利潤を追求しない営利企業
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従来の経済学や経営学では「組織が明確な目的を持っている」ということを暗黙の仮定としておいていた。
だがしかしそれは本当だろうか? たとえば普通企業と言うモノは「利潤を最大化させることを目的としている」と一般に信じられている。
「営利主義」「金儲け主義」「利益優先」によって多くの企業が経済外部性を無視し、公害をたれ流したり、欠陥商品を消費者に押しつけたり、はたまたトヨダ商事事件のように年寄りをだまして金を巻き上げたりしているのだと考えられている。
だがしかし、それで企業の所有者である株主がとんでもなく良い配当金を受け取っているかと言えば、そうでもない。
会社が大幅に業績を上げて得する第一の人間は、その企業に勤める従業員たちや幹部社員・取締役などであることが多い。
もちろん企業の業績が上昇すれば株価は上がる。
だから、株主も確かに恩恵を受けるわけであるが、しかし組織内の彼らは株主にはわずかな配当金を支払うだけで、あとはボーナスをはずんだり従業員の給料を引き上げたり、必要もないのに新入社員をたくさん採ったり、はたまた豪勢なキンキラキンの新社屋を建設したりという行動に出る。
企業が利潤を追求するものであれば、こういった行動は起こらないだろう。
なぜなら明らかにそれは将来への投資としての範疇を逸脱しているからである。
つまり企業の意志思決定は大抵、その企業の持つインセンティブ・システム、つまり何をすれば昇進できるか、何をすれば処罰されるかという取り決めや暗黙の了解に反応し、自らの取り分を最大化しようとする「利己的な人々」の相互作用(押し合いへし合い)の結果によって決まるものだと考えた方が妥当である。
そしてまたその組織の意志決定によって、得したり損したりする周辺の関係者たちの利害を調整する様々な過程(会議や交渉・陳情)を経て、次の行動の方向が決定されるような場合も非常に多い。
すなわち企業はそれに帰属したり関わったりする様々な人間の利益を増やす方向に活動するだけで、企業が利潤を最大化させるためにあらゆる努力を惜しまない、、というのは明らかにウソである
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非営利企業
企業であればまだ株主という名目上の所有者が存在して、所有者の利益をどうするかという問題が俎上(そじょう:まな板の上)に乗る。
つまり私企業は少なくとも所有者である株主の利害や意向を無視できず、そのために株主の許可無く組織内外の関係者で企業の利益を勝手に山分けするわけにはいかない。
だから私企業のシステムは所有者の利益を目指すという方向にデザインされると仮定することも可能であるが、これが非営利企業や非営利組織と言った組織の場合は、誰が所有者であるかということすらハッキリしないから始末に負えない。
「生活協同組合は誰のモノか? 政党は誰のモノか?」と尋ねられれば結局「組合員のモノ」「党員のモノ」としか答えようがないが、それでは一旦組織に何か問題が起こった場合に、誰がどのくらいの責任を負い、誰が誰に対して権利や義務を持つのかまるでわからないのである。
だからこのような組織は、よほどのことがない限り、非常に非効率な組織となる。
というのもたとえこのような組織の幹部が明らかに良くない組織運営を行っていたとしても、それに代わる代替者や代替組織が存在しなければ、彼らを更迭したり罷免したりすることは殆どできないからである。
こういう組織の目的はだから、私企業・私的組織よりさらに曖昧なものとなる。
結局のところ組織自体が目的を持つわけではなく、組織に属する者や組織に関わる者たちが目的を持っているということでしかない。
そういうわけでこの「組織の経済学」では、組織が明確な目的をもっているとは仮定しない。
(つづく)
今日のまとめ
企業は利潤の最大化を目的として行動していない。