開放経済における国民勘定の恒等式(復習)

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 閉鎖経済における国民勘定の恒等式は、
 Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入)
であった。

 

 すなわち国内で生産したモノはすべて国内で消費するというわけ
である。

 

 だが小国開放経済では外国との取引が経済で大きな役割を果たし、
ある財やサービスが自国で生産されているか外国で生産されている
かは、経済を考える上で見逃せない。

 

 そういうわけで国内で生産したモノを消費したり、国内の産業に
投資したりする場合(d:ドメスティック)と海外で生産したモノ
を消費したり海外の企業の投資したりする場合(f:フォーリン)
とを、分けて考えねばならない。

 

・国内で生産された財やサービスの消費 → Cd、
・海外で生産された財やサービスの消費 → Cf、
・国内の財やサービスへの投資 → Id、
・海外の財やサービスへの投資 → If、
・国内で生産された財やサービスの政府購入 → Gd、
・海外で生産された財やサービスの政府購入 → Gf、

 

とすると、C=Cd+Cf、I=Id+If、G=Gd+Gf となる。

 

 輸出をEX(エクスポート)とすると国内総生産Yは

 

 Y=(C-Cf)+(I-If)+(G-Gf)+EX

 

となるから、これを整理すると、

 

 Y=C+I+G+EX-(Cf+If+Gf)

 

となる。

 

 Cf+If+Gf=IM(インポート)とおくと、IMは海外に対する
支払いであるから、ここで初めて「輸出-輸入」と言う項ができ、
「輸出(EX)-輸入(IM)」を「純輸出(ネット・エクスポート)」
と呼び、NXで表す。

 

 国民所得勘定の恒等式を変形すると、
 NX =Y-(C+I+G)
となるが、これは国内での生産額が国内向け支出を上回ればNX>0
となり、逆に国内での生産額が国内向け支出より小さくなれば
NX<0となることを示している。

 

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対外純投資と貿易収支

 

 さて、NX≠0の場合の国民貯蓄Sはどうなるか?
 国民貯蓄Sとは、GDPから消費Cと政府購入Gを差し引いたモ
ノ、すなわち Y-C-G=S であったから、
 S = Y-C-G = I+NX  ∴ S = I+NX
ということになる。

 

 そしてこの恒等式をさらに変形すると、S-I=NX と言うこと
になる。

 

 この(S-I)を特に「対外純投資」と言うが、これは海外と貿
易をしている経済では、その分だけ海外に投資している事になるの
である。 

 

 日本人は貯蓄性向、すなわち収入を貯蓄に回す度合いが高いと言
われるが、そうやって貯蓄しても国内に投資先がない場合、その貯
蓄は海外に投資される。これがつまり「対外(対外国)投資」であ
る。

 

 もちろん海外の投資家も日本の企業に対して投資を行う場合もあ
るから、対外投資からそれを差し引いた分が「対外純投資」という
事になる。

 

 また S-I=NX の場合のNXを、貿易収支(トレード・バラ
ンス)と呼ぶ。

 

 トレード・バランスとは、純輸出の「別名」であり、
 S-I=NX >0の時が「貿易黒字(貿易過剰)」、
 S-I=NX <0の時が「貿易赤字(貿易不足)」となる。

 

 貿易黒字が生じたとき、対外純投資もプラスになっている。
 貿易赤字が生じたとき、対外純投資はマイナスになる。

 

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