不確かな財産権とインセンティブ

不確かな財産権とインセンティブ

不確かな財産権とインセンティブ

 取引が不可能な財、誰のモノか帰属がハッキリしない財などの
「不確かな財産権」から発生したインセンティブ問題は、様々な名
前で問題にされる。

 

 たとえば
・共有資源の問題
・公共財の問題
・フリーライダー問題
・共有地の悲劇
といった問題などがそうである。

 

 これらの問題の基本的な構図は、

 

「大勢の人々が一つの共有資源に対する利用権を持つ時、資源の過
剰利用インセンティブが生じる。そしてその共有資源のコストを分
担して提供する義務を負うとき、過少供給に陥る」

 

と言うことである。

 

 資産の残余利益が広範に(つまり大勢の人に)分配されるとき、
誰もその資源の維持や増進について積極的に費用を負担しようとは
しない。

 

「公園が足りない」「憩いの場がない」
と人々は言うが、それを自分たちの金と力で作ろうとする動きは弱
く「行政に求める」のみであることが多い。

 

 というのもそういう場を作るのにはコストがかかるし、それを維
持するのにもコストがかかる。

 

 街の中の小さな公園を作ったり維持したりするために、ゴルフ場
の会員権などのようなやり方は殆ど不可能。

 

 また公園を作って木々を植え、綺麗な花壇を作ったとしても、そ
れを楽しむのを会員のみに制限するのは難しい。

 

 これを経済学では「非排他性」というが、そうして自分がコスト
を負担して、コストを負担しない誰かが楽しんだり儲けたりするよ
うな状況では、殆どの人間がタダで利用する方を選ぼうとするから、
公共財や共有資源の供給や管理は、必要最小限を下回る(アンダー
サプライ)ということになる。

 

 こういう場合の対策として、所有権の集中(特定のグループに所
有権を設定する)が効果を上げることがある。

 

 

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■「漁業権」の是非
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 漁業資源は常に「再生可能」でなければ漁民はすぐに失業する。

 

 乱獲によってカニやまぐろなどの生息数が、種の維持を保てる最
小数より少なくなると、その資源は枯渇する。

 

 だから漁業権という「所有権」を設定し、それを地元地域や漁協
などに与えると、地元の漁業資源を保全しようと言うインセンティ
ブが生まれる。

 

 なぜかと言えばそれは、他の海域にも同様の漁業権が設定される
から、自分の海域の資源が枯渇した場合、他の海域でサカナなどを
取るには「入漁料」や「漁獲割り当て」などの仕組みによってより
大きなコストがかかるようになるからである。

 

 高く売れる魚であれば少々高い入漁料を支払っても、外に穫りに
行くインセンティブは生じるが、しかし高く売れる魚をわざわざ他
の海の漁師に安く穫らせるなんて事はない。

 

 市場価格と外から取りに来た漁船のコストの差が結局「入漁料」
になる。
 リカードの「差額地代論(レント)」と同じような感じである。

 

 だからその漁場の漁民がバカでない限り、結局は同じことになる。 

 

 漁業権を設定することによって、そうして漁業資源の保全をする
インセンティブを作り出すことができる。

 

 だがしかし、もちろん問題はある。

 

 まず第1に、不法侵入して乱獲する外部の船を排除するのに、相
当費用がかかってしまう。

 

 海はなんと言っても広いから、外部の船を排除するのにはものす
ごい金がかかってしまう。

 

 その費用を国家が負担すれば、漁協の財産権という私的財産を保
護するために多額の税金を投入しなければならないということが生
じる。

 

 そして第2に、漁協内での乱獲者や違反者の不正行為を防止する
コストもかかる。

 

 第3には、漁業権の取り扱いや分配方法について、もめる事は避
けられないと言うことである。

 

 現在の資源状況をどう判断し、将来の漁獲量をどう推定して決め
るかは、ハッキリとしたデータでは示しにくい。だからそれぞれが
自分の事情と照らし合わせて勝手な事を言う。これをまとめるのも
大仕事である。

 

 そういうわけで確かに漁業権の設定は資源保全のインセンティブ
を創り出すが、必ずしもそれが効率性を高めるとは限らないのであ
る。

 

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■単独所有とインセンティブ
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 漁業権は、特定のグループに所有権を割り当てるという形で資源
保全のインセンティブを創り出すという方法であったが、資源や財
を保全する場合に最も強いインセンティブを与えるのは「単独所有」
である。

 

 普通の財に関して「単独所有」は非常に上手くいっているから、
今度はこれを漁業権に応用することを少し考えてみる。

 

 漁業権を一人の人間に割り当てるとした場合、その人間は確かに
資源保全に大して強いインセンティブを与えられるだろう。

 

 漁業権をオークションにかけ、最も高い価格をつけたものに与え
れば、漁業資源を最も高く評価しているモノがそれを落札し、当然
資源配分を最適化して操業することだろう。

 

 だがしかし、漁業資源に関しても「私的情報」は存在する。

 

 つまり現在の資源量や将来の資源量がハッキリ推定できないと、
手に入れた漁業権を使って乱獲した後、その権利を「まだ獲れる」
と見せかけて他の誰かに譲渡するということも可能だから、結局非
効率な資源配分をしてしまうということもよくある。

 

 

NEXT:取引もできないし誰のモノかも不確かな財の所有権

 

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