飢餓問題は農業では解決できない
けれど難しい難しいと言っている間にも、世界の人口は増え続けているのである。
あと二十年だか三十年だかすれば地球の人口は八十億。
しかし残念ながら現在の食糧供給力は、全地球分を足し合わせてもおよそ四十五億人分。
何とか努力したとしても、せいぜい五十五億人分くらいしか用意できないらしい。
つまりあと数十年のうちに世界の三人か四人に一人は、飢餓と貧困にあえぐことが確定してしまっているのである。
ところがそうであるのに、肝心の農地は世界的に減り続けている。
森林だってドンドン減り続けている。
地球に天変地異でも起こり、人口が何割か減ってくれでもしない限り、どうしようもないのである。
そして地球的災害が起こったらやはり農作物もできなくなるから、それでもやっぱりダメかも知れないのである。
一体どういうことだどうしてだ?農学部にはいるまでボクは、もっと安易に考えていた。
「化学肥料でもなんでもドンドン投入し、ドンドンドンドン増産すればいいではないか。
そうすれば何とか人類全体に行き渡るくらいの量だけは確保できるだろう」と。
農業生産量は4倍に増えたが…
だがしかし、そんなことはもうとっくにやってしまっていたのである。
第二次世界大戦後から全世界に渡る食糧危機打開のため、増産に次ぐ増産をもう何十年も続けてきたのである。
なのにどうしても飢餓は減らない。
農産物の生産は何倍にも増えたというのに、飢餓人口はまるで減らない。
五十年前、全世界には八億の飢餓に苦しむ人々がいた。
だから各国は様々な方法で農業の生産性を上げて生産力を増強した。
その結果農産物の生産は四倍にもなったのだが、飢餓に苦しむ人口は減るどころか八億から十億に二億人も増えた。
生産力は四倍になったが、人口は五倍以上になったのだ。
反収の伸びより人口増加率の方がはるかに高いのだから当然である。
肉を作るために使われる飼料穀物を途上国に回せば飢餓問題は解決するなんてもっともらしく聞こえる話があるが、無知極まりない話である。
そうしたらまた飢餓地域の人口が増えて飢餓人口も増えてしまう。
生産国の天気が悪ければ、餓死人数も何倍も増えてしまう。
人間という生き物は豊かな生活がつづかなければ人口抑制などできないのである。
そうして二十世紀末とうとう農業は行き詰まった。
とうとう肥料を増やしても生産は増えなくなったのだ!