ケインズの消費推論

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 消費はGDPのおよそ三分の二を占める。

 

 消費がなければ生産はないわけであるから、消費を分析すること
は経済にとって非常に重要な項目となる。

 

 ここまでは消費を可処分所得{Y-T}の関数C(Y-T)として
仮定し、可処分所得が大きければ消費は増えると言う順相関関係に
あるものと考えてきた。

 

 だが経済学がこのように消費関数をおおざっぱな分析ですませて
来たわけではない。

 

 消費関数がどのようなモノとして考えられたかを、時代を追いつ
つ見ていく。

 

ケインズと消費関数

 

 収入が1ドル増えたときに、人々がそのうちいくらを消費に振り
向けるか? という指数がある。

 

 これを「限界消費性向(MPC)」というが、ケインズはこの値を
0と1の間であると推測した。

 

 つまり人々は平均的には
「収入が増えた範囲内でしか消費を増やさない」
と考えたわけである。

 

 またケインズは収入の何割を消費に振り向けるかという「平均消
費性向(APC)」に特徴があると考えた。

 

 その特徴とは、
「人々は、収入が多くなるほど平均消費性向が小さくなる」
すなわち、
「収入が多くなると、人々は消費にお金を回す率を小さくする」
というものである。

 

 この推論は、「資産が増えると金遣いが荒くなる」と言う感じの
「資産効果」に似ているが、初期のケインズ理論では大きな柱とし
て存在していた。

 

 そしてケインズは「消費は所得に依存するモノであり、利子率に
よって消費が大きく左右されないモノである」と推測した。

 

 つまり人々は収入が増えると消費も増やすが、利子率が高いから
と言って消費を減らすような事はあまりしないのだ、、と考えた。

 

 この考えはケインズ以前の古典的経済学の考えを否定するモノで
あった。というのもそれまでは、「利子率が上がれば人々は消費を
控えて貯金したり投資する」というふうに考えられていたからであ
る。

 

 もちろんケインズ以前の経済学において消費する主体というのは
「金持ち」「富裕層」が中心であり、「庶民」や「貧乏人」は大し
た所得も消費も行っていないという見方であった。

 

 庶民や貧乏人は利子率が高かろうが低かろうが、可処分所得の殆
どを消費に回さねばならない。だが当時の経済学では庶民や貧乏人
の消費は無視できるような比率でしか存在しないと考えられていた。

 

 一方金持ちは可処分所得が大きいから、余分な資本を投資や融資
に回す余裕があるので利子率にも敏感である。

 

 資本とは「原始的蓄積」すなわち、頑張って働いて貯めたり稼い
だ金を使わずに貯めたモノである。それがたとえ親から譲られたモ
ノだとしても、投資が失敗すれば大変である。

 

 彼らの投資が経済の投資の殆どの部分を占めていたから、ケイン
ズ以前の経済学ではこちらのほうを主に取り上げていた。

 

 しかし産業革命の進展によって生産力が爆発的に増大し、大衆消
費時代へと時代が移行するにつれて、庶民や貧乏人の消費行動が無
視できないプロポーションになってきたということである。

 

 ケインズのこれら三つの推論をモデル化したモノが、

 

 C=C^+cY、  C^>0、  0<c<1

 

である。 

 

 ここでCは消費、C^は自発的消費、Yは可処分所得、cは限界消
費性向MPC、である。

 

消費C
 |
 |     / C=C^+cY
 |    /
 |   /
 |  /
 | /
C^|/
 |
 |
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Y所得

 

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ケインズ消費関数の検証

 

 ケインズがこの仮説を提出してほどなく、他の経済学者達は調査
を始めた。
 その結果によると、高い所得を得ている家計ほど消費が大きく、
限界消費性向が0より大きいことが確認された。
 また所得の高い家計ほど貯蓄金額が大きく、これは限界消費性向
が1より小さいことを示す証拠とされた。

 

 ところが平均消費性向APCについてのケインズの推測については、
当てはまらないような事例がみつかった。

 

 ケインズの推測では、所得が増えれば平均消費性向APCは小さくな
ることとなっていたが、サイモン・クズネッツの研究によって所得
が上昇していた期間の平均消費性向が非常に安定していたことが発
見された。

 

 つまり
「平均消費性向APCは長期的には安定しており、所得の上昇による
APC下落はおこらない」
ということであった。

 

 しかしその一方で、平均消費性向APCが短期的な所得増加時には
下落が起こるというデータも発見された。

 

 つまり消費関数にも「短期消費関数」「長期消費関数」の二種類
の関数があるらしいと言うことがわかったのである。

 

 しかしこれは「消費の謎」であった。

 

 この消費の謎を解くことが後の経済学者の一つの課題となった。

 

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