サービスというのはどのような価値か

サービスと財(商品)はハッキリ違う。

 

財とサービスは明確に分けられる。

 

財(商品)は「保存できるモノ」であるが、サービスは「保存できない」という特徴を持つ。

 

たとえばコーヒーショップで、コーヒーを作り置きすると香りが逃げる。

 

挽いた豆はドンドン酸化するから、酸っぱくなったり苦くなったりするし、沸かしたお湯はドンドン冷める。

 

つまりコーヒー豆やコーヒー・カップという商品は保存しておけるが、コーヒーをサーブするという価値自体は保存しておけないのである。

 

そしてまたサービスには、タイミングや場所といったものが必要だ。

 

たとえば散髪というサービスは、消費者の髪が伸びたときや正装するために、髪を切る必要が生じた時にしか必要とされない。

 

もちろん散髪というサービスを受けるために、髪が伸びていない状態でも頻繁に散髪屋に行く人もいるだろうが、これはサービスと言うより別のモノである。

 

そして散髪をするためには、散髪屋に行くか理容師や美容師に来てもらうしかない。

 

理容師が散髪屋にいて、散髪したい人が自宅にいるならサービスは行えない。

 

つまりこのサービスが成立するには、サービスを提供する者と消費する者の場所が、一致しなければならないわけである。

 

サービスから見ると商品はサービスをするための材料であり、だからこそサービスの価格は商品の価格より高くなると考えられる。

 

では最後の四つ目のコーヒーの価格の根拠は一体なのか?この価格はコーヒーの価格であって、しかし実はコーヒーの価格ではない。

 

というのもこれがもしコーヒーを飲ませるというサービスであれば、コーヒーショップのサービス価格とさほど変わらない価格で提供されるはずである。

 

顧客はコーヒーを飲むという目的のために、こんなに何倍もの金は支払わない。

 

そしてこの何倍もの金を支払って飲むコーヒーと、コーヒーショップで飲むコーヒーの味に、そんなに差があるというわけでもない。

 

コーヒーの味やコーヒーを飲むための雰囲気という点で言えば、純喫茶の方が上かも知れない。

 

つまりこれはコーヒーでなくとも良いのである。

 



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エクスペリエンスという価値

四つ目のコーヒーの価格というのは実は、雰囲気の良いホテルやレストランで、誰かとコーヒーを飲んだり食事をしたりするという、「経験(エクスペリエンス)」の価格なのであり、その舞台装置(ステージング)のために支払われるコストなのである!ホテルやレストランの豪華な造り。

 

ベルパースンや接客係、コンシェルジェといった押しつけがましくない、高級なサービスを提供するプロの案内。

 

そして高い金を支払う余裕のある人々や、センスの持ち主のみで占められる空間。

 

そういう中で雰囲気を楽しむ価値のために支払われる価格であり、特にコーヒーを飲むためにそのバカ高価い代金を支払うわけではないのである。

 

だがこれまではこの価値も、サービス価値として分類・認識されてきた。

 

しかし経験(エクスペリエンス)価値と、サービス価値が違うのは明らかである。

 

というのもホテルやレストランで受けるサービスとは、コーヒーのサービスで無くとも良い。

 

食事のサービスでなくとも良い。

 

宿泊のサービスでなくともよい。

 

それはコーヒーという商品の原材料は、ブラジル産のコーヒー豆でなくとも、アラビア産やアフリカ産のコーヒー豆でもよいのと同じであり、散髪屋で用意してあるハサミやシェービングクリームといった商品を、散髪屋が勝手に選ぶのと同様に、経験(エクスペリエンス)価値のために用意されるサービスは、経験価値を提供する主体が勝手に選ぶものだからである。

 

経験(エクスペリエンス)価値というのは、サービスより上位に位置する価値であり、だからこそサービスよりもはるかに高価な価格で消費されると考えられる。

 

つまり

コモディティ<商品(財)<サービス<経験(エクスペリエンス)
という図式が成り立つのである。

 

我々はまず経験(エクスペリエンス)という価値が、サービスの一種ではなく、その上位に位置する価値であるということを、まずハッキリ認識しなければならない。

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