貨幣数量説とインフレ税

貨幣数量説とインフレ税

貨幣数量説とインフレ税

 

 前回の貨幣量の話について、KUDAさんからメールを頂きました。
 いつも有り難うございます。

 

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 みちもとさん、M1とM2の区別はかなり重要だと思います。

 

 M2はM1に銀行の預貯金を加えたものです。

 

 ということは、銀行が企業に貸し付けて、その貸付金を企業が再
び銀行に預けることによって、M2は増えていきます(いわゆる
「信用創造」という話)。

 

 このときM1は変わりません。

 

 数年前に銀行の貸し渋りという話がありました。

 

 このような状況下では、日銀が市場で国債を買うことによってM
1を増加させても、銀行がそれを上回る量の融資引き上げを行えば、
M2は減少します。

 

 実際、日銀はM1よりもM2に注意を払って金融政策を行ってき
たそうです。

 

 さらに、開発経済の文脈でみると各国の経済発展の歴史において、
M1を国民所得で割った値は比較的一定であるのに対して、M2を
国民所得で割った値は経済発展に伴って上昇しています。(原洋之介
『開発経済論』(岩波書店、1996年)の83ページの表を参照。)

 

 家計による貯蓄自体が所得を上回るスピードで増えることは考え
難いので、銀行による信用創造が経済発展に伴って増加していくこ
とを意味していると考えられるでしょう。

 

KUDAより

 

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(^_^;)
 ああなるほど、、、そう言うことなんですね。
 確かにCとかM1とかだけだと、経済は窮屈ですしねえ、、、、
 よくわかりました。ご説明、有り難うございました。 
 またよろしくお願いします。

 

 で今回は、長期的にはインフレが貨幣供給量と関係があるという
話です。

 

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        貨幣数量説とインフレ税    

 

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■貨幣の数量方程式
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 貨幣をM、
 流通速度をV、
 価格をP、
 取引数をT
とすると、これらの関係は M×V = P×T と書ける。

 

 貨幣Mというのは前回定義したとおり「現金通貨」と「要求払い
預金」の合計である。

 

 が、それでは少しイメージしにくいので、ここでは現金通貨(紙
幣と硬貨)で考えておけば良いだろう。 

 

 で、貨幣というのは人から人の手にどんどん移動していくものだ
から貨幣の移動速度というモノが考え得る。これを流通速度という。

 

 流通速度とは、単位時間(たとえば一年とか一月とか)当たりに
貨幣Mが何回所有者を替えたか、、、ということであって、財やサ
ービスの「取引回数」に関係のある話である。

 

 そういうわけで右辺には財やサービスの取引回数Tが現れること
になり、 M×V = P×T となるわけである。

 

 理解しやすいように簡単な例を挙げる。

 

 

<例>
 たとえばある年に、一個50円のパンが60万個売れたとする。
 つまりP=50円/個、T=60万回/年、であるから取引に使われた
貨幣の総額は 50×60=3000万円 ということになる。 

 

 そしてもしこの経済に貨幣が紙幣と硬貨を合わせて100万円分しか
なかったとすると、貨幣の流通速度Vは、

 

 V=(P×T)/M = 50×60/100 = 30 (回/年)

 

となり、100万円分の紙幣と硬貨が一年間で30回人から人へと移動し
たのだということになるわけである。

 

 細かく言えば、M×V = P×T は、

 

   Σ(m・v) = Σ(p・t) 

 

と言うことになるだろう。

 

 つまり左辺は一円玉全体が年に5回所有者が替わり、五円玉が年に
5回移動し、…、一万円札が年に100回移動し…、ということであり、
右辺は価格50円のラーメンが年に一億回取り引きされ、価格100円の
カップヌードルが10億個売れ、…、という風になる。

 

 

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■実質貨幣残高
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 だが実際にこの方法で貨幣の流通速度を計算するのはそう簡単な
ことではない。というのも取引回数を測定するのがえらく難しいか
らである。

 

 だからより簡単にその経済における貨幣の流通速度を計算するた
めに、取引回数Tに替えて総生産高Yを用いることにする。

 

 つまり実質GDPを総生産高Y、GDPデフレータをP、とする
と、名目GDPは P×Y で表すことができるから、

 

    M×V = P×Y

 

と言う風になるわけである。

 

 この時のVは「貨幣の所得流通速度」と呼ばれ、前述のVとは少
し値が異なるが相関関係があるのでさして問題はない。

 

 で、ここで貨幣でどれだけの財やサービスを購入できるかという
事を考える。

 

 この教科書の最初の方で「実質賃金」といって、労働者に支払わ
れる賃金が実際の生産物何個分にあたるか(W/P)という尺度を考
えたが、それと同じ感じで M/P を

 

「貨幣の実質貨幣残高(リアル・マネー・バランス」」

 

と呼ぶことにする。

 

 そうすると、貨幣需要関数というモノが考えられる。

 

 すなわち人々が手元に保有しておきたいと考えるリアル・マネー
を決定する関数である。

 

