モニタリング強度原理とインセンティブ制約式

モニタリング強度原理とインセンティブ制約式

モニタリング強度原理

 前項では、業績の評価法については「所与given」として考えた。

 

 だがしかし資源配分を変更し、モニタリング(評価法)を改善すれば効率のよいインセンティブを作り出すことができるはずである。

 

 だがしかし、どれくらい資源(お金や人材)をモニタリングに回せば良いのだろう? モニタリングに費用をかければ、とりあえず測定誤差の分散が小さくなるものだと仮定して、この問題を考えてみよう。

 

 努力測定に伴う分散(ばらつき)Vを考え、V以下に分散を押さえる時のモニタリング・コストをM(V)とする。

 

 Vを小さくするためには一般的にMを大きくすることになる。

 

 だから、M(V)は減少関数である。

 

 またVが大きいとき少しVを減らすだけならMの増分はわずかで済むだろうが、Vを0に近づけようとするなら膨大な費用がかかることが予想される。

 

よってM’(V)は増加関数だと考えられる。

 

 ここでまた「総確実同値額」の式を持ち出してみる。

 

(同値額)=P(e)-C(e)-(1/2)rβ^2・V M(V)はもちろん消費される費用だから、ここから引くことになる。

 

 (同値額)=P(e)-C(e)-(1/2)rβ^2・V−M(V)他の条件を所与のモノとしてこの式をVで微分すると、0=−(1/2)rβ^2−M’(V)となるので、Vを減少させるための追加費用−M’(V)=(1/2)rβ^2ということになる。

 

 つまり業績測定費用をかけるとβは小さくても効く。

 

費用をかけないとβを大きく設定しなければインセンティブは弱くなる。

 

 これを「モニタリング強度原理」という。

 

 この式は「組織の経済学」の271ページに導出過程がでているが、テイラー展開で効用関数を開いて、そこに期待値を放り込み、さらにインセンティブ契約のw=α+β(e+x+γy)を代入した結果から出てきた式である(近似式)。

 

 ここで三つの式が出てきて、
1)従業員(エージェント)の確実同値額(つまり報酬決定式):α+βe−C(e)−(1/2)rβ^2・V C(e)は努力eに必要なコスト。
2)雇用主(プリンシパル)の確実同値額(つまり利潤):P(e)−(α+βe) P(e)は粗利潤の期待値。
3)トータルの確実同値額:P(e)−C(e)−(1/2)rβ^2・V−M(V)M(V)はモニタリングコストとなる。


インセンティブ制約式

 大抵の人間は「リスク回避的」である。

 

 そしてリスクを回避するために、リスクプレミアムを支払う。

 

 その額は報酬のばらつきをVとすると、 −(1/2)rβ^2・Vとなる。

 

 さてこれらの式を元に従業員にインセンティブを与えるような報酬体系を実際に作るには、αやβなどの係数を決めねばならない。

 

 報酬:w=α+β(e+x+γy)のαは固定給部分、βはインセンティブ強度(インセンティブの強さ)であるが、これを決めるには注意しなければならない様々な制約がある。

 

 まずβに関する第一の制約が「インセンティブ制約式」でβ=C’(e)を満たさねばならない。

 

 つまり従業員に努力を要求するなら、それに見合ったβを設定しなければならない。

 

 それ以上でもなくそれ以下でもダメである。

 

 でなければ効率的なインセンティブ、つまり従業員に一様な線型の、どんな状況においても恒常的な努力を求めるようなインセンティブを作り出せない。

 

 次に従業員個人の業績を示しやすい指標を積極的に評価し、またあまり個人の働きとは関係ないような指標を除外しなければ、総価値は増大しない。

 

 つまり儲けを漫然とばらまくとインセンティブとしての効果が薄れるし、会社も儲からない(「インフォーマティブ原理」)。

 

 さらに β=P’(e)/{1+rVC(e)}という式で、1)追加的な努力がもたらす利潤の増分 2)リスク回避度3)業績評価の正確さ4)インセンティブに対するレスポンス(反応)の強さにインセンティブ強度係数βが依存するということがわかる(「インセンティブ強度原理」)。

 

 最後に今回の「モニタリング強度原理」では、Vを小さくすればインセンティブがよく効くようになり、そのためののコストが−M’(V)=(1/2)rβ^2という式で表される。

 

 まあ、モデルでは、、、ということですが。

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