実質利子率の上昇

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 さて、人生を前期と後期に分けるのなら、その途中で利子率が変
化するのは避けられない。

 

 江戸時代の中期じゃあるまいし、実質利子率が変化しないなんて
現代では考えられない。

 

 では利子率が変化する場合、人々は消費行動をどう変えるのだろ
うか?

 

 ここではまず前期の貯蓄Sが正の場合、つまり人生の前半で貯蓄
をし、後期でそれを使うというパターンを考える。

 

●利子率rが上昇する場合:
--------------------
  後期の消費C2
   |
   |\
  ↑| \     C2= -(1+r)C1+(1+r)Y1 +Y2
  C2|  \
 Y2 |………・a   |   |\
   |   | \
   |   |  \
   |   |   \
     ̄←c1 ̄Y1 ̄ ̄ ̄ ̄前期の消費C1

 

 実質利子率rが(予想される利子率より)上昇した場合、上記の
予算制約式の傾きは急になる。

 

 収入は前期にY1、後期にY2という設定は変わらないので、予算制
約式は点aを通るが、そうすると前期の消費C1は少なくなり、後期
の消費C2は増えることになる。

 

 つまり利子率が上がると人々は貯蓄を増やす。その分だけ前期の
消費C1が減り、後期の消費C2が増えるというわけである。

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所得効果と代替効果

 

 実質利子率の上昇が消費に及ぼす影響は「所得効果」と「代替効
果」に分類される。

 

「所得効果」とは、予算制約式の傾きが変化することによってより
高い無差別曲線(より満足度の高い効用曲線)を選択できるように
なるという効果である。

 

 人生において使える金が増えると言うことは、よりたくさんの消
費とより多くの満足(効用)を得られると言うことであるから、こ
の場合、前期も後期も消費を増やすことが可能になる(正常財の場
合)。

 

 もちろん前期は貯蓄(S>0)をするわけだから、のべつまくな
し消費を増やすというわけにも行かないので、前期の消費C1は増え
る場合もあるが、減る場合もある。

 

 だが貯蓄をするという前提では、後期の消費C2は必ず増えるとい
うことになる。

 

 一方「代替効果」とは、前期と後期の「消費の相対価格」による
効果である。

 

 前期と後期では同じモノを買うとしても、収入が違う。

 

 前期は貯蓄Sによる利子S×rがないので、価格pの対収入価値
はp/Y1だが、後期にはp/{Y2(1+r)}となる。

 

 利子率rが上昇すると前期に消費するよりも、後期に消費する方
が消費の効用が大きくなる。

 

 月収20万円の時期に5万円のモノを買う場合と、月収40万円
の時期に同じ5万円のモノを買う場合、という例で考えれば、前者
は収入の25%、後者は12.5%。

 

 その5万円の消費で得られる満足(効用)が同じだとすれば、前
期に消費するよりも後期に消費した場合のほうが、トクであるとい
うことはすぐわかる。だから後期の消費が増える、、ということに
なる。

 

 ただこの場合、前期の消費は必ず減ることになる。

 

フィッシャーのモデルの実証

 

 フィッシャーのモデルでは、実質利子率rと貯蓄Sに相関関係が
ないといけないことになる。

 

 実質利子率rが増えれば貯蓄Sは増え、rが下がれば貯蓄Sが減
るというデータがなくてはならない。

 

 だがしかし、日本においてもアメリカにおいても、そういう相関
関係は残念ながら見いだせない。

 

 もちろん後期の消費C2は、利子率rが高ければ当然消費に回せる
お金は増えるわけだから、増えることは間違いないが。

 

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