第11条破産の利用

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 企業が倒産するとき、株主の持つ株券は紙切れになる。

 

 つまり企業が倒産した場合、企業の資産は債務者の手によって分配され処分される。

 

だから企業の所有者である株主の手には、何も残らない。

 

 企業が債務超過になり倒産した場合、債務は以下のような優先順位で保護される。

 

 優先社債(負債) > 破産弁護士の費用 > 税金> 労働者への賃金支払い > 劣後債権 > 優先株 > 普通株 だが優良企業が何らかの原因で倒産しそうになった場合、政府は「超過債務時の過少投資問題」の解決のために、破産法第11条を適用し、企業の存続を図る。

 

 つまり社会的に必要な企業や、特殊な原因で窮地に陥った企業を救う方が社会にとって「効率的」である。

 

 だから、そういう法的手段を用いるわけである。

 

 で、アメリカでは破産法第11条が適用されると、企業は債権者から保護される。

 

 すなわち債権者は資産の差し押さえや、未払い分の精算をただちに強制することはできなくなる。

 

 第11条を宣言後に生じた負債には優先権が与えられ、企業は収益性の回復を図ることができる。

 

 だがこの第11条破産も、膨大なコストがかかる。

 

 企業の再編成費用、破産弁護士の費用などなど、、破産処理が長引けば長引くほど、弁護士以外の誰も利益を得られなくなっていく。

 

 だからそういう場合は第11条が存在することを前提として、債権者達は非公式の「債務変更」を交渉し、より多くの金を取り返そうとすることになる。

 

 そうして本来なら何ら請求権を持たないはずの劣後債保有者や株主に対しても、いくらかの資本返還が行われる。

 

 というのも「破産法適用」を申請できる権利を株主は持っているからである。


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戦略的な資産破壊

 企業の破産を巡っては、様々な駆け引きが行われる。

 

 たとえばここに百万ドルの資産と、百万ドルの債務を持つ企業があると仮定しよう。

 

 つまりこの企業は今倒産すれば借金は返せるが、株主の株券は紙切れになってしまう状態である。

 

 もちろんこの場合、経営者は倒産しまいと頑張るだろう。

 

 なぜなら倒産すれば経営者は報酬を受け取ることもできないし、所有している自社株もパアになるわけだから。

 

 だがその一方で経営者や株主は、企業の資産を破壊することができる。

 

 すなわち経営者や株主は企業の資産価値を故意に下げて、百万ドルの資産をたとえば70万ドルに下げることができるのである。

 

 そうすると経営者や株主は、債権者に対して脅しをかけることが可能になる。

 

 だから、資産破壊するインセンティブを持つ。

 

 つまり資産破壊を行うと、全額借金を返してもらえるはずの債権者もその分被害を被ることになる。

 

 だから、それをタテにその分を債権放棄させることが可能になる。

 

 つまり企業の資産を何らかの方法で30万ドル分だけ破壊できるような場合、その「脅し」によって銀行などにその分譲歩させ、三十万ドルを経営者と株主に分配することができるということである。

 

 こういうことは何も債務超過でなくても起こりうる。

 

 すなわち百二十万ドルの資産を持ち、百万ドルの負債を持っている左前の企業(倒産寸前の企業)でも、二十万ドルを大きく越えた資産破壊が可能であれば、貸し手の銀行や債権者から大きな譲歩を引き出せる。

 

 このような方法を「戦略的な資産破壊」という。

 

 戦略的な資産破壊を回避するために債権者ができることと言えば、自己資本比率の下限を設定して金を貸すしかない。

 

 すなわち「自己資本比率○○%以上」という金融構造でないと、ダダをこねられて債権放棄を余儀なくさせられる可能性が大きいから、「そんな企業とは取り引きしないよ」というわけである。

 

 日本の国際取引を行う銀行はBIS規制で自己資本比率を8%以上、にしないと相手にしてもらえない、、、というのはそういうことである。

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