 そして貨幣需要関数は国民所得Yに比例する関数になるのだが、
それは経済が発展して実質的な国民所得Y(実質GDP)が増える
と、モノがたくさん買えることになり、モノをたくさん買えるため
には貨幣がたくさん必要になるからである(この辺はもう一つ良く
理解していないのでいい加減な説明だが)。

 

 つまり経済が発展して国民所得Yが増えると、それだけ発行され
ている貨幣Mでよりたくさんのモノが買えねばならないから、定数
kを用いて、
   M/P = k・Y
という貨幣の需要関数が考え得るのである。

 

 そうしてこの式を変形すると、

 

  M×(1/k) = P×Y

 

となるから、1/k を V と置くと、さっきの数量方程式になるわ
けである。

 

 

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■貨幣とインフレーション:貨幣数量説
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 銀行や郵便局に夜遅くまで預金を引き出せるキャッシュ・ディス
ペンサー(CD機)が当たり前のようにできると、人々は貨幣に対す
る需要を減らす。

 

 これはもちろん給料が下がっても良いということではなく、財布
に必要以上の紙幣やコインを入れておかなくてもよくなった、、、、
と言う意味である。

 

 そうすると貨幣の需要関数 M/P = k・Y におけるkは
小さくなり、そして所得流通速度Vは大きくなる。

 

 というのも人々が貨幣に対する需要を減らしたから少ない貨幣し
か必要でなく、国民所得Yが変化しない状態で貨幣量が少なくなれ
ば、貨幣が経済をグルグル回る速度Vが増すからである。

 

 そう言う風に技術革新によって貨幣に対する需要は変化するが、
しかしそれはそんなに速い変化ではないから、ある期間において
「流通速度Vは一定である」
という仮定をすることができる。

 

 人々の暮らし方が急激に変化して経済に大きな影響がでるような
ことがなければ、この仮定は非常に意味がある。

 

 なぜならこの仮定によって、インフレーションと貨幣量の相関関
係が強まるからである。

 

 すなわち貨幣の数量方程式 M×V = P×Y を時間tで微
分(差分)すると、

 

 M・(ΔV/Δt)+ V・(ΔM/Δt)
   ≒ P・(ΔY/Δt)+ Y・(ΔP/Δt)

 

と言うことになるが、Vが一定であれば ΔV/Δt=0 になり、
さらにこの式に V=(P×Y)/M を代入すると、

 

 ΔM/M ≒ ΔY/Y + ΔP/P

 

となるから、つまり

 

{貨幣量の変化率}≒{実質国民所得の変化率}+{インフレ率}
           (実質GDP)   (GDPデフレタ) 
なのである。

 

 この説(貨幣数量説)でいくと、政府や中央銀行は貨幣の流通量
を調整することによってインフレをコントロールすることが可能に
なる。

 

 つまり実質GDPの成長以上に貨幣をたくさん供給するとインフ
レが生じ、それ以下だとデフレになる、、、ということである。

 

 実際の各国のデータでは、確かに貨幣供給量の成長とインフレの
間の正の相関関係が認められている。

 

 

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■インフレ税
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 貨幣の供給量の調整には通常、中央銀行による国債の売買が用い
られる。

 

 これは貨幣供給量が少ない場合に中央銀行が市中に出回っている
国債を買い入れることによって現金を市中に流し、逆に貨幣供給量
が過剰な場合には手持ちの国債を売りだして流通している現金を減
らすと言う方法である。

 

 だがしかし貨幣の供給を増やす場合には、もっと簡単な方法があ
る。つまり政府がジャンジャンお札を印刷して使ってしまうのであ
る。

 

 このように政府が「貨幣発行特権」を利用してお札を刷ると、当
然インフレになる。 

 

 インフレになるとお金を持っている人のお札の価値は下がるから、
下がった分だけ政府が「貨幣所有者」からお金を集めたことになる。

 

 これを特に「インフレ税」と呼ぶ。

 

 何にも税金を集めていなくても、政府がお札を刷ってそれを収入
として使ってしまえば、実質的に国民から税金を取ったのと同じに
なるのである!

 

 このような方法は特に戦時中に戦費の調達方法としてよく用いら
れ、アメリカの独立戦争のための戦費や第二次世界大戦時の日本の
戦費はこのような方法で調達されたと言う話である(その額なんと
170兆円!)。

 

 だが現在でも各国で同様のことが行われている。

 

 アメリカではこのような貨幣発行収入は政府の総収入の3%未満
であるが、イタリアやギリシャにおいては政府収入の10%以上がこの
「貨幣発行による収入」である。

 

 南米のハイパーインフレなども、結局この貨幣発行収入によって
引き起こされている。

 

 

(次回はインフレと利子率の話の予定)
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         今回の・・・・

 

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 インフレ税、日本はどうなってるんでしょうか。

 

 今、日本はインフレが殆どないから、毎年GDPの1%くらいず
つお札を刷って国債返済に使ってもいいかもね。
(邱永漢さんなんかがよく本に書いている「国債の日銀引き受け」
というのもそういうこと?)

 

 貨幣を持っていてもインフレ税で目減りするなら、消費に回され
ると言うことにならないのかな、、、

 

 マクロは結構面白いね。

 

NEXT:フィッシャーの方程式

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