S&L問題とモラル・ハザードへのおたより

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 みちもと様、初めまして。

 

O長と申します。

 

 いつもMMの配信をありがとうございます。

 

人間社会の在り方、ネットワーク、組織論という方面に最近関心が深まり、この6月くらいからかMMを購読させていただいており、毎回興味深く読ませていただいております。

 

 ところで第043回に掲載されていた「S&L問題とモラル・ハザード」の項を読んでいて、次のようなことを感じました。

 

 この「S&L問題はモラル・ハザードではないのではないか」、 「少なくともS&Lというエージェントの、預金者というプリン シパルに対するモラル・ハザードとは云えないのではないか」。

 

 私は「組織の経済学」を自分で読んだことはなく、また、S&L問題についてはみちもと様の文章以外に詳しい説明を読んだことはありません。

 

 だから、ちょっと考え方が間違っているのかもしれませんが、みちもと様の文章から判断する限り上掲のように思われました。

 

 それはどういうことかというと...

  • 1)規制緩和によってS&Lはハイリスク・ハイリターンの投資が可能になった。
  • 2)しかし預金保険の仕組みが変わらなかったことで、現実にはリターンの期待値ほどにはリスクの期待値は増えなかった。

 

 ↓ ならば、みちもと様が書かれている通り、>  これならばS&Lがハイリスク・ハイリターンの投資に躍起にな>るのは当たり前ですね。

 

(で、ここから先が問題なのですが、私としては次のような考え方になってしまいます)

 

 ↓ ということは、S&Lがハイリスク・ハイリターンの投資に集中することは、ハイリターンで収益を拡大する>収益を拡大することで預金者に対する利息を増やすことが出来る、という理屈でもって『プリンシパルの目標に適合しているのではないか』と考えられるのですが・・・。

 

 もちろん規制緩和前の預金者は「ハイリスク・ハイリターンの運用」を期待していたのではなく、「ローリターンでも確実な運用」を期待していたのだと思います。

 

 しかし、規制緩和によってハイリスク・ハイリターンな投資が可能になったということはマスメディアを通じて預金者も知ることが出来たでしょうし、もしかしたらS&Lから「喜ばしいニュース」として通知されていたかもしれません。

 

 少なくとも規制緩和後、危機が発生するまでの間、預金者は利息が増えた(S&Lはリターンに合わせて利息は増やしたと思います)という形でもって「何かが変わった」ということを知りえたはずです。

 

 そして「ハイリスク・ハイリターンの運用」に変わったということを知りえた預金者は、それを望まない預金者は解約し、それを受け入れる預金者は預金を継続する選択が出来たはずです。

 

 結果として、規制緩和後ある程度の期間を経た後も預金を継続している預金者は「ハイリスク・ハイリターンの運用」を期待している、と考えていいのではないでしょうか。

 

 そしてこのS&Lによる「ハイリスク・ハイリターンの運用」は上記2の理由により、株式や投資信託といったほかの運用手段に較べて「ローリスク・ハイリターン」だったと云える訳で、従ってS&Lとしては『この投資を追及することこそが預金者の目標に適合している』と判断しても全く無理がないこと/むしろ当然なことだと思います。

 

 すなわち、「エージェントの行動はプリンシパルの目標に合致していた」のではないかということです。


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 もし自分がこのS&Lの預金者であれば、少なくともS&Lと預金者だけの関係を取り出して判断する限り、「例えハイリスク・ハイリターン投資の結果としてS&Lが倒産することになったとしても、預金保険(日本の預金保険をイメージしています)でカバーされるのだから預金保険のカバー限度までは積極的に預金する」でしょう。

 

 仮に全てのS&Lが潰れることになったとしても少なくとも元本は保証される・・・。

 

------ このS&L問題で起きたのは、「S&Lの預金者に対するモラル・ハザード」ではなく「S&Lと預金者の社会(納税者)に対するモラルハザード」だったのではないか、という気がします。

 

 S&Lと預金者の二者だけの関係で考える限り「ハイリスク・ハイリターン投資」を追求することは両者の目的に合致している(二者で構成される集合の利益が最大化)。

 

しかし、そこに「社会」というもう一者を含めて考えた場合、この三者で構成される集合の利益は多分「ハイリスク・ハイリターン投資」では最大化できない・・・。

 

こういうことだったのではないでしょうか。

 

 ふと気が付いて見直してみたのですが、みちもと様は「S&L問題はS&Lの預金者に対するモラル・ハザード」だとは一言も云ってませんでした。

 

結局は大きな誤解のままここまで書いてしまったのかもしれません。

 

スミマセン・・・。

 

今後ともMMの発行を楽しみに待っています!■(み) モラル・ハザードというのは、取引相手がよく知らないのを良いことにしてその利益を自分のモノにしてしまう、、、というパターンですから、預金者とS&Lの間にモラル・ハザードがあったかどうかはちょっと分かりにくい話だと思います。

 

 が、損したのは基本的に納税者やS&L問題がなければちゃんとお金が回ってきたはずの産業や人々ですから、この問題をモラル・ハザードとして捉える場合はこれらの人々とS&Lとの間にモラル・ハザードが生じたと考えるべきなんでしょうね。

 

「組織の経済学」の後の方でも、こういう非営利組織の抱える様々な問題が取り上げられていますので、色々考えてみて下さい。

 

おたよりありがとうございました。

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