組んで教育を行うことだろう。

 

 だがしかし、そういった人的資本に対する投資は、回収できるか
どうか不確定である。

 

 そしてそういう投資を施した従業員が辞めるとなると、企業や雇
用主は損をすることになる。

 

 たとえばベテランが辞職すれば、新しい従業員をベテランの域ま
で教育するためにコストがかかる。すなわち従業員にどんどん転職
されてしまうとコストが増大するのである!

 

 だから企業は有能かつ転職する確率の小さい従業員を雇おうとす
るのだが、それは仕事を探している人間側の持つ「私的情報」だか
ら、企業には誰がそう言うタイプの人間であるか分からない。

 

 それを見分けるスクリーニングの方法がつまり、

 

「若い人間には相場より少し安い賃金しか支払わず、ある一定の職
歴を達成した者にだけ高い賃金を支払う」

 

という方法なのである。

 

 気短な、転職の恐れのある人間は、安めの賃金には耐えられない。

 

 そう言うタイプの人間にとっては、将来の高賃金などまるで魅力
的ではないから、そう言う人間は転職を「自己選択self-selection」
するだろう。

 

 一方長く勤務するタイプの労働者には、現在の安めの賃金など気
にならない。

 

 転職するにも何らかのコストがかかるし、高い賃金を求めて右往
左往するのも面倒である。

 

 そして現在は低賃金であっても将来高賃金を受け取ることができ
るというシステムがあれば、さらに転職を思いとどまるだろう。

 

「能力に合った高賃金を今受け取る」

「今は能力に見合わない低賃金だが、将来は能力以上の高賃金を受
け取ることができる」
か、、、

 

 そういう選択肢を従業員に与えることによって、企業は従業員の
私的情報を開示させ、情報の非対称を解消しようとするのではない
か? というわけである。

 

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※ もちろん新入社員に対する低賃金は、
「教育コストを賃金から相殺しているのだ」
と考えることもできるが、それではそれでは高齢者に対する高賃金
が説明できない。
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■業績給とスクリーニング
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 さて最後に、ある企業内の有能な従業員に外部の別の企業でもっ
と良い条件で雇用される可能性や機会がある場合を考えてみよう。

 

 こういうタイプの従業員には、様々なタイプの雇用契約のメニュ
ーを提示し、選択させるという方策も可能であろう。

 

 自分で仕事と賃金の組み合わせを選べ、その業績によって賃金を
得ることができるものとすれば、従業員は自分に合った職種や仕事
量・賃金率を選べることになるから、生産性の高い労働者を企業に
引き留め、また生産性の低い労働者を企業に残りにくくすることが
できるかもしれない。

 

 もちろんそれは、能力や業績と賃金が上手く対応するような組み
合わせを提示することができなければならないという条件付きだが、
もし本当に上手く労働者がどれだけ働いているかをモニターできる
という場合であれば、業績給制は生産性の高い労働者を集める強い
インセンティブになるだろうし、スクリーニングによる効果をさら
に強化することになるだろう。

 

 

 

(つづく。次回からはモラル・ハザードの問題です)

 

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           今週の・・・

 

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「情報の非対称が存在する場合、その非対称を解消する方向に努力
が行われ、売り手側が何らかの行動を起こして解消しようとするの
がシグナリング・買い手側が何らかの行動を起こして解消しようと
するのがスクリーニング」

 

、、、というのはボクなりのまとめなので、もしかしたら間違って
いるかも知れません。悪しからず。
                           (み)

 

 

NEXT:モラル・ハザード!

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