協調の失敗と景気後退

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 価格の硬直性が誰の利益にもつながらないとしても、多くの人々
が「価格は硬直的である」と予想すれば、価格は硬直的になる。

 

 というのもそう予想すれば、自らの価格の調整もしないからであ
る。

 

 他のモノが価格を変更しないのになぜ自分が変更する必要がある
のか? と考えればそれは納得がいく。

 

 たとえば多くの企業が価格を引き下げれば需要が爆発し、より多
くの利潤が得られるとわかっていても「他社が皆価格を引き下げな
ければ、自社も価格を引き下げない」。

 

 ユニクロみたいにある企業の供給力が可変で、とんでもない量の
供給を行えるような場合なら、一社が値下げすれば他社は追随する
しかなくなるが、そうでない場合は価格を引き下げない。

 

 その結果その業界は不況に陥るが、でも下げない。

 

 なぜか?

 

 経済がA社とB社という二つの企業だけで成り立っている場合を
仮想して考えてみる。

 

 経済が二つの企業だけで成り立っている場合に景気後退が起こる
とすると実質貨幣残高は低下するわけだが、もしA社が値下げをす
るとすると、実質貨幣残高の低下は緩慢になる。

 

 つまり片方の会社が売価を下げたために、同じお金でより多くの
財やサービスを買うことができるようになるからである。

 

 そしてそのお金でB社から財やサービスを買うとすると、B社は
値下げをしていない分儲かってしまう。

 

 つまりA社が行った値下げが物価水準を引き下げた結果、実質貨
幣残高が上昇し、その上昇した分の実質貨幣がB社の財の購入にあ
てられるとB社が儲かってしまうわけである。

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景気後退と賃金の下方硬直性

 

 ユニクロやジャスコが低価格体制を敷き、不動産価格や賃料が低
下している一方で、車や宝石や高級ブランドのバッグを売っている
会社(の一部)が空前の収益をあげている昨今の日本経済を考える
と、何となくイメージがつかめるような感じだが、もし全企業が値
下げを行ったならば多くの企業も儲けを出すことができる。

 

 これを「協調の失敗」というが、これが景気後退を進めると考え
る経済学者もいる。

 

 つまり景気が後退して実質貨幣残高が減少したとしても、名目賃
金はなかなか下げられない。

 

 名目賃金が下げられないなら実質賃金は上昇しているから、失業
率は高くなる。

 

 ここでもし各企業が協調して賃金を引き下げる事ができれば、失
業率が高くならないのだが、失業していない人間は実質賃金が上昇
しているのでそんな相談には応じない。

 

 景気のいい企業の従業員の賃金を引き下げる必要はないし、公務
員は自らの賃金を景気のいい企業の賃金に合わせて設定する(少な
くともじり貧企業の賃金水準より高く設定する)から、そんな協調
はしない。

 

 その結果、皆が協調して賃金を引き下げる(というか実質賃金に
名目賃金を合わせる)ことができるならば景気後退が防げるのに、
それができずに景気後退が進む。

 

 若くして死ぬ人が多ければ、年取った人が受け取る年金の額が高
くなる、、、みたいな話

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