英文法はパス2
調べてみればすぐにわかると思いますが、大学入試に英文法について問う問題は、出ません
この不定詞の用法は? とか、この文章の補語は? とか、この句の文法上の役割は? などと言った問題は、高校の定期試験では出るかも知れませんが、大学入試では滅多に出ません。
理由は二つあります。
一つ目は、「英語の試験は、英語を使う能力、主に読み書きの能力を試す試験であって、英文法の知識を問う試験ではない」からです。
大学入試は、英語を分析する人を選抜する試験ではありません。英文がどの程度読めて、また書けるかを試しているだけです。
日本の学術研究は、欧米の書籍を読んで理解したり研究したりするところから始まりますから、外国の様々な学術文献が読めねばなりません。
文献の現在のデファクト・スタンダード(事実上の標準)は英語ですから、その英語がどの程度使えるかを、入試で試しているわけです。
だから書かれた英文が、何を意味しているかを掴んだり、自分の言いたいことを英文で書けたりする能力がどれほどあるか、が大事なのであって、小難しい文法用語などを問うことはありません。
英文の文章構造がどうなっていて、それを文法的にどう解釈すべきか、などということは、問われず、「この英文は日本語にするとどういう意味か。この日本語は英語にするとどうなるか」というのが、大きな試験内容なのです。
英文和訳問題5つと、和文英訳問題2つの、計7題しか出題されない京大の英語などはその典型です。
基本的な語法の知識などは、センターレベルで十分、というのが京大の立場なんでしょうが、本当にシンプルですね。
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●語法問題も、文法を訊ねているわけではない。
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もちろんそれ以外にも、英語自体の語法を問う問題はあります。
たとえばセンター試験や、東大の英語などでは「空所を埋めるのに、最も適切な表現を選べ」という問題が、たくさん出題されます。
1.in 2.out of 3.at 4.within
などといった前置詞の四択や、
1.go 2.went 3.have gone 4.is gone
などといった動詞(または準動詞)の四択など、がそれです。
けれども、これらの問題もまた、英文法の知識を問う問題ではありません。
「英語では、こういう場合、どう言う語がくるか?」と訊ね(たずね)られているだけです。
文法的にこうだから、この語が入る…と問題集の解説には書いてありますが、それは単なる後解釈(あとかいしゃく)に過ぎません。
たとえばAとBを比べるときに、A than B のようにthanを使うか、A to B のように to を使うか、はたまた A as B のように as を使うかというのは、慣用的なパターンとして覚えておけばよく、文法的にこういう時は than を用
い、またこういうときは to を用いるという知識がなくても答えられるでしょう。
入試問題の場合は、そう言う紛らわしいところを訊ねてくるので、逆に文法的に「比較の場合、than を使う」という知識をしっかり覚えていたら、to や as を入れるべきところに than を入れて間違いかねません。
たとえば、
I prefer wine than beer.
なんていう間違いを、平気で書いてしまうのです。
※ than(×) → to
またさっきの準動詞の四択問題でも、学校の定期試験では3の have gone が正解の場合が多いでしょうが、入試だと4の is gone が正解だったりします。
have + p.p. は完了を表し、be + p.p.は受動態、という知識では、
He has gone.
He is gone.
が微妙にニュアンスがちがうだけの文章だとは、わかりませんから、そう言うところが格好の入試問題となるのです。
ヘンな話ですが、学校で習った英文法が、入試では逆にあだになってくるのです。
因みに『合格英熟語300』(ごま書房)の10番の解説には、さらに恐ろしいことが書いてあります。
I prefer to swim ( ) to ski.
には、何が入るかわかりますか?
なんとrather than ですよ!
to 不定詞を目的語として使う場合、比較する者同士の間にto を使うと紛らわしいので避けて than を使うのでしょうが、prefer は、than の代わりに to を使うと覚えたのに、to を入れて、またまた間違えてしまうのでは、もう
どうしようもありません。
でも、入試ではそういう語法が試されるのです。安易に文法を勉強して、その知識を使おうとすると、かえって落とし穴に落ちることになります。
英文法を、あまり真正直に勉強してはいけません。
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入試に英文法の解釈問題がでないもう一つのわけとは?
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入試で英文法的な説明を求められる問題が出題されないのには、もう一つ理由があります。それは「英文法は、一種類ではない」からです。
学校で習う英文法は、実はたくさんある英文法のうちの一つにしか過ぎませ
ん。
これは18世紀に作られた、マリーの英文法というものがベースとなっているもので「伝統文法」と呼ばれるモノだそうです。
伝統と呼ばれると言うことは、要するに「古くさくて、あまり役に立たない」ということですが、役に立たないのに、なぜ高校でやっているかと言えば、新しくて役に立つ(らしい)文法が、複雑で概念も掴みにくいからです。
たとえば構造主義文法だとか、変形生成文法だとか、認知文法だとか言うものですが、名前を聞くだけでも複雑そうでしょう?
だいたい表層構造とか深層構造とかいう言葉を使うのも、何だかよくわかりません。
これらの文法は、高校で習っている文法よりは、はるかに本質的で、理解できれば役に立つものかも知れませんが、形になってきたのは1960年代以降(チョムスキー)ですから、まだ新しくて高校生に教えるほどにはこなれていないのです。
それに現在でも、どれが日本の英文法でデファクト・スタンダードになるかわかっていません。
変形生成文法と認知文法が議論を闘わせているという段階で、それを高校の英文法教育に利用すると言うところまでは、行っていない。
そして文法に関してデファクト・スタンダードがなく、現行の高校英文法にも批判や論争がたくさんあるわけですから、入試で文法的な解釈についての問題は、出しようがありません。
Aという文法解釈では、この語句は副詞句ですが、Bという文法解釈では違うというようなことでは、出題者は様々な方面から批判を受けることでしょう。
入試では、文脈で考えないと意味が決められないような文章が問題になりますから、その辺は本当に微妙なのです。
現行の伝統文法でも、be able to は、準動詞なのかイディオムなのか、分類的にもう一つ釈然としません。
こういうコトがあるから、そう言う文法知識や文法的な解釈を問うような問
題は出ないのです。
受験生に必要なのは、目の前の英文がどういう事を言っているのかを突きとめ、自分の書きたいことを英語でどう書くかを知ることなのです。
そのためには、本当に最低限の文法知識、たとえば『山口英文法講義の実況中継』の最初に出てくる<S+V+X+X>を読みとる能力や、言葉のまとまりを見つける能力と、例文丸暗記くらいでいいのです。
英語は言葉なのですから、その言葉が何を表現したものなのか、それにまず注目しましょう。


