敵対買収とモラルハザード

敵対買収とモラルハザード

敵対的買収

 敵対的買収とは「現行の経営者や取締役会に対する不満から、法人の所有権を変更すること」である。

 

 買収の方法は、現行の株主から大量の株式を取得し、取締役会の選挙を自由に操作することで行われる。

 

業績が低迷している、あるいはもっと良い業績が残せるはずであると考えられる企業が、それよりずっと低いパフォーマンスしか示していない場合、それは経営者や取締役会が「無能である」と考えられる。

 

 そういう企業が存在した場合、投資家はその企業の株式を買い集め、敵対的買収によって経営者や取締役会の入れ替えを図るというのが敵対的買収である。

 

ある企業がそういう買収対象になるとその企業の株価が急騰することが多いが、それは買収によって企業の業績が向上するという期待感の現れであるかも知れない。

 

 買収プレミアムはもちろん経営者の無能を証明する決定的な証拠ではないが、しかしその反映である可能性が高い。

 

 というのも敵対的買収のターゲットとされた企業が、ポイズン・ピル条項という「乗っ取り防止のための自己株式取得策」を、株主の賛同ナシに発動することが多かったからである。

 

 これらの経営者の行動も、一種のモラル・ハザード問題であると考えられる。


金融契約上のモラルハザード

 多くの企業が負債と自己資本(エクイティ)を組み合わせて資本を調達している。

 

 自己資本の保有者は、債務返済後に残る利潤を全て手にする。

 

 株式会社の場合には、自己資本は株主に属している。

 

そして企業の運営方針を設定し経営者を雇用するに当たっては、自身の利益を代表されるように、株主は取締役会を選出する。

 

 パートナーシップもしくは個人企業の場合には、パートナー(共同出資者)もしくは所有者が自己資本に対する請求者となる。

 

 深刻なモラルハザードがなければ、企業運営は自己資本所有者の利益に即したモノとなるが、しかしそれは企業の債権者の利益とは必ずしも一致しない。

 

※企業の自己資本を持つ者の利害と、企業に金を貸している者の利害の話ですね。

 

  企業に金を貸している者は企業が危険な投資をすることには消極的であるが、一方金を借りている方は大胆にそれをする。

 

 その理由は・金を借りている方は上手くいけば巨利を得られるが、失敗しても 借金を踏み倒すだけでよい(あとあとの信用問題は残るが)。

 

・逆に金を貸している方は事業が上手くいっても決まった金利しか 手にできない上に、事業が上手くいかねば元金も回収できないこ とがある。

 

からである。

 

 S&Lの例で指摘したように、企業が株価最大化を目指して行動するときモラルハザード問題が発生する恐れがある。

 

つまり株価を吊り上げ資金調達を容易にし、さらにそれを株に投資したりするような危険な「バブル投機」を選択しようとする。

 

 だから金の貸し手はそれをなんとか防ごうとする。

 

 その方策としては、・信用調査をする。

 

・担保を要求する。

 

・業績を監視する。

 

・債務の部分的返済を要求する。

 

・債務の即刻返済が可能な契約を結ぶ。

 

・貸し手側が企業に取締役を送る。

 

などがある。

 

これらの措置があるにもかかわらずローンが返済不能になったり、支払が滞ったりする場合、貸し手は借り手の企業の破産を申し立てることができる。

 

そうしてその企業の資本が流出しないように、することができる。

 

 破産は貸し手の資産価値を守るための、制度的取り決めであるといえる。

 

破産は企業経営者のモラルハザードをチェックする機能を持つ。

 

 アメリカの税法では、企業の負債の利子には税金がかからないが、企業の配当には税金がかかる。

 

だから企業にとっては借金によるファイナンスの方が有利になるはずだ。

 

 しかし、しかし必ずしもそうはならない。

 

 負債が増え自己資本率が低下すると、自己資本の保有者や経営者はリスクを冒すインセンティブが大きくなる。

 

 だから企業の貸し手はより多くの担保を求めたり、企業に対して広範囲の財産コントロール権を求めたりする。

 

 このことがつまり経営者のモラルハザードを防止する一つの要因となるのである。

 

この問題はまた後に取り上げる。
※ この辺の話はテキストの後の方に詳しく出ているので、興味のある方は542pあたり(コーポレート・コントロールの章)をお読み下さい。

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