貨幣とインフレーション記事一覧

 世間では一般的に貨幣(money)は富と同じ意味に用いられる。 だがしかし経済学者の定義による貨幣とは、「取引や決済に即時に使用しうる資産のストック」のことである。 そして貨幣には主に三つの機能があるとされ、その三つとは1)価値の貯蔵の手段2)計算単位3)交換手段である。 貨幣のない物々交換社会では、お互いに相手の欲しいモノを持っているという「偶然の一致」がなければなかなか取引自体が成立しない。...

 利用可能な貨幣の量のことを「マネーサプライ(貨幣供給量)」と呼ぶ。 金や銀などの商品貨幣を用いている経済ならば、金や銀などの総量によってマネーサプライは決まってしまう。 一方現代の経済のようにフィアット・マネー(不換紙幣)を用いる経済では、マネーサプライはそのフィアット・マネーの発行量や流通量を調整することによってコントロールされる。 さてマネーサプライの管理のことを「金融政策」と呼ぶが、政府や...

 貨幣をM、 流通速度をV、 価格をP、 取引数をTとすると、これらの関係は M×V = P×T と書ける。 貨幣Mというのは前回定義したとおり「現金通貨」と「要求払い預金」の合計である。 が、それでは少しイメージしにくいので、ここでは現金通貨(紙幣と硬貨)で考えておけば良いだろう。  で、貨幣というのは人から人の手にどんどん移動していくものだから貨幣の移動速度というモノが考え得る。これを流通速度...

 銀行や郵便局に夜遅くまで預金を引き出せるキャッシュ・ディスペンサー(CD機)が当たり前のようにできると、人々は貨幣に対する需要を減らす。 これはもちろん給料が下がっても良いということではなく、財布に必要以上の紙幣やコインを入れておかなくてもよくなった、、、、と言う意味である。 そうすると貨幣の需要関数 M/P = k・Y におけるkは小さくなり、そして所得流通速度Vは大きくなる。 というのも人々...

 経済学者は、銀行などが支払う利子率のことを「名目利子率」と呼び、預金者の購買力の増加率を「実質利子率」と呼ぶ。 名目利子率をi、実質利子率をrとし、インフレ率をπとすると、  r=i−π、  または、i=r+πである。 この i=r+π を特に「フィッシャーの方程式」と呼ぶ。 すなわち名目利子率とは、実質利子率とインフレ率の和だということである。 そしてこの方程式によるとインフレ率の1%の上昇は...

 貨幣数量説では流通速度Vをほぼ一定と見なした上に、貨幣需要が国民所得に比例すると仮定していた。 だが名目利子率も貨幣需要の決定要因の一つなのである。 さて人々が手元に貨幣を温存している場合、インフレによって貨幣の価値は下がっていく。 国債のような債権に投資すれば、実質利子率r分だけ資産は増えるが、貨幣を手元に置いてタンス預金しておれば、事後のインフレ率πだけ価値が減る。 すなわち貨幣を1単位保有...

{名目利子率i}={実質利子率r}+{予想インフレ率π}だから、インフレが収束するといっぺんに名目利子率iが下がり、それによって実質貨幣需要がいっぺんに増える。 この「いっぺんに」というのが、今回の問題です。.----------■歴史的なドイツのハイパー・インフレーション---------- 実質貨幣需要(M/P:どれだけの財やサービスを購入できるだけの貨幣が経済に必要とされているかという目安)...

 もし仮に貨幣数量説が正しく、そして名目利子率が貨幣需要に何の影響ももたらさないならば、ハイパーインフレを止めるのはたやすい。 それは「貨幣の増刷を止めればよい」だけであるから。 だが前回も学んだ通り、名目利子率iは実質貨幣需要に影響する。 だから貨幣量Mを固定しても、名目利子率iが上昇すると実質貨幣需要は下降し、M/Pも小さくならざるを得ない。 Mが一定でM/Pが小さくなるためにはPが大きくなる...

 貿易が無視できる経済を考えるとき、国内総生産GDPはそのまま国内所得(国民所得)Yと同じ額であるから Y=F(K、L) である。 ここで話を簡単にするために「規模による収穫不変」を仮定すると、「労働者一人当たりの産出量Y/L」を考えることが簡単になるので、生産関数をLで割った式を考えてみる。 つまりzY=F(zK、zL)のzに1/Lを代入するわけで、 Y/L=F(K/L、1)である。 この式は労...

----------■労働効率性E(efficiency of labor)---------- 労働の効率性をEで表すことにしよう。そうすると労働LはL×Eで置き換えることができる。 すなわち生産関数F(K、L)はここで、F(K、L×E)と書き換えられるわけである。 そして人口成長率をnとしたように、技術進歩率をgとしてみよう。 g=0.02なら、毎年2%ずつ労働効率が向上して同じ労働者数でも生...

 インフレとは結局貨幣需要量と貨幣供給量のアンバランスによって生じる問題である。 しかしインフレが起こると社会的には様々な費用がかかる。----------1)靴底コスト:---------- たとえば高インフレは名目利子率を押し上げる。 名目利子率が高いと言うことは、貨幣を手元に持っているとドンドン財産が減る(貨幣の保有コスト=名目利子率)ということだから、人々は本当に必要な最少限だけ貨幣を手元...

インフレの影響の話の続き。----------5) 物価水準の変動コスト---------- インフレは、将来のために備えるのを難しくする。 たとえば老後に備えて今一億円の金を貯金したとしても、20年後にその価値がそのままである可能性は低い。 それならいくら貯めておけばよいのだろうか、、、ということで、余分に貯金したり、貯金するのを止めてしまったりする。 そしてもしハイパー・インフレなどが起こって...