リスク中立的な人間のモラルハザード
リスク中立的な人間のモラルハザード
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組織の経済学・マレニヨム!
第063回(2001/02/19)
インセンティブ契約
「リスク中立的な人間のモラルハザード」
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人間はなぜ組織を作るのか。組織の中で個人はどのように動く
のか。そして経営者と組織自体はどういう方向に自らの形態を
変えていくのか。経済学の観点から学びます。
テキストとしてポール・ミルグロム&ジョンロバーツ箸の
「組織の経済学(NTT出版)」をご用意下さい。BNは↓
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リスク中立的なエージェントのモラルハザード
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ここまでは、エージェントがリスク回避的であるという仮定の下
に議論を展開してきた。
すなわちたいていの人間が完全歩合制よりも固定給をもらう方が
有り難い、給料が業績に応じて激しく変動するなんて耐えられない
、、、という仮定のもとに話をしてきた。
だがしかし、仮にリスク回避係数rが0の人間(すなわちリスク
中立的)であれば、問題は生じないのだろうか?
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■エージェントがリスク中立的であっても起こる問題
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エージェントがリスク中立的であるということは、エージェント
が挙げた業績の利益を全て自分で受け取り、損失は全て自分で支払
うということである。
だがしかし、利益を全て自分で受け取るのは簡単でも、損失を全
て支払うのは難しい。
まず第一に、エージェントが十分な資金を持っていない場合、全
てのリスクを補償するのはまず無理である。
そしてまた、事故などによる死亡とか、環境汚染などといったリ
スクが金銭的なものでない場合、それを埋め合わせることは難しい。
エイズなどのウイルスに汚染された血液を輸血されたり、放射性
廃棄物によって致命的なDNA損傷を受けた場合、いくら金銭があって
も元通りにはならないし、それに妥当する金銭がいくらかを計算す
るのも難しい。
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■プリンシパル=エージェント問題上の「逆選択」
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発明家が何か商品を発明したとしよう。
そうしてその製造と販売をあるスーパーのチェーンに託すことを
考えよう。
このときその商品の製作・販売のリスクは、契約を結んだスーパ
ーが負うのが妥当である。と言うのも普通、発明家とスーパーのチ
ェーンでは後者の方がリスク負担の能力(リスク受容能)がはるか
に大きいからである。
だから発明家はその商品の製作販売の権利を全てスーパーのチェ
ーンに売り渡すのが効率的になる。
スーパーはその販売によって得られる利潤を全て受け取ることが
できるから販売に力を入れるし、発明家もその商品の開発に要した
コストと発明による利潤を受け取ることができる。
だがしかし、ここでひとつ問題が生じる。
というのも、発明家よりスーパーのチェーンの方がお客さんの選
好を知っている場合が多いから、「逆選択」が起こるのである。
つまりスーパーは発明家の提示する金額よりはるかに多い利潤が
得られると考えたときのみその契約を結び、そうでないときは結ば
ないから、発明家はその商品の発明による利潤を受け取るどころか、
そのために投じたコストを回収することすら難しくなるのである。
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■「逆選択」のおさらい
「逆選択」とは、たとえば自動車保険などで事故に対する保険金支
払を高く設定(つまり掛け金も高くなる)すると、事故を起こす確
率の高い顧客ばかりがその保険に加入し、保険の採算が合わなくな
るような現象のことである。
掛け金が高くなると、大きな事故をおこさないような安全なドラ
イバーは「見合わない」と判断してその保険を敬遠する。しかし逆
に冒険的なドライバーはたくさん加入する。
冒険的なドライバーは事故を起こす確率が高いから、保険会社は
その保険によって利潤が出なくなる。これがつまり「逆選択」であ
る。
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そういうわけで「逆選択」が起こると仕方がないから、発明家は
その商品の販売・売上高の数%に当たる金額をロイヤルティとして
受け取るという契約を結ぶことになる。
つまりその商品がヒットしてたくさん売れれば発明家の投入費用
は回収できるし、利潤も受け取れる。がしかし逆に売れなければ、
それはパアになる。
スーパーのチェーンとしてもリスクを負って高い金でその発明品
を買わなくても済むわけだから、製作・販売のハードルはかなり低
くなる。
だがこのロイヤルティ契約にも問題点がある。
というのもこれでは発明家のリスク負担は大きくなるし、スーパ
ーも利潤が少なくなるのであまり販売促進に資源を投入するインセ
ンティブが小さくなるからである。
そしてまたもし「利潤の何%かをロイヤルティとして受け取る」
というオプション(選択肢)を選択してスーパーの販売インセンテ
ィブを高めるとしても、会計操作によってスーパーが発明家に過小
なロイヤルティしか支払わないだろうことは想像に難くない。
(この辺がつまりモラルハザードなわけですね)
これはもう、半分信頼して諦めるしかないかもしれない。
会計監査を厳しくやるにしても、コストはかかってしまう。
だがこの「発明家とスーパーのチェーンのモデル」は、結構重要
なのである。
というのも政府などの機関が企業(たとえば軍需産業)から調達
を行う場合、商品の情報はプリンシパルである機関にはなくエージ
ェントである企業にあるのにも関わらず、より上質で安価な商品を
提供するインセンティブを機関が与えなければならない場合がかな
りあるからである。
このモデルでのモラルハザードの解決は結局、ロイヤルティ契約
と監査しかないわけであるが。
以上、「インセンティブ契約」の項、終わり。
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今週の・・・
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次回からは「レントと効率性」の項に突入します!
コースの定理とか、出てきます。
確か結構勉強になったような覚えが、、、
でもレントって何やっけ???
希少価値のある財が持つ飛び抜けた価値だったっけ?
まあ来週やるからいいか。
