所有の統一とインフルエンス活動

所有の統一とインフルエンス活動

所有の統一とインフルエンス活動

モラルハザードの三条件(復習)
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 モラルハザード問題が発生するには三つの条件が必要である。

 

1)取引を行う双方に、利害の対立があること。
 (つまり一方の犠牲の上に他方の利益が生じるということ)

 

2)利害が異なる人間双方を、取引に至らせる理由があること。
 (つまりとにかく取引をせねばならない状況に陥っていること)

 

3)実際に契約が遵守すなわち守られているかを調べたり、あるい
 は遵守を強制させることが技術的・経済的に難しいこと。
 (検査したり監査することが難しかったり、大きな費用がかかる)

 

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■単独遂行と所有の統一
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 プリンシパル(依頼人)=エージェント(代理人)関係から生じ
るモラルハザードは、エージェントを廃止してプリンシパルが自ら
行動すれば解決することがある。

 

 つまり誰か代理人に仕事を委託するから、依頼人と代理人の利益
が相反する時にモラル・ハザードが生じるのであって、仕事を全て
自分たちでやればその様な問題は起こらない(少なくとも依頼人の
意志に沿う)。これを特に「単独遂行」という。

 

 しかし自分でやると行ったって、医者でもない人間が手術をする
わけにもいかないし、医者だって自分に対する手術を自分で行うな
んてことはまずできない。

 

 だから「単独遂行」の場合は、専門家や職人などによる仕事ほど
の成果は期待できないかも知れない。

 

 つまり良い仕事を望むなら専門家に頼まざるを得ないわけだが、
これがつまりモラル・ハザードの原因その2「取り引きせざるを得
ない理由が存在する」であるから、つまりこれはジレンマである

 

 そこで少し視点を変えて考えてみる。

 

 つまりモラル・ハザードの原因その1の「利害の相反の存在」が
なければモラル・ハザードは起こりにくいのではないか???
、、、と言うことである。

 

 すなわちプリンシパルもエージェントも同じ利害に立つならば、
自分の利益のために相手の利益を損なうことはなくなる。つまり
「所有権の統一」ということが有効な場合がある。

 

 たとえば前に取り上げた「炭坑と火力発電所」のような場合、
両者が同じ所有者のモノであればホールドアップ問題は起こらない
だろうし、また共同特化された特殊資産価値も失わない。

 

 だがしかし「所有の統一」はある種のモラルハザードを解決する
けれども、別の組織内のモラルハザードは解決できない。というの
も組織内では組織内で別のタイプのモラル・ハザードが生じるから
である。

 

 このタイプのモラル・ハザードを「インフルエンス活動」という。

 

 

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■インフルエンス活動と所有の統一
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 別個の二つの組織が共通の指揮下にはいると、どのようなコスト
が生じるのであろうか?

 

 たとえば大規模な組織の中にある二部門が、互いに独立して組織
運営を行うと効率的になる場合があるとしよう。

 

 そうすると企業はその二部門に対し、あたかも別の組織であるか
のごとくに指示を出し運営するということも可能なはずである。

 

 組織の運営をそれぞれの部門に任せながらも、各部門に選択的に
介入することによって、個々に活動する場合の効率性を保ちながら
組織全体を運営すると言うことが可能なはずである。

 

 だがもしそうであれば、企業の規模はいくらでも大きくして良い
ことになる。

 

 1+1が2以上になるならば、どんどん足して行っても構わない
わけだから、旧ソビエト連邦のような中央統制システムでもうまく
効率的な組織運営や生産が行われ、健全な経済運営が行えるはずで
ある。

 

 だがしかしそれは現実にはあまり上手くいかない。

 

 巨大な組織や企業では末端である現場と、最終的な意志決定を行
う中央の管理職(或いは国家の計画策定担当者)との距離が開きす
ぎ、そのために専門化された現場の情報は中央に正確には届かない
し、届いたとしてもその現実的な意味は理解されない。

 

 また逆に中央の行おうとしているイノベーションなどの知識は現
場では理解されがたいし、それを教育によって行うならばそれはそ
れでとんでもなく費用がかかる(コーディネーション費用や動機付
け費用などもさらにかかる)。

 

 その上各部門が達成した業績に関しての評価も難しいから、結局
企業や組織には適当な規模があって、ただ大きくてもダメなのだ、、
ということである。

 

 それは別の言い方をすると、
「本部や中央から各部門に対し、適切な介入ができないから、組織
の各部門を効率的に運営することができない」
ということになるが、その「適切な介入」を阻む一因がすなわち
「インフルエンス活動」である。

 

「インフルエンス活動」というのは簡単に言えば、組織内の実権を
握る者に対して組織内の人間が自らの利益を大きくするために働き
かけることである。

 

 権限者に対して影響(インフルエンス)を及ぼそうとする活動だ
から「インフルエンス活動」という。

 

 労働組合がストをやって自らの給料アップや待遇改善を勝ち取る
のもインフルエンス活動の一つである。

 

 利益をあげていない部署が自らの存在意義を声高に叫んで、自部
門への予算配分を減らさないように運動するのもインフルエンス活
動の一つである。

 

 社長や取締役の子弟と縁戚関係を結んで、出世を図ろうとするの
もインフルエンス活動かもしれない。

 

 そうしたインフルエンス活動の存在が、組織の効率的な運営に影
を落とす。

 

 組織による決定が、組織を構成するメンバーやグループに対する
富やその他の利益分配に影響を与える時、たとえば給料の引き下げ
や人員配置の変更、部署や工場などの整理統合、、、、このような
決定が下されるとき、影響を受ける個人やグループは利己的な利益
が損なわれないように必死に画策する。

 

 その結果、どんなに効率的な素晴らしい組織構造改革案であって
もそれは骨抜きとなり、必要な経営資源(人材・資本・資金)が必
要な部署に配分されずに組織は利益を得損なう。

 

 インフルエンス活動は、組織全体の利益を損なうことで自らの利
益(取り分)を大きくするという点で、モラル・ハザードの一種と
言えよう。

 

NEXT:インフルエンス・コストと合併

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