モラルハザードとは その2

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 たとえば人は病気になったとき、薬を飲んだり医者にかかったりする。

 

 だがたいていの人には薬や医学の知識と言ったモノを、あまり持ち合わせてはいないから、薬局のオバサンや医者の言うことをかなりの割合で「鵜呑み」にせざるを得ない。

 

 薬局のオバサンが「これがいいよ」と言えば「そうですか」と言ってそれを買って帰るだろうし、医者が「こうしなさい!」と強く言えば、ある程度はその通りにせざるを得ない。

 

 だがしかし、薬局のオバサンが高価な薬を押し売りしていないと言う保証はない。

 

 また医者が、不必要な検査や治療を患者に対して行っていないという保証もない。

 

 店に来たお客さんに薬や薬の値段の知識が乏しいことをよいことに、薬局のオバサンが山ほど高価な健康食品を薦めたり、病気で苦しんでいる患者さんが自分の病気に関して分析能力がないことをよいことに医者が「念のため」の検査を山ほど行って保険点数を稼いでいるかもしれない。

 

 このような行動を「モラル・ハザード」と呼ぶ。

 

プリンシパル=エージェント関係

 モラル・ハザードが生じる原因の一つはもちろん「情報の非対称」である。

 

 薬局のオバサンやお医者さんがモラル・ハザード的な行動をとれるのは、患者の持っている医療方面の知識と彼らの持っている知識に大きな差があるからである。

 

 専門家にモノを頼まざるをえないような場合には、一般的に情報の非対称が起こりやすいから、どうしてもそういう事が起こる。

 

 このようなエージェント(代理人)がプリンシパル(依頼人)から仕事を請け負って、プリンシパルの目標を遂行するというような関係を特に「プリンシパル=エージェント関係」と呼ぶ。

 

 ここでモラルハザードの問題が生じるのはつまり、

  • 1)エージェント(代理人)とプリンシパル(依頼人)の目的がそれぞれ異なっていて(目的の不一致)。、
  • 2)エージェントによる報告や行動が、プリンシパルの目標に沿って進められているのか或いはエージェントの自己利益を追求しているのか容易に判断できない(情報の非対称による行為評価難)
という場合なのである。

 

 モラル・ハザードの特徴は、それを引き起こす人間や組織が他の人間や組織に損をさせながら自らの利益を得ていると言うことであり、この点が「逆選択」と異なる点である。


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「逆選択」と「モラルハザード」は区別できるか?

 銀行などが貸出金利を引き上げると、堅実だが大して儲からない(つまり利回りの低い)商売をしている借り手は金を借りなくなり、金を借りてくれる人間が利回りは高いが冒険的な商売をしている者ばかりになってしまう。

 

 こういうような現象を「逆選択」というが、すなわち銀行が金利を引き上げる事によって、堅実的な借り手に敬遠され、逆に野心的・投機的な借り手ばかりに「逆に選択」されてしまうわけである。

 

 逆選択とモラル・ハザードは、共に「情報の非対称」という前提がある場合に起こる問題なので、場合によっては区別できないことも多い。

 

 たとえば1990年に行われた「ボルボ車に乗る人間の運転は雑である」という有名な調査結果である。

 

 これは交差点でしっかり一時停止するかどうかなどの調査を行った結果、ボルボの車を運転する運転手の行動が他の車種の車に乗る人間に比べて有意に「ザツ」だったという話なのだ。

 

 しかし、これは果たしてモラル・ハザードか逆選択か。

 

 ボルボ社は1980年代に、自社の車が頑丈であるという点を盛んに強調して車を売った。

 

 だから、ボルボ車を運転する運転者に「他の会社の車を運転する時ならしないような、リスク負担をしないでもよい」という安心を与え、一時停止の無視という行動を引き起こさせた、、と考えれば、モラル・ハザードである。

 

 頑丈な車は安全に対する一種の「保険」であり、その「保険」に加入することで、安全に対する注意を怠っても構わないと運転車が考えれば、モラルハザードである。

 

 しかしもしボルボ車を購入するときに購買者が、「自分は乱暴な運転をするドライバーである」という自覚(或いは無意識にそう考えている?)があったとしたら、これは「逆選択」になる。

 

 すなわちそういう「私的情報」を持つ購買者が、意識的・或いは無意識的に安全な車を選択したなら、それはボルボ社から見れば「そういう乱暴な運転者ばかりに選択された」ということだから「逆選択」なのである。

 

 いずれの説明にも説得力があり、そういうわけだから「逆選択」と「モラルハザード」は、ハッキリ区別できない場合が多い。

 

 頑丈な車、、、という宣伝が、逆にボルボの車の事故率を引き上げる可能性が高くなったのか、ボルボはそれ以来、自社の製品が頑丈であるという宣伝をしなくなったという。

 

 人間というのは「安全だ」と言われると注意を怠るし、相手に知識がないと思うとそれに乗じて儲けようとするものらしい。

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