アービング・フィッシャーと予算制約式

アービング・フィッシャーと予算制約式

アービング・フィッシャーと予算制約式

■異時点間の予算制約
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 人々はのべつまくなしに消費をするわけではない。

 

 限られた収入のうちから、○○にはいくら、××にはいくら、、、
と予算をたてて消費を行う。

 

 もちろん他人からみて「?」という消費を行う者もたくさんいる
だろうが、しかしたいていの人はそうして自分の収入という予算に
よって、消費を制約されている。これを「(消費の)予算制約」と
いう。

 

 そして人々が自分の収入のうち、いくらを消費に回し、そしてい
くらを貯蓄や投資に回すのかという問題は、現在の状況と将来の状
況の予想によって決められる。

 

 今現在、どんどん消費をすれば将来に使える金は減る。
 そして今、消費を控えれば、将来に使える金はとりあえず増える。

 

 手元にある財産を消費に回すかそれとも貯蓄や投資に回すか、そ
れは異なる時点にまたがった選択(異時点間の選択)であり、人々
はその中で自らの「効用」を最大化(あるいは局大化)しようとす
るわけである。

 

 これを特に「異時点間の予算制約」とよぶ。

 

 たとえば人生の前半を第1期、後半を第2期とし、収入と消費を
考える。

 

 前期の収入がY1、消費がC1、後期の収入がY2、消費がC2だとする。
(値はインフレ等を加味した実質価値とする)

 

 前期の貯蓄Sは、S = Y1 − C1

 

 後期は貯蓄をしないので、C2 = (1+r)S + Y2
(rは実質利子率)

 

 もちろん前期で貯蓄をせず、大きな借金を抱えることもあるだろ
う。その場合Sはマイナスの値をとる。

 

 上記の二式からSを消去すると

 

 C2 = (1+r)(Y1−C1) + Y2

 

となり、(1+r)C1 + C2 =(1+r)Y1 + Y2 と変形して
(1+r)で両辺を割ると、

 

  C1 + C2/(1+r) = Y1 + Y2/(1+r)

 

となる。

 

 後期の消費C2
   |
   |\
   | \     C2= −(1+r)C1+(1+r)Y1 +Y2
   |  \
 Y2 |………\
   |    \
   |     \
   |      \
   |       \
     ̄ ̄ ̄Y1 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄前期の消費C1

 

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■無差別曲線(効用曲線)
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 さてここまでは単に人生を前期と後期に分けて、前期と後期のそ
れぞれに消費することのできる価値の関係を式に表しただけである。

 

 これは単純に数値的な関係式であり、人々の満足や消費による効
用度を考えたモノではない(予算制約式だから当たり前)。

 

 だから前期の消費をC1にし、後期の消費をC2にするときに人々が
どのくらい満足するかという「効用」の関係式を別に立て、人々が
前後期にどういう消費配分を選ぶかを考えねばならない。

 

 消費cによる効用をU(C)とすると、前期と後期の効用の合計は
  U = U(C1) + U(C2) 
となるが、これはミクロ経済学で出てきたように「無差別曲線」と
なる。

 

 前期にC1を減らすと効用U(C1)は減る。その代わりに減った効用
U(C1)の分だけC2を増やす。この関係が一本の効用曲線となる。

 

 そうしてU=1の場合のC1とC2の組み合わせ、U=2の場合の
C1とC2の組み合わせ、U=3の場合の組み合わせ、、、などと無数
の組み合わせが考えられる。

 

 ただし無差別曲線は、それぞれが交わることはない。

 

 U=1の曲線よりU=2の曲線は外側にあり、U=2の曲線より
U=3の曲線は外側にある。

 

 後期の消費C2
   |
   |\ \ \
   | \ \ \
   |  \ \ \
 c2 |………\…\…\
   |    \ \ \
   |     \ \ \
   |      \ \ \
   |       U=1,U=2,U=3 
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄C1 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄前期の消費C1

 

 人々はなるべくUが大きくなるようにC1とC2の組み合わせを選ぼ
うとするが、先に導出した「消費の予算制約」によって制約を受け
るC1とC2の組み合わせしか選ぶことができない。

 

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■借り入れ制約
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 人々が消費できるのは予算制約式の下の部分
  C2 ≦ −(1+r)C1+(1+r)Y1 +Y2
である。

 

 このゾーンと消費者の無差別曲線(効用曲線)とが共有点をもつ
(重なる)場合が、消費の可能性の範囲である。

 

 もちろんこの二つの範囲が共有点を持つ範囲は広いが、通常人々
はなるべく自らの満足度(効用U)を大きくしようと行動するから、
理論的には《 C2= −(1+r)C1+(1+r)Y1 +Y2 》と接す
る効用曲線が選ばれ、C1とC2はその接点によって決まるC1とC2とな
る。

 

 接する場合というのは、予算制約式の傾きが(1+r)であること
から、効用曲線UをC1で偏微分した偏微分方程式
   ∂(C2)
  ――――― = 1+r
   ∂(C1)
で求められる(ハズ)。

 

 ところがこれは「生涯収入に相当する金を人生のどの時点でも借
り入れられる」という仮定においてである。

 

 実際には借り入れには制約があるから、予算制約のグラフは以下
のようになる。

 

 後期の消費C2
   |
   |\
   | \     C2= −(1+r)C1+(1+r)Y1 +Y2
   |  \
 Y2 |………\
   |    \
   |     |
   |     |
   |     |
     ̄ ̄ ̄Y1 ̄Y1+α ̄ ̄ ̄ ̄前期の消費C1

 

 このグラフの範囲は前述のグラフの範囲より狭い。

 

 ということは場合によっては前述の効用曲線より内側の、効用合
計(満足レベル)の低い効用曲線としか共有点を持つことができず、
消費意欲の盛んな前期(たとえば20代〜30代)に金がなくてや
りたいことが満足にできない一方、歳とってから使いようがないと
いうような不合理が発生することになる。

 

(つづく)
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          今週の・・・

 

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 裕福な家庭で十分な消費ができると、人生の満足度は大きくなる
ということか?

 

NEXT:続・アービング・フィッシャーと予算制約式

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