フィッシャーの方程式

フィッシャーの方程式

フィッシャーの方程式

 前回の「インフレ税(お札を刷って政府の収入とする形の税)」
について、読者の方からメールを頂きました。

 

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みちもとさんへ。堀越と申します。はじめまして。
21号の、日銀の国債引き受けについては、これは財政法の規定
で原則、できないことになっています(ただし国会の承認があれば
別です)。
 これはみちもとさんも御指摘の通り、戦時中におきた、日銀の国
債引き受け過剰によるインフレへの反省からきたものです。

 

 現在、調整インフレを唱えるクルーグマンや、東大の伊藤元重教
授は日銀がこれを行うべきだとしていますが、日銀自身は、これを
『非常手段』として慎重な見方を示しています。

 

 また『政府がお札を刷って、、、』とのくだりがありましたが、
少なくとも制度上は中央銀行がお金をするのですから(しかも日銀
はただお金をすることはできません。

 

 日銀券は流通すれば日銀の負債の欄にはいりますから、国債を引
き受けたりして、バランスシート上対価となるものをいれなければ
ならないのです)、これではその前の部分との違いが見えてきませ
ん。

 

 前の部分については、日銀による債券売買オペとしてハッキリ違
いを書くべきです。

 

 と、いろいろ書きましたが、僕もまだ大学3年でわからないこと
いろいろありますので、これからもお互い勉強していきましょう。
 じゃ、配信がんばってください。さようなら。

 

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(^_^;)
 ご指摘有り難うございました。
 いつも何だか良くわからないメルマガですが、前回は特に自分で
読んでも変な箇所がたくさんありました。申し訳ない。

 

 結局日本の今の法律では、インフレ税は実行できないわけですね。
 素人考えかも知れませんが、国債をマイナス金利で売り出すこと
はできないから、インフレ税を実施できる体制も整えておかないと
経済的には不都合のように思えますが、実際はどうなんでしょうか?

 

 毎年必ずGDP比1%ぐらいずつお札を刷って、高齢者対策に使
うというのであれば国民からも理解されるし国債の重圧も減らせる
と思うんだけどなあ、、、

 

 まあそれはさておき今回は「貨幣を持つコスト」についてです。

 

 

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        フィッシャーの方程式    

 

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■フィッシャー効果
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 経済学者は、銀行などが支払う利子率のことを「名目利子率」
と呼び、預金者の購買力の増加率を「実質利子率」と呼ぶ。

 

 名目利子率をi、実質利子率をrとし、インフレ率をπとすると、

 

  r=i−π、  または、i=r+π

 

である。

 

 この i=r+π を特に「フィッシャーの方程式」と呼ぶ。

 

 すなわち名目利子率とは、実質利子率とインフレ率の和だという
ことである。

 

 そしてこの方程式によるとインフレ率の1%の上昇は名目利子率
の1%の上昇を招く。

 

 インフレ率の変化と名目利子率の変化が1対1の関係にあることを
特に「フィッシャー効果」と呼ぶ。

 

 アメリカのデータでは、インフレと名目利子率に確かに強い相関
関係が見られる。

 

(※ 前回登場した貨幣数量説が適応できるような状態であれば、
貨幣量の1%の増加は1%のインフレを招き、名目利子率も1%ほ
ど引き上げてしまうことになる)

 

 

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■名目利子率を決定するモノとは?
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 さて資金を借りる場合、借りる方も貸す方も、将来の実質利子率
については、わからないわけである。

 

 すなわち名目利子率iで金を貸し借りしても、実質利子率rは、
後でわかるインフレ率πを用いて r=i−π となるわけだから、
事後になってみないとわからないのである。

 

 そういうわけで資金の貸し借りを行う前に考えていたインフレ率
(予想インフレ率)をπ’とすると、

 

・事前の実質利子率r’は  r’= i−π’
・事後の実質利子率r は  r = i−π

 

となる。

 

 では名目利子率iは、どのように決定されるのか? というと、
「名目利子率は銀行などが金を貸し出す利子率」だから、もちろん
「事前の予想インフレ率π’によって決定される」のである!

 

 ということは実は、名目利子率を押し上げるのは、予想インフレ
率なのである!

 

 そして人間はたいてい、現在の状況から将来を予測するわけだか
ら、予想インフレ率というのは現在のインフレ率の延長線上の値に
ある。

 

 つまり去年のインフレ率が現在の名目利子率を決定し、現在のイ
ンフレ率が来年の名目利子率を決めることになる。

 

 そう考えて127ページの図4-3のグラフ(アメリカのインフレと名
目利子率)を見ると、確かにインフレ率と名目利子率の動きがズレ
ていて、名目利子率がインフレ率を追いかけている感じである。

 

 ただしフィッシャー効果は19世紀のデータには当てはまらない。

 

 フィッシャー効果が出る経済状態と、そうでない経済状態がある
のである。

 

 

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■名目利子率と貨幣需要
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 貨幣数量説では流通速度Vをほぼ一定と見なした上に、貨幣需要
が国民所得に比例すると仮定していた。

 

 だが名目利子率も貨幣需要の決定要因の一つなのである。

 

 さて人々が手元に貨幣を温存している場合、インフレによって貨
幣の価値は下がっていく。

 

 国債のような債権に投資すれば、実質利子率r分だけ資産は増え
るが、貨幣を手元に置いてタンス預金しておれば、事後のインフレ
率πだけ価値が減る。

 

 すなわち貨幣を1単位保有していると、貨幣を投資に回した場合
と比べて利子率rとインフレ率π分だけ損するわけである。

 

 このr+πはだから「貨幣の保有コスト」なのであるが、貨幣を
どれだけ保有するかという決定は事前に行われるために、このπも
実は「予想インフレ率」なのである。

 

 ということになると、

 

{貨幣の保有コスト} = {名目利子率i(=r+π)}

 

という事になる。

 

 パンの需要がパンの価格に依存しているように、貨幣も貨幣の保
有コストに依存している、、、、と考えれば、実質貨幣残高(流通
している貨幣でモノがどのくらい買えるかという値)M/Pは、名目
利子率にも依存していると考えられる。

 

 つまりM/Pは国民所得Yにも依存するが、名目利子率iにも依存
するというわけで、

 

 M/P = L(i、Y)

 

という貨幣の需要関数Lを定義することができるのだ。
(なおLは貨幣の流動性(liquid)の頭文字である)

 

 この場合、貨幣への需要はYが増えると増え、iが上がると減る。

 

 

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■将来の貨幣と現在の物価
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 i=r+πであり、πは「予想インフレ率」であった。

 

 これを貨幣の需要関数の式に代入すると、

 

 M/P = L(r+π、Y)

 

となるが、πが予想インフレ率であるということは、現在と将来が
関係しているというということである。

 

 そうすると将来的に貨幣の供給増加が「予想」されると、予想イ
ンフレ率は上昇して現在の貨幣需要は減る。

 

 現在の貨幣供給量はMのままですぐには変わらないから、M/Pが
小さくなるためにはPが大きくなるしかない。

 

 Pってなんだっけ? と考えると、これは財やサービスの価格で
ある。

 

 すなわち

 

・将来の貨幣供給増大が予想される
 →将来のインフレ率の上昇が予想される
 →予想インフレ率が上昇する
 →予想インフレ率が上昇すると現在の名目利子率が上昇する 
 →貨幣需要は名目利子率と逆相関の関係にあるから、利子率
  が上がると現在の貨幣需要が減少する
 →現在の物価水準が上がる。

 

ということで、将来の貨幣供給量が増えるとわかると現在の物価が
上がると言うことが起こるのだ。

 

 補論のモデルでは、物価水準は現在の価格供給と将来の価格供給
の加重平均に依存するという結論を導き出している(ようわからん
が)。    

 

 

(つづく。次回は「ハイパーインフレの止め方」の予定)
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         今回の・・・・

 

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 う〜む、今回は結構面白かったな。
 未来のインフレ率を予想して現在の(名目)利子率が決まる、、
というのは、時系列を意識していないと分からない話だから話に深
みが出る。
 次回は「ハイパーインフレの止め方」だと。
 タイトルがいいな。 
NEXT:ハイパー・インフレの止め方

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