紫色のラメ入りシャツと、ルパン三世のはくようなズボン
紫色のラメ入りシャツと、ルパン三世のはくようなズボン
さて、ディスコでナンパじゃあ! とのろしを上げた二人だったが、そこはやはり遊び下手なボクらのこと。日時はすぐに決まったけど、服装にしたってダンスにしたって何をどうすれば良いのか全くよくわからない。
今なら別にクラブであろうがカラオケであろうが、下手でも「エヘヘ」と笑って楽しめばいいのだとみんな知っている。が、当時はまだ流行のステップをちゃんと覚えて行かないと、すぐに女の子に小馬鹿にされると言うウワサだった。
だから、彼らはたった二度か三度しかディスコへ行ったことしかないようなボクにさえ意見を聞き、何度も打ち合わせした。そして女の子に声を掛ける練習をしたり、流行の踊りの特訓を始めた。当日着て行く服も二人で示し合わせ、河原町かどこかへ買いに出掛け、高価な靴まで新調した。
彼らのテンションはそうして上がるところまで上がり切り、決戦の日のお昼過ぎにはもう、苦心惨憺して用意した衣装を身につけ、大万全の体勢を整えていた。ヒダカ君は、赤茶けたシャツと茶色いスラックス。少しシックな恰好。アカイさんは、スケスケのド派手な紫色ラメ入りシャツと、ルパン三世のはくような細身のズボン。派手。
真っ昼間から、そんなド派手な恰好をした二人を見てボクは
「うわーっエライ恰好やなーそれ。そんな派手な服、一体どこで買うたんや?!」
と思わずアカイさんに尋ねたが、しかし彼は驚くボクを目の前にしても
「何言うてんねん。ディスコでナンパなんやからこれくらい派手でちょうどええねん。第一これでも大学生らしく、知的にコーデネートしたんやで!」
とそう言った。
そしてまた隣にいたヒダカ君も
「そうだぜ! これでもちょっと地味かも知れんと思って心配してるくらいだぜっ」
と広島なまりで、やはりそう言った。
「知的ねぇ…、病垂れの方の痴的かもよー」
「アホ言えやー、このセクシーなはだけた胸元のどこが痴的なんや。ちょっとセンス悪いんと違うかーオマエ」「あははははー」
とそんな会話をして、ボクらは少し時間を潰した。
そして最後にアカイさんがもう一度
「それよりやっぱりどーげんも一緒に来えへんか? 今からやったらまだ間に合うで。それに今日は天気がエエから、ひょっとしてオマエ好みの、無茶苦茶かわいい女がおるかもよおー?」
とボクを誘ってくれたが、ボクはやはり「そういう事は性に合わないから」と断った。
「そーかー残念やなー。んじゃま、帰ったらちゃんと報告するなっ! 吉報を待っててくれ! 余裕があったら、ついでにオマエの分まで女の子捜してきたるし。ぐふっ!」
そう言って彼らは、待った決戦場へと旅立っていった。
ボクは「おう! 健闘を祈っとく」なんて明るく彼らを見送ったが、しかし内心では「ディスコで引っ掛かるような女なんて、ロクなもんじゃないと思うけどなぁ、」と考えていた。
しかしその気軽なたった一夜の行動が、彼らの片方の人生を大きく変えてしまうような事件の端緒となろうとは、彼らにも、そして彼らを知るたくさんの友人たちの誰一人にも想像だにできはしなかった。
人生には、どんな些細な出来事にでも大きく道を外し得る、そんな瞬間が必ずあるらしい。