受験生の陥りやすい勘違いの一つに
「英単語をたくさん覚えなきゃ、英語はできるようにはならない!」
と言うのがあります。
正直なところ、ボクも昔はそう思っていましたし、実は今でもそう思っています。
けれど受験に関する限り、これは危ない考えです。というのも、英単語を覚えるための時間は、覚える単語数に比例する以上に時間がかかるからです。
英文科に入って勉強したり、通訳になるなら、英単語にそんなに勉強時間を割いても構わないでしょうが、そうでない人間が、英単語の勉強に、そんなに時間を割いてはいけません。
英語が本当にできるようになるには、確かに何千語も単語や熟語を知っている必要がありますが、大学入試の英語ができるようになるには、そんなには必要ないのです。
いつもお薦めしている、ごま書房の『合格英熟語300』と『合格英単語600』あるいは『システム英単語』くらいで十分で、それ以上、難しい単語を覚えていたからと言って、特に点数が上がることはありません。
理由は簡単で、難関大学の英語は「少々単語力があるくらいでは、解けないように問題が作ってある」からです。
難しい単語というのは、多かれ少なかれ、専門用語なのです。そしてそういう単語の意味は一つに決まり、それ以外には使われません。
たとえば equilibrium なら「平衡」という意味以外には、使われません。科学や経済学の用語です。
また irrigation なら「灌漑(かんがい)」ですが、それ以外には使われません。農業や農学の用語です。
こういう単語は、意味がハッキリ定義されています。ですから、言葉の意味は狭く限定されています(defined)。
そして意味が限定されているおかげで、こういう専門用語を使った文章は、逆に非常に簡単な文章になります。
つまり言葉自体の意味が限定されていることによって、複雑な文章で説明する必要がないのです。
だから、こういう単語を使った文章を読む問題は、ただの単語テストとあまり変わりありません。単語を知っていれば和訳できますが、知らなければできない。
知っていれば満点、知らなければ0点という点しか付けられないなら、難関大学の試験としては不向きなのです。
逆に入試でよく出てくる「分詞構文(Ving,Ved)」とか「名詞構文(A of B, A's B of C)」と呼ばれる構文は、テストに向いています。
というのもこういう構文は、単語が易しくても、意味が取りにくいモノだからです。
なぜかというと、こういう構文で書かれている文の意味は、文脈によって様々に変わるからで、単語の難しさには依存しません。
文脈が取れないと、知っている単語ばかりでも、文の意味が取れないのです。
文脈を取れると言うことは、文章全体の意味が理解できていると言うことですから、単語テストよりはるかに高度なテストを行っていることになります。ので、こういう問題が難関大学で、よく出されるのです。
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意識して覚えるべき語彙は、そんなにない
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合格英熟語300や、合格英単語600くらいまでに載っている単語は、努力して覚える必要があります。
なぜなら、長文中に何度も出てくるし、ここに載っているような単語は、一々辞書で引くべき単語ではないからです。
これくらいのレベルの語彙がないと、英語の勉強に支障をきたします。 なぜなら辞書を引く時間がとんでもなく増えるし、そのための時間は、まるでムダだからです。
けれどそれ以上の単語は、単語集を使って丸覚えで覚えるべきではありません。
理由は簡単で「覚えても、忘れるから」です。
ごま書房の合格英単語シリーズが傑作なのは、その語彙が
「東大に合格した人が覚えていた英単語と英熟語」
だという点です。
コンピュータで入試問題を分析した、という語彙集はたくさんありますが、誰かが覚えていたという視点から作られている語彙集は、滅多にありません。
しかも東大に合格した人たちが覚えていた語彙数がその程度なのですから、それ以上、努力して覚えようとしても、たいていの人間には覚えきれないはずなのです。
無理に覚えても、それを維持するのに毎月かなりの時間を復習に充てねばなりませんし、そのうちに、300と600に出てくる語彙すらも危うくなってくる。それでは本末転倒なのです。
語彙は、整序問題850や英文解釈問題などをするうちに、随時覚えていけばいいだけです。
忘れるモノは忘れて行くし、覚えるモノは覚えます。
それでもなんとか語彙を増やしたいのであれば、リスニング・マラソン式に英文を聴いて覚えるしかありません。
たとえば以前紹介した、
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速読速聴・英単語 Core 1800(CD付き)
速読速聴・英単語 Basic 2200(CD付き)
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などは、そのために役立つでしょう。
また語彙のみならず、構文を意識する場合は、
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『英語重要構文400—CDつき体で覚えるデータベース』東進ブックス
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などがいいかと思います。
これらの本についているCDをすき間の時間に聴き、気になった文章を本で確認する。そういう繰り返しで語彙や構文を増やすのが、一番いい方法です。
NLP(神経言語プログラミング)理論を援用すれば、目で見て・耳で聞いて・体を動かして覚える(理解する)のが、最も効率のよい方法なのです。
単純な1対1の暗記法は、止めて下さい。やるだけムダです。
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