経済政策のルールと裁量

経済政策のルールと裁量

ルールか裁量か

 

 経済政策に関して議論が分かれる問題の一つに、
「経済政策はルールで行うべきか、それとも裁量で行うべきか?」
というモノがある。

 

 ルールで経済政策を行うとは、政策決定者がどういう場合にどう
いうルールでどういう経済政策を実施するかを表明しそれを実行す
る、ということである。

 

 一方裁量で行う場合とは、政策決定者がどのような場合にどうい
う政策を実施するかを表明せず、状況に応じて自由に政策を変更す
るということである。

 

 そして金融政策や財政政策をルールで行うべきだと主張するグル
ープの根拠は、
「政策決定者が無能であり、そして政治的日和見主義である」
ということになる。

 

 一つには政治家というモノが経済に無知なこと。
 一つには政治家が背景とする利益団体の影響を受けること。
 一つには政治家が党派の思想に影響を受けること。
 そして選挙が近づくと政権政党が雇用増大策をとり、そして選挙
が終わるとインフレを低下させるために景気後退を招くこと。

 

 そういうわけで大きな国政選挙があるサイクルに合わせて政権党
は、経済を操作する。このような循環を特に「政治的景気循環」な
どというが、これは経済の実態とは関係なく行われる経済政策であ
るから、的を射たモノかどうかは保証の限りではない。

 

 政治家の裁量に任せた場合、経済はそうして不安定になると考え
られる。


インフレと失業率のトレードオフ

 

 一方経済政策を政治家ではなく、専門機関に実行させるようにさ
せたとしても、裁量での実施は常に不安定要素を持つ。

 

 たとえば短期分析で述べたように、インフレと失業はトレード・
オフの関係にある。

 

 メカニズムとしてはこうだ。

 

・インフレが抑制される
  ↓
・実質貨幣価値が上がり、実質賃金率が上がる。
  ↓
・実質賃金率が上がれば企業は同じ資金でより少ない従業員を雇う。
  ↓
・失業率が上昇する。

 

・インフレ率が上昇する
  ↓
・実質貨幣価値がさがり、実質賃金率が下がる。
  ↓
・実質賃金率が下がれば企業は同じ資金でより多くの従業員を雇う
事ができる。
  ↓
・失業率が低下する。

 

 だからもし専門機関が貨幣供給量や公定歩合を調整してインフレ
を抑えたとしても、次の瞬間には失業率が上がらないようにインフ
レを許容するインセンティブを持つことになる。

 

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■時間的非整合性
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 政策を裁量で行う場合、政策決定者は政策をいつでも変更できる。
 すなわち発表した政策をある時点で翻しても構わないわけである。

 

 とすると目的達成のために、効果が現れたらすぐに政策を変更す
るという事が起こる。

 

 たとえば投資を促すために政府はその投資した資本からの所得に
は課税しないと発表する。

 

 その結果投資が増加し経済が好転しかけたら、前言を翻してその
資本に対して課税を行ったりする。というのも一度投資した資本は
既に設備投資などの資金に充てられてしまい、動かせないからであ
る(ホールドアップ状態)。

 

「来週試験をします」
と言って学生に勉強させておいて、次の週に試験を行わなかったと
しても、学生に勉強させるという目的は達成されているわけだから
試験をしなくても構わない。それに試験の採点も面倒だし、、、と
いう感じである。

 

 政策を裁量で行うとすると、このような時間的非整合が起こる可
能性が高くなる。

 

 そして政策が猫の目のようにクルクル変わるようであれば、だん
だん政策の発表が信用されなくなっていき、効果が無くなる。

 

「不完全なコミットメント問題」の発生である。

 

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