緑の革命は、果たして成功?
伝統的に焼き畑農業を行っていたインドネシア。
ところがそこに穀物生産がもたらされた。
穀物を食うのが「文明」だとばかりに、穀物生産を全土でやり始めた。
先進国などの諸外国も様々な思惑で、それらを支援した。
日本なども戦前から高度な水田耕作技術を指導し、稲作で食糧を自給できるようにと支援した。
「グリーン・レボリューション(緑の革命)」なんて格好良い言葉を使って大々的に農地を開発し、BC技術(バイオ・ケミカル・テクノロジー:品種改良と化学肥料や農薬)とM技術(メカニカル・テクノロジー:トラクターやハーベスターなどの農業機械)を導入して、ジャンジャン農業生産をし始めた。
お陰で一時はインドネシアも米の完全国内自給に成功し、それを推進したスハルト大統領も国連から表彰を受けた。
そしてその結果インドネシアの人々は、朝から晩まで米ばかり食べるようになった。
ところが穀物生産が増えて将来が明るくなってくると、人口はいっぺんに増えるモノらしい。
余分な栄養が取れるようになると女のコは初潮が早まり、そしてどんどん子供を産むモノらしい。
だから元々大家族を好むインドネシアの人口は爆発的に増えた。
そしてまた生活が豊かになり始めると穀物の消費もさらに何割か増える。
つまり一人が一年に百キロ必要でも、百二十キロくらい消費するようになる。
そうすると人口の増加率が2パーセントであっても人々のゼイタク化に伴う分、米の消費量が1パーセント増えた。
つまり人口増加率が2%でも、食糧生産量は3%以上増やさないといけなくなるのだ。
人口は爆発、しかし農業生産は伸び悩む
マルサスは「人口論」という本で、「農業生産はせいぜい2倍3倍程度にしか増えないが、人口は2倍・4倍・8倍と幾何級数的に増える」とし、限度まで人口が増えると食糧供給が追いつかなくなると言った。
そういう事態がインドネシアでも実際に起こってしまっていたのだ。
だがしかし、まだ単収は伸ばせるはずであった。
と言うのも「緑の革命」で新しく農耕地を開き、先進国同様の集約的農業を行っていたのだから、少なくとも単収は先進国並に収穫できるはずだったからである。
ところがそれがどういうわけだか、その半分当たりの単収で伸びが止まってしまった。
先進国と同じだけ肥料を投入しているにもかかわらず、半分強しか農作物が取れず、しかも同じ量の収穫を得ようとすると以前よりたくさんの肥料が必要になってきたのである。
途上国では生産性が最大になるはるか手前でもう「土壌劣化」が始まってしまったのだ。
土壌劣化というのは、簡単に言うと耕地の土の質が悪くなって、作物がうまく育たなくなると言うことであるが、それが起こってしまったために、生産の伸びが止まってしまった。
そうして農業においては東南アジアの最優等生だったインドネシアも、一度は達成したはずの米の完全自給が崩れ、また以前のように外国から大量の米を輸入する羽目になってしまった。
「緑の革命」は結局途上国の人口を増やしただけで飢餓退治はできなかったと言うことらしい。
この増えた約1000万トンは日本で一年に作られる米の量と同じである。
つまりたった5年で日本で消費するの同じ量の米を増産したと言うことになる。
因みに2010年時点のインドネシアの人口は約2億4千万人で、穀物自給率は89%