テニュアとアップ・オア・アウト・ルール

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「テニュア」とは「終身雇用保証」のことである。

 

 テニュアを保証された者は、特別な理由がない限り定年まで解雇されないという、約束のことである。

 

 たとえば多くの大学では、能力を認めた教授に対してテニュアを与えている。

 

 これは大学で研究されているような専門的な分野では、その専門的な能力が他部門の人間にはよくわからないから行われているものと考えられている。

 

 たとえばある研究分野において、誰が有能であるか誰が無能であるかはその分野に興味のある間にしか分からない。

 

 その分野が人気のある分野で世界中で興味を持たれ研究されている分野であれば、誰が有能であるか誰が貴重な人材であるかは比較的容易に分かる。

 

 だがしかしそんなメジャーな分野でない場合には、その分野で有能な人材がもし登場しても、その分野の人間にしかわからない。

 

 だからもし教授が現役で自分の地位に固執していたならば、自分より優れた後輩の存在を知ったとき、その後輩を遠ざけたりその業績を必要以上に批判して評判を落としたりすると言うことが起こってしまう。

 

 有能な後輩の登場は、能力の限界を意識無意識に自覚している教授の地位を危うくするからだ。

 

 だからある大学のある分野でそういう有能な人材が育っても、その人材の才能は潰されたり流出したりしてしまう可能性が高くなる。

 

 大学としては有能な人材をみすみす逃すわけには行かないから、テニュアのような身分保障制度を採用し、盛りを過ぎた人材が育ち盛りの研究者を追い出すインセンティブを弱めているのである。


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アップ・オア・アウト・ルール

 テニュアとは、「能力の低下した年輩者が、有能な人材を採用すると自らの地位や職を失うことを恐れて自分より凡庸な人材を選んで採用しようとするインセンティブを弱めるための方法の一つ」なのである。

 

 もちろん長期間に渡って業績を上げ続けた人材に対し、将来の業績も高い水準であるという予想のもとにテニュアを設定するのではあるが。

 

 そしてテニュアとは逆の制度も存在する。

 

 それはつまり「昇進できなかった者はクビになる」という規則でこれを「アップ・オア・アウト・ルール」という。

 

 テニュアとアップ・オア・アウト・ルールは併用されることが多い。

 

というのもテニュア制度とは、テニュアを求める者がテニュアを持つ者にレントを与える制度でもあるからである。

 

 たとえば大学の助教授は正教授と同等の責任と義務を負うが、その報酬はおよそ半分強に過ぎない。

 

 正教授の半分の給与しかもらっていないのになぜ助教授が正教授と同様に働くかと言えば、それは「将来正教授になりテニュアを得る」という昇進インセンティブが存在するからである。

 

 だがしかし、このインセンティブが常に働くとは限らない。

 

 というのも研究者の皆が皆、そんなに昇進を望んでいるとは限らないからである。

 

 だからもし研究者が給与水準の格差に気づき、昇進を諦めたら懸命に仕事をしないということも当然起こる。

 

 それでは大学もテニュアを持つ者もレントを受け取ることができないから、それを防ぐために「アップ・オア・アウト・ルール」を設定し「昇進できなければクビ」という制度が採用されるのである。

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