水平的な範囲と構造

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 韓国のラッキー・ゴールドスター社は、自社で生産する化粧用クリームの容器の「キャップ」を自社で作り出したところから、様々な方面に事業を展開していった。

 

 これはLG社が自社の製品のための部品を調達しようとしても、それを請け負う企業が韓国国内に無かったからで、自社でそのような特殊的な投資を行うしかなかったからである。

 

 だがキャップだけでその投資を回収することはできないから、同社はキャップ以外の用途を求めて、自社の製品のラインナップを広げてきた。

 

 クリームとキャップの関係からこれらの行動は「垂直的統合」であると考えることができる。

 

 がしかし規模の経済性を出すために様々用途を「新たに」開発したという点では「水平方向への発展(範囲の経済性)」である。

 

 企業戦略として会社がどのような事業に参入すべきかという問題は、重要な問題であり、言ってみれば「自企業の水平的な境界」を決めるということでもある。

 

 事業部拡大の方向とその影響について考える。


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事業部拡大の方向

 これまで見てきた企業の拡張の方向は、規模と範囲の経済性、コア・コンピテンスと言う要因によって決定されることが多かった。

 

 特にLG社の場合は非常に補完的な(1+1が3になるような)規模と範囲の経済性を追求した結果である。

 

 この種の経済性が無い場合、企業は関連事業であっても進出をためらう事が多い。

 

 つまり現在手持ちの技術やスキルと言ったコア・コンピテンスを応用できるだろうと言う目算が立って初めて、新しい分野に進出する踏ん切りが付くのである。

 

 もちろんベータ・マックス・ビデオでVHSに破れたソニーが、その後その敗因をソフトに求め、コロンビア映画やCBSレコードを買収して事業を拡張したように、現在の手持ちの技術を生かすための手段として、その価値を高める事業に進出するという事もある。

 

 一般的に言って、企業の拡張が成功する公算が大きいのは、自社の持つコンピテンスが何であるかをハッキリと知り、それを上手く利用できる方向に進出する場合である。

 

 だがこれらの水平統合も、事業部の数が多くなりすぎるとうまく行かなくなる。

 

 中央で全事業部をコントロールするには、中央にそれぞれの部門の成績評価を行うための専門の役職を作らねばならない。

 

 かといって各事業部に経営権を分権すると、三頭のキングギドラか八又の大蛇のようになってしまい、それぞれの利害の衝突を回避するためにあくせくしなければならなくなる。

 

 近年の「事業のフォーカス化」や「分社化」は、そういうインフルエンス活動やコーディネーションが無駄なコストを生み出していると企業が認識したからであろう。

 

 そして水平拡張時に起こる企業文化の衝突問題も、前述したとおり、大きなコストのかかる問題である。

 

 倒産した企業を吸収合併する場合は敗者が勝者の文化に習うだけだ。

 

 しかし、対等合併した企業で企業文化を融合させることは難しい。

 

 合併後何十年立っても「元○○系」「元××系」といった分類は引き続いて残り、不毛なインフルエンス合戦が繰り広げられることとなる。

 

 ソニーと時期を同じくアメリカの映画会社を買収した松下電器は結局それを手放す羽目になったが、水平拡張した企業には常にそういう問題がつきまとう。

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