長期分析から短期分析へ記事一覧

 前回まではマクロ経済を長期的な視点で分析してきた。 長期的視点とはすなわち諸価格が「伸縮的」で「長期的には需要と供給のバランスが調整される方向に進んで均衡する」という考えを前提とした視点である。 しかし短期的な視点に立つと、価格はまるで伸縮的ではない。 不景気でもなかなかモノの値段は下がらないし、不景気になって労働市場が買い手市場になったとしても、現在働いている労働者の賃金が急に下がるということ...

 長期的視点とはすなわち諸価格が「伸縮的」で「長期的には需要と供給のバランスが調整される方向に進んで均衡する」という考えを前提とした視点である。 しかし短期的な視点に立つと、価格はまるで伸縮的ではない。 不景気でもなかなかモノの値段は下がらないし、不景気になって労働市場が買い手市場になったとしても、現在働いている労働者の賃金が急に下がるということはない。 高い仕入値で仕入れた商品を安く売るわけには...

 短期的な視点で見ると、需要が減っても価格はなかなか下がらない(硬直的である)。極端な場合は売れても売れなくても同じ値段のまま商売をしようとする会社も多い。 そうなると「物価水準は固定的で、生産量が伸縮的」になる。 つまり短期的な総供給曲線(SRAS)は下図のようにフラット(水平)になるから、たとえば中央銀行が貨幣流通量を減らしたとしたなら需要曲線が0に近づいて「生産水準が下がる」。 P(物価水準...

 総需要へのショックは貨幣の需要量が変化したり、中央銀行が供給すべき貨幣の量を見誤ったりした場合に、総需要曲線ADがLRASとSRASとの交点からズレる「ショック」である。 たとえばATM(自動預け払い機)などの普及である。 イノベーションによって貨幣需要が減ったのにも関わらず流通貨幣量を減らさない場合、総需要は増大する。 要するにバブル経済のように貨幣の流通速度が速くなって、貨幣がジャブジャブ余...