名目賃金Wと期待物価水準Pe

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 総供給モデルの第一はスティッキー・ウエッジ・モデルである。

 

 スティッキーのスティックとは工作などに使う糊のことで、
「ベタベタした」ということである。

 

 このモデルは現代の労働者の賃金が経済状況に素早く反応しない
「名目賃金」で固定されていることを強調する。

 

 賃金は契約によってその額が決定されるから、インフレが生じて
もデフレが生じても一定期間内に一定の名目賃金が支払われ、短期
的に硬直的な動きをする。

 

 さてここで、労働者と雇用者が賃金交渉をすることを考える。

 

 労働組合でなくとも、雇用主が労働者を雇うときには労働条件と
賃金を提示して労働契約が結ばれるし、労働内容と賃金が見合わな
いと労働者が考えれば労働者は辞めていく。だからそこには何かし
らの交渉(あるいは取引)が行われていると考えられる。

 

 この時の賃金Wはもちろん名目賃金であるが、名目賃金は物価水
準をP、目標とする実質賃金をwとすると

 

 W = w × P

 

と表すことができる。

 

 ただし物価水準Pは将来にわたってずーっと同じであるわけでは
ないから、予想物価水準であり「期待される」物価水準Peである。

 

 つまり交渉で決定される名目賃金Wはあくまでも予想(期待)さ
れる物価水準Peによって決定されるのだ

 

 ∴  W = w × Pe

 

 名目賃金Wを物価水準Pで割ったものが「実質賃金」であるから、
前述の式の両辺をPで割ってみる。

 

  W/P =  w  × (Pe/P)
{実質賃金} {目標賃金}

 

 左辺は実質賃金であり、右辺の(Pe/P)は、現実の物価水準Pが
予想される物価水準Peからどれだけ離れ(乖離)ているかを示して
いる。

 

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実質賃金W/Pと労働需要量L

 さてここで少し考えてみる。

 

 物価水準Pが一定である期間と、名目賃金が一定である期間とど
ちらが長いのだろうか。

 

 日本の高度経済成長期には毎年のように労働者の賃金が上がった。

 

 経済が発展している期間はインフレ基調であり、物価水準Pはド
ンドン上がったから、目標実質賃金wを得るために労働者は賃金の
引き上げを要求し契約の見直しが行われた、、、と考えられる。

 

 すなわち通常は物価水準Pの変動の方が速く、賃金一定の期間の
方が長いと考えられる。だから
「実質賃金W/Pは物価水準Pによって上がったり下がったりする」
と言う風に考えることができる。

 

 そして価格水準Pが上昇すると実質賃金W/Pは小さくなるから、
企業が雇える労働者は増える。
 労働需要関数をLとするとL=L(W/P)となり、右下がりの曲
線となる(下図)。

 

 実質賃金W/P
  ↑
  |  \
  |   \
  |    \ 
  |     \ 
  |      \ 
  |        
   ――――――――――→L(労働)

 

 労働者をたくさん雇えば生産関数Y=F(K、L)の関係により、
生産できる財やサービスの量は増えるから、総供給Yも増える。

 

 つまり

 

  物価水準Pの上昇により実質賃金W/Pが減少
 →実質賃金が下がると、企業は雇用を拡大する
 →雇用量が増大すると、生産は増える。 

 

という関係になっている。

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