東南アジアとフロンティア農法

ヨーロッパ式農法を熱帯地域に導入する際、最初に問題になるのが塩害だ。

 

ナイル川の氾濫を防止するために造られたアスワンダム、アスワンハイダムは、氾濫こそ押さえ込むことに成功したが、その結果、下流の農地で塩害を発生させた。

 

塩害とは簡単に言うと、地中にあるナトリウムが表土まで上がってきてしまい、それが原因で作物の栽培が難しくなると言うことだ。

 

熱帯や亜熱帯では日差しが強いので、表土がすぐに乾いてしまい、地中の水分も表土までドンドン引き上げられてしまう。

 

その結果、土の表面に塩が噴く状態になってしまい、作ろうと思っていた作物が作れなくなってしまうわけだ。

 

じゃあなぜナイル川河口では、今まで作物が作れていたかというと、毎年起こるナイル川の氾濫で、表土の塩類が海まで押し流されていたからだった。

 

ところがダムを造ったことによって、塩類を押し流す力がなくなったために、塩害に直面したと言うことになる。

 

またダムを建設したことによって、地下水涵養が起こり、地下水の水位が上昇したことによっても、地中の塩類上昇が促進されてしまったわけだ。

 

もちろん塩害は何もエジプトに限った話ではない。

 

亜熱帯域にある東南アジアでも、かんがいのために多くの場所でため池を作ったりダムを作ってみたりしたけれど、やっぱりそれも土中からどんどん塩が出て数年後には「塩湖」となり使えなくなってしまうのだ。

 

ため池が土砂で崩れないようにと池の周囲に灌木を植えてみたが、それはやっぱり土砂をせき止める働きしかなく、ため池が塩湖化するのには何の意味も持たなかった。

 



フロンティア農業が、森林破壊の元凶

熱帯域・亜熱帯での農業は、塩害との戦いだ

 

強い日差しで土中のナトリウムなどが表土まで上がってくると、作りたい作物が自由に作れなくなる。

 

新しく土地を開墾しても、塩害のせいで3年で作物が出来なくなる。

 

だから東南アジアの「焼き畑式農業」というのも、結構理にかなった農法だったのだ。

 

一か所で農業をやっていても直に生産できなくなる。

 

だから別の土地に移動してそこで農業を始める。

 

そうしてあちこちの森林を焼きながら地力の回復を待つ。

 

これだったら最初の土地の地力も回復し、雨のお陰で塩害も取り除かれるからまた栽培が可能になる。

 

ただし焼き畑式農業で上手く農業を続けるには、微妙なバランスを守らねばならない。

 

作る作物は土地の地力を大きく奪うものではなく、またその土地の作物で生きる人口がさほど多くないことが条件だ。

 

そうでなければこの微妙なバランスは保たれない。

 

これが狂うと一辺に環境破壊が始まり元も子もなくなってしまう。

 

土地の地力をあまり奪わないようなイモなどを作っているウチはまだしも、穀物のような栽培に肥料が作物を作り出すと、もうバランスが狂う。

 

一つの土地で耕作していられる期間はドンドン短くなり、そして焼き畑の回数が増える。

 

人口が増えればまたたくさんの農地が必要になるから、やっぱり焼き畑が増える。

 

そうなるともうタダの環境破壊である。

 

こうしてドンドン森林を伐採して農地を拓き農業をするやり方を「フロンティア農業」などと言う。

 

NEXT:途上国の粗放的農業とは

このエントリーをはてなブックマークに追加