資本のコスト

資本のコスト

資本のコスト

 前回の計算における金利rは、単なる市場金利ではないことに注
意しておかねばならない。

 

 資本コストrは、企業がプロジェクト資金を調達するために最低
限支払わねばならない利子率の事なのである。

 

 実際の資本コストは税処理や債務契約の制限条項、担保の安全性
など、様々な条件で変化する。

 

 借入先が一つであれば話は簡単であるが、複数の銀行やエクイテ
ィ・ファイナンス(新株発行による資金調達)によって資金を借り
入れるのであればこの資本コストを算出するのは難しくなる。

 

 資本コストが高いと投資の魅力は低くなる。

 

 たとえば今100万円の投資を行うとすると、二年後にC万円のキャ
ッシュフローが見込める投資があったとする。

 

 そこでもし金利が6%だったとすると、Cは少なくとも112.36万
円以上でないと採算が合わない。

 

 利子率が10%だとCは最低121万円と言うことになる。

 

 利子率が6%から10%に上昇すると、純利益は70%増えなけれ
ば採算がとれなくなるのである。(21万円−12万円)/12万円

 

 

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■長期投資と資本コスト(金利)
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 短期投資でもこのくらいの差がでるのであるから、長期間に渡る
投資ともなるととんでもない格差が生じてしまう。

 

 すなわち金利(資本コスト)6%で投資期間が10年であったとす
ると、今借りた100万円のローン返済に必要な10年後のキャッシュ
フローは、179万円になる(10年後まで実入りがない場合)。

 

 これがもし金利10%であったとすると、必要なキャッシュフロ
ーは259万円にもなる(45%増)。

 

 さらにもしこれが20年に渡る投資であったとすると、金利10%
では金利6%の場合よりも二倍以上のキャッシュフローが必要とな
り(6%→320万円、10%→673万円)、とてもじゃないが利益が
上げられそうになくなってしまう。

 

 1970年代から1980年代前半にかけて、アメリカの業績は日本や西
ドイツより悪かったが、その原因はアメリカ企業の「近視眼的な経
営」のせいであるとされていた。

 

 それはつまり日本や西ドイツの企業が長期的視点に立って設備投
資を行っていたのに対し、アメリカ企業は短期的利益を追い求めた
結果だという説明であった。

 

 だがしかしこの時期の税引き後資本コストは日本や西ドイツが6
%であったのに対し、アメリカのそれは10%にも達していた。

 

 もちろんそれはアメリカの貯蓄率が極端に低かったせいであるが、
これでは長期投資などするわけには行かないだろう。

 

 もちろん租税システムの違い・高金利政策なども問題ではあった。

 

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■金銭換算不可能な便益
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 また当時アメリカ企業と日本・西ドイツ企業の違いは、経営者の
質の違いであるともされた。

 

 日本や西ドイツの企業のトップにはかなり技術畑からの昇格があ
ったのだが、アメリカではMBAをとっただけの経営にのみ詳しい
ような人材が多く採用されていた。

 

 そういうわけだからアメリカの企業は財務分析を中心に経営や投
資を行い、それ以外の便益については評価しなかった。

 

 もちろん6%と10%の資本コストの差は大きいが、長期投資の
便益は金銭に換算しがたい便益も含んでいたのである。

 

 すなわち高度な技術を要する最先端の研究を続行することは、他
社に後れをとらないという便益があった。

 

 研究開発を続けていれば、当初考えていなかったような製品も生
み出され、返ってその方が大きな利益を生む場合もある。

 

 コア・コンピテンスの維持、規模の経済性、範囲の経済性、など、
これらから得られる便益については最初の方で論じた通りである。

 

 アメリカ企業の失敗は企業幹部が技術面に精通せず、財務分析に
多くを依存しすぎたせいであるという説明は大きな説得力があろう。

 

 

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