アスワンダム建設は良かったのか悪かったのか

ナイル川のアスワンダム建設、損得勘定はかなり微妙だ。

 

アスワンダムには実は2つあって最初に造られたのがナイル川下流に造られたアスワンダム(1901年完成)。

 

現在はアスワン・ロウダムと呼ばれている。

 

それからロウダムの上流6キロくらいの所に造られているのがアスワン・ハイダム(1970年)で、ナイル川の氾濫はこの二つのダムによって克服されたことになる。

 

アスワンダムの建設によって確かにナイル川の氾濫はなくなったので、当初の目的自体は達成できたと言えよう。

 

ただ当初目論んでいた農業生産増大は、そう簡単には達成されず、様々な問題が生じた。

 

まず一つ目は、農耕地で塩害が発生し、予想の何倍もの水を使わないと作物の栽培が出来なくなったこと。

 

それまでは毎年ナイル川が氾濫して、農地の表土に出てきた塩類を流してくれたのだが、氾濫が無くなったために塩害対策が必要になった。

 

塩害というのは土中にある炭酸ナトリウムが、表土に析出してくることで起こる。

 

土中のナトリウムの濃度が高くなると、栽培できる作物が限られてくるので、作りたい作物が作れなくなる。

 

エジプトのような熱帯・亜熱帯では、撒いた水が地中の炭酸ナトリウムを溶かし強い日差しのせいでそれがドンドンまた地表に戻ってくるから、水を撒くたびに塩が出てくるという繰り返しになる。

 

塩害対策には結局、水で塩類を押し流すしかないので、今まで作物栽培に使っていた水の何倍もの水が必要になってしまったというわけだ。

 



アスワンダムは、農業にとってはマイナスだったかも

アスワン・ハイダム建設の見込み違いのもう一つは、ダム建設後に下流の農地がドンドン痩せていったと言うことだ。

 

ナイル川の河口のデルタ地域というのは非常に肥沃な土地として知られていたのだが、それは実は毎年起こるナイル川の氾濫で、上流から肥沃な土が送られてきたせいだったのだ。

 

しかしダムが出来たことによって上流の肥沃な土がストップして、ダム下流の農地は次第に地力を失っていくことになった。

 

もちろん肥料をまけばそこで作物は栽培できるわけだが、今まで必要がなかった肥料を購入して投入するわけだから、農業にとってはコストがかさむということになった。

 

一方、アスワンハイダム上流の湖では富栄養化が進み魚がたくさん捕れるようになった。

 

日本やヨーロッパで食べている白身魚のフライはアフリカのナイルパーチという魚が原料だそうだが、ナイルパーチがたくさん採れるようになったらしい。

 

なので外貨獲得にはプラスと言うことになる。

 

またダムが完成したことによってナイル川の水位を一定に保てるようになったので、観光船でナイル川をさかのぼれるようになって、観光収入は増え、これもプラス。

 

アスワンハイダムでは水力発電も行われており、200万キロワット以上の発電が行われていると言うから、これもプラスと考えて良いだろう。

 

ナイル川の氾濫をそのままにしておくという選択肢はなかったわけだから、損得勘定は微妙なところだが、農産物生産にとっては見込み違いであったことは間違いない